隠れ鉄ちゃん

私は「乗り鉄の隠れ鉄ちゃん」である。「隠れ」というのは、「鉄ちゃん」には本格的なスペシャリストのような方が多く存在し、そのような人と比べたら私など足元にも及ばず、人前で自分は「鉄ちゃん」というのが恥ずかしいからだ。

 

元々子供のころから乗り物に乗るのは大好きで、周りの大人たちが「長距離列車に乗るのは疲れる」というのを聞いて、自分なら列車に乗れるのであれば、何時間でも一日でも二日でも平気だと思っていた。

 

30代の頃、宮脇俊三さんの著作「時刻表2万キロ」に出会って大いに感動した。この本は、宮脇さんが中央公論社の役員を務める傍ら、休暇等を利用して当時の国鉄全線を乗りつくした記録で、第5回日本ノンフィクション賞を受賞した良書である。

 

その後宮脇さんは、中央公論社を退職し紀行作家として活躍された。宮脇さんの文章はウィットにも富み読みやすいが、格調が高く文学性にも優れている。その著作に魅了され、私はほぼ全て購入し愛読した。

 

宮脇さんに触発されて、私も時刻表を買ってJRのローカル線の旅を何度か試みた。私の旅は、新幹線、特急は一切利用せず普通列車のみを乗り継いで長距離旅行をするというものである。

 

①冬の東北一周の旅

 約20年前の1月「青春18きっぷ」を購入し、神奈川県の自宅から東海道本線東北本線五能線奥羽本線羽越本線信越本線飯山線篠ノ井線中央本線を乗り継いだ。(宿泊は盛岡、秋田、新潟の3泊4日)

この旅で特に印象深かったのは、二日目の五能線の車窓から見た冬の日本海と、四日目の2メートルを超える積雪の中を走った飯山線の光景である。

 

②秋の会津一周の旅

 4年前の11月、東海道本線常磐線磐越東線磐越西線只見線上越線八高線を乗り継いだ。(宿泊は会津若松、水上の2泊3日)

この旅では、初日の常磐線大津港駅で途中下車して立ち寄った五浦(いずら)海岸、二日目の只見線の車窓から眺めた晩秋の奥会津の風景が忘れ難い。

 

③東北、北海道の旅

 2年前の9月、北海道東日本パスを利用して6日かけて普通列車根室まで行き、そこからランチウェイ(牧場歩き)をしながら5日間かけて網走まで行く計画をたてた。出発直前の9月初旬に北海道胆振地震がおき、北海道地区の鉄道が大きな被害を受け、旅の利用予定区間も数多く不通となったため旅は中止した。

 

再度計画を練り直しチャレンジしてみたいとは思っている。

 

旅そのものは勿論楽しいのだが、時刻表を駆使して計画をたてる作業も私は嫌いではない。地方のローカル列車の本数は少なく、接続に数時間かかることはよくあることだが、その時間をいかにうまく利用するかを考えるのも楽しい。