蝋梅

10年以上前、今は亡き連れ合いが入院している時、運動不足を解消する為に毎日片道1時間の距離を歩いて見舞っていた。そんな冬のある日、住宅街を歩いていたら、歩道横の植え込みから何やらそこはかとなく、とても優美な香りが漂ってきた。何の香りかとその元を訪ねてみると、それは可憐な黄色い花びらの「蝋梅」であった。

 

当時連れ合いの病状はあまり芳しいものではなく、気分的にも滅入りがちな日々を送っていたわが身ににとって、その香りは、何とも心癒されるものであった。

 

毎年1月下旬頃になると、季節の便りとしてTVのニュースや天気予報の合間に、群馬県安中市松井田の「ろうばいの郷」の風景が放映されることが多い。前記のこともあって、一度訪ねてみたいと思いながらも、その機会を失していた。

 

「今年こそは・・・」と意を決し計画を立てる。当初鉄道で行くべく往復の列車を時刻表で調べたりしたが、安中市観光課に当地の状況を聞くと、積雪は全く無いとのことで、急遽車で行くこととする。

 

1月31日早朝出発し、「ろうばいの郷」には10時頃に到着する。気温7℃、晴れてはいるが風が強く寒い。コートを着込んで園内を観賞する。朝も早いので客も数人ほどしかいない。入園時に頂いたリーフレットによると、ここには12000本植え付けられているとのことで、その甘い香りは化粧品にも用いられているシネオール、ボルネオール、リナロール等の芳香油によるものとのこと。

 

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12000本もの蝋梅が咲いているので、園内は濃厚な甘い香りでむせ返るようかというとそうではなく、あくまでも気品のある仄かな香りであった。そして連れ合いを見舞った時のことを思い出し、感慨を新たにした。

 

帰りは、妙義山麓の「もみじの湯」という温泉に立ち寄った。ここは高台にある為、周りの風景を一望しながら露天風呂に浸かるという贅沢を満喫でき、大いにリフレッシュできた。

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