前々回に引き続き、北海道東日本パス(JR北海道とJR東日本の全路線の普通列車のみ乗車可、使用期限連続7日間)を使用しての仮想の旅日記の 3回目です。列車の時刻は、2018年発行 JTB時刻表8月号を使用しました。
<五日目>
・行程:札幌ー留萌ー旭川
・利用路線::函館本線//留萌本線//沿岸バス//留萌本線//函館本線
・コースタイム(アンダーラインは到着時刻)
札幌 6:00
↓
深川 8:22 → 11:10
↓
留萌 12:07 → 12:35
↓
増毛 13:09 → 14:43
↓
留萌 16:17 ← 15:25
↓
深川 18:10 ← 17:15
↓
旭川 18:38
今日も早起きして、札幌6:00始発の旭川行に乗る。下りの通勤通学時間帯前なので、札幌では乗車率1割程と空いていたが、7:02の岩見沢辺りから高校生が乗ってきて、車内は高校生が大半を占めるようになった。若い爽やかな雰囲気となる。その高校生も7:51に滝川に着くと、ほとんど下車し別の高校生が乗ってきた。
留萌本線の起点、深川へは8:23着。次の留萌行は11:10。待ち時間が2時間50分もある。そんなに長時間深川で待たずに、札幌6:00より後の列車にすればよかろうと思われるかもしれないが、6:00の次の普通列車では11:10の留萌行に間に合わない。
ちなみに、札幌発6:00以降で、11:10に間に合う特急は8本もある。JR在来線の地方都市間を結ぶダイヤは、総じて特急を使用することを前提として組み立てられている。JR北海道はそれが特に著しい。
深川では、時間つぶしに駅前からぶらぶら歩いた。昼食にするにはまだ早すぎて店が開いていない。南へ歩いていくと石狩川に出た。この辺りは中流域であるが、大河の風格のある川だ。
11:10の留萌行は、3時間近く待って乗ったのに、ガラガラに空いていた。列車は一面の畑の中を、一駅一駅停車しながら北へ向かって進む。
途中の「恵比島駅」は、1998年にNHK朝ドラ「すずらん」の舞台となった駅だ。(ドラマでは「明日萌駅」)駅舎はロケ用に作られたもので、今でもロケセットとして残されており、見学もできる。
恵比島駅(明日萌駅) 写真ACより まこりげ さんの作品
12:07留萌着。留萌本線はここから日本海沿いに増毛まで通じていたのであるが、2016年12月にこの間が廃止となってしまった。廃止になったからと言って、ここで引き返すわけにはいかない。増毛は、私が是非訪ねてみたかった町で、今回の旅のコースに、留萌線を入れたのも、増毛を訪れたかったからだ。バスで行くこととする。
12:35発の沿岸バスに乗ってしばらくすると、右に深緑の広大な日本海が見える。日本海は初日の羽越線で見て以来だ。
留萌の海岸 写真ACより jp3exe さんの作品
13:19 旧増毛駅着。
廃線前の増毛駅は、留萌本線の終着駅として鉄道ファンの中では人気の駅で、いかにも北海道の終着駅らしい侘しさと哀愁がそそられる駅だった。
そして私がこの町に憧れたのは、増毛が映画「駅 STATION]の舞台そのものだったからだ。
「駅 STATION]は、1981年に公開された監督:降旗康夫、主演:高倉健、倍賞千恵子で数々のの日本アカデミー賞を受賞した名作だ。この映画で、増毛駅前の小さな居酒屋のシーンは何回見ても胸が熱くなる。大晦日の夜、客は健さん一人、倍賞千恵子演じる酒場の女あるじは、暖簾をしまい、カウンターに二人並んで、黙ってテレビの紅白を見ながら酒を飲む。外は雪、テレビから八代亜紀の「舟唄」が流れると、女あるじは健さんの肩に顔を傾ける・・・
廃線後の増毛駅は、2018年に約100年前の開通当時の駅舎に復元され、増毛の観光拠点になっている。
写真ACより ponpokopon さんの作品
駅近くの食堂に入り、名物の甘えび丼と増毛産ミズタコを使用したタコザンギ(タコを揚げたもの)それにビールを注文する。タコザンギは柔らかではあるが、歯ごたえもあり、噛めば噛むほど甘味が口中に広がる絶品だった。お腹も空いていたこともあって大満足。
食堂近くに、暑寒別岳の伏流水を用いた日本最北の酒造「国稀酒造」があり、酒飲みには知られた所だ。酒造見物ができ、試飲もできるとのことだったが、増毛の滞在時間は1時間半、酒造の外観だけ見て旧駅舎バス停に戻る。
14:43発の沿岸バスに乗って、15:25留萌着。50分の待ち時間で駅前をぶらり。NHKBSの「六角精児・飲み鉄本線」という番組で、留萌の非常に感じの良い居酒屋が紹介されていたので、その店を捜したが見つからなかった。
留萌16:17発、深川17:15着、午前中に3時間近く待たされた深川で、今度は約1時間待って、18:10発の函館本線に乗って旭川には18:38着。
明日も早朝出発なので、宿は駅前の「ホテルルートインGrand旭川駅前」とする。
<六日目>
・コースタイム
旭川 5:39
↓
富良野 7:08 → 7:20
↓
東鹿越 8:04. → 8:09
↓
新得 9:19 → 9:29
↓
帯広 10:29 ← 10:25
↓
釧路 13:25 ← 13:16
↓
根室 15:59
昨日、増毛にもう少しゆっくり滞在して、留萌で宿泊するケースも検討してみたが、それだと今日留萌5:49の始発に乗っても、釧路20:07着で根室まで到達できない。
旭川まで頑張ったことで、本日は、乗り鉄としては、素晴らしいコースタイムとなった。5回乗り換えるのだが、その接続時間は、富良野12分、東鹿越5分、新得10分、帯広4分、釧路9分と 全て12分以下なのだ。さながら、首都圏の電車を乗り継いでいるようだ。私が今までに経験した普通列車の旅の中で最高に効率の良い旅となった。
5:39の富良野線始発列車が、動き出してしばらくすると、左手大雪山系の山並みから出たばかりの太陽が、広大な上川盆地を真っ赤に照らしていた。
美瑛を始めとする富良野線沿線は、北海道観光のメッカだ。ラベンダー等の花の時期は過ぎていたが、北海道らしい雄大な景色を堪能できた。
美瑛と大雪山系 写真ACより 中村昌寛さんの作品
7:08富良野着。富良野と言えば、ドラマ「北の国から」だろう。1981年からドラマスペシャルを含めると2002年まで、21年間にわたって放送された国民的ドラマだ。
私は、最近CSの「日本映画専門チャンネル」で再放送されたものを始めて見た。北海道富良野郊外の大自然の中で暮らす父と息子、娘3人の家族の物語。純と蛍の兄妹が小学生から30才頃までの成長を綴ったドキュメンタリーのようでもある。富良野の四季の映像も美しく、一話一話、倉本聰の思いが込められ、丁寧に作られた秀作だ。
ドラマでは、富良野駅がよく登場する。母親を見送るシーンとか重要な場面が多い。40~20年前の富良野駅の様子が窺えて参考になる。
富良野で7:20の根室本線に乗り換え、8:04東鹿越に着く。東鹿越ー新得間は2016年の台風で不通となっており、バスによる代行輸送だが、接続は順調で8:09に発車する。9:19新得着。次の乗り換えもスムースで新得9:29発、帯広には10:25に着いた。
帯広では乗り換え時間が4分しかない。この短い時間内に駅売店へダッシュ、名物駅弁「ぶた八の豚どん」をゲットして、10:09釧路行に滑り込む。発車してしばらくは窓外に広がる十勝の景色を眺めながら「ここがあの中島みゆきが小学校から高校卒業まで過ごした帯広か~」と感慨にふける。将来数々の名曲を生み出す下地が、この環境で培われたのだろう。
釧路までの乗車時間は3時間弱、帯広で買った駅弁の「豚どん」を食べる。甘辛いたれが肉に染み込んで美味い。幸いこの車両はボックスシートだった。幕別、池田、浦幌と主要な駅を通って音別を過ぎるころから、右手に突然太平洋が現れた。留萌の日本海から一日で太平洋に出た。釧路13:16着。
釧路も9分の連絡で、本日最後の根室行に乗り換える。根室本線は、その名の示すように根室まで行く路線であるが、特急は全て釧路止まりである。釧路ー根室間は、普通列車が一日6本走るだけの、完全なローカル線だ。本線と名乗るのが恥ずかしいのか「花咲線」という可愛らしい愛称が付けられている。(「花咲」は根室南の「花咲」の地名に由来すると思われる。)
釧路13:25発。その歌声が、クリスタルボイスと称賛されている松原健之という歌手が、「花咲線~いま君に会いたい~」という曲を歌っている。花咲線は、この曲で歌われているような、詩情に溢れ、旅心がそそられる路線なのだ。
花咲線に2時間半乗って日本最東端の町、根室に着いた。(ちなみに日本最東端の駅は、根室駅ではなく一つ手前の東根室駅)根室駅15:59着。
根室の宿は、夕食に花咲ガニが出るという「エクハシの宿」とする。
ー続くー