弘法山/小田原海岸

娘の嫁ぎ先の法事に行ってきた。娘の義母様の一周忌だ。ご遺族、娘家族とも神奈川県秦野市に住んでいる。我が家からは車で1時間半程のところなので、車で行く。

 

娘宅へ9時半集合のところ、早朝で道路も空いていたことあり、8時前には246号の善波峠に着く。この辺りは秦野市東部の弘法山公園の一画で、この公園は、弘法山、権現山、浅間山の三つの低山からなっていて、ハイキングコースも整備されている。

 

権現山中腹の駐車場に車を停めて、山道を15分ほど登って山頂の展望台へ。この日は朝から雲一つない快晴で、展望台からの眺めは、これまで4~5回訪れた中では最高に素晴らしかった。この権現山からの眺望は、「関東の冨士見百景」にも選定されているそうだ。

 

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西方には、眼下の秦野市街の向こう、箱根や西丹沢の山々の先に、ひと際高く霊峰富士が聳える。この日の富士山は、山頂部に新雪を戴きこの季節らしい絶景であった。富士山は日本人の心の山だ。いつ見ても心洗われ、手を合わせて拝みたくなる。

 

富士山の右手北方には丹沢の山並みが連なり、一番右は三角形のきれいな形をした大山が鎮座する。南へ目をやると、相模灘が白く光っている。この日は空気も澄んでいたらしく、伊豆大島がくっきり見え、その右に利島も窺がえた。

 

展望台から下の市街地をよく見ると、中世以来たばこ栽培で栄えた秦野が、周りを山に囲まれ、神奈川県唯一の盆地であることがよく分かる。そして小田急線の電車がジオラマの模型のように走っていて、鉄道の音も微かに聞こえて楽しい。

 

展望台には、二人組の若者がいて、富士山の絶景に声を上げて感激し、写真を撮ったり望遠鏡で見たりしていた。雑誌でここの写真と記事を見て、急遽行こうということになり、今朝4時頃千葉を出発して8時前に着いたとのこと。

 

展望台で一時間程眺望を堪能した後、娘宅へ。三人姉妹の孫たちに会うのは正月以来だ。子供の発育は早く、10ヶ月で3人ともひとまわり大きくなった。特に長女の急成長振りは著しく、立派な少女になっていた。

 

一年ぶりにお会いしたお義父さまは、奥様を亡くされて心配していたが、元気にお過ごしのようで安心した。

 

法要の後、着替えて「小田原諏訪野原公園」へ向かう。ここは、TBSラジオ朝の番組・歌のない歌謡曲遠藤康子さんが、「足柄の山を背景に広がるコスモスが綺麗」と紹介されたところだ。秦野から近いので寄ってみることにした。

 

公園に着き、案内地図を見るが、私が想定していた広大なコスモス畑らしき場所は見当たらない。公園内の丘陵をしばらく歩いて、植木を手入れしている公園職員と思しき人がいたので、聞いてみると「ここにはコスモス畑はない。車道脇にコスモスが咲いていたが、それのことかな~?」とのことだ。

 

目の前はローラー滑り台の乗り口である。大人でも滑っていいかと聞くとOKとのこと。お尻の下にマットを敷いてトライしてみる。長さは200m位か、足柄平野を一望できる丘陵の斜面を曲がりくねりながら一気に滑り降りる。さながらジェットコースターのようで、かなりスピードがでて怖いくらいだったが、童心に帰って楽しかった。コスモスは見られなかったが良しとする。

 

ここまで来たのだからと、2年前にも立ち寄った小田原海岸を目指す。小田原市街地に入り、国道1号の先、海も真近となったところで「青物町」という古い商店街にでた。

 

小田原の「青物町」といえば、かつてこのブログでも書いた(2020年5月17日投稿)早口言葉を集めた「ういらう売り」にも出てくる歴史ある町の名前だ。

 

円斎という「ういらう」売りが、自分の店を紹介する件で「・・・お江戸を発って二十里上方、相州小田原一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへお出なさるれば・・・」

 と登場する。

 

昔は結構栄えたであろう商店街も、今はシャッターが目立ちさみしい。

 

海沿いに走る西湘バイパスの下の暗いトンネルをくぐると、目の前に海がパッと広がる。小田原海岸だ。黒い玉砂利の先が砂地で、白い波が寄せては帰すを繰り返している。小石の浜辺に座り込んで波の音を聞きながら、ぼんやりと海を眺める。

 

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私はこうして波の音を聞きながら、海を見ることが好きだ。これまでも旅の途中で、海岸の砂浜があるところでは、立ち寄って海を眺めてきた。我々人間を含めた全ての生き物の祖先は、何十億年も前に海の中で生まれた。その繋がりがあるせいか、波の音は、根源的に精神を安定化させる。小一時間何も考えずボーっと海を見ていた。

 

浜辺から上がったところに、蒲鉾屋の「籠清」があり、食べ歩き用に「棒かまぼこ」を売っていたので買う。注文を受けてから揚げるとのことで、10分ほど待って渡される。道端に置かれた椅子に座って揚げたての「棒かまぼこ」食べて帰途についた。