トランプ大統領

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          写真ACより makoto.h さんの作品

 

4年前の11月9日、秋の陽も落ちかけた夕暮れ時、郡山から会津若松へ向かう磐越西線の車中で「米大統領選トランプ勝利」「アメリカダウ1000ドル以上値下がり」のニュース速報がスマホに流れた。

 

その年の大統領選も接戦ではあったが、開票直前まで、メディアは民主党ヒラリー・クリントン女史の優勢を伝えていたので、選挙とはこういうこともあるのかとその時思った。

 

クリントン候補は「ガラスの天井を突き崩せなかった」と敗北宣言をして、トランプ政権が誕生した。

 

その後の4年間、アメリカ本国及び世界は、国境に壁を作るとかの過激な政策と、外交では自国第一主義を唱えるトランプ大統領に振り回され続けた。

 

選挙期間中からトランんプ氏に批判的だったCNN、NBCや新聞のワシントンポスト、ニューヨークタイムスといった大手メディアとの関係は、就任後更に険悪な状態となり、彼らが発する自分を批判するニュースは 、フェイクニュース(虚偽報道)だと声高に叫び、大統領に好意的なFOXを重用する。

 

直接国民に向けて発信できる、ソーシャルメディアを駆使して大統領になっただけに、就任後もツイッターを重視し、ツイッターを四六時中発信し続けた。人事や外交の重要案件もツイッターで発表する。ツイッター大統領ともいわれた。

 

外交では、中国、イランに厳しく、イスラエル北朝鮮には甘い。

 

就任直後に、はオバマ政権下でやっと成立したTPPを離脱したのをかわきりに、旧ソ連と1987年に締結した中距離核戦力(INF)廃棄条約の離脱、最近ではパリ協定(気候変動枠組み条約)の離脱、WHO(世界保健機関)からの脱退を強行した。

 

これらの条約や機関は、トランプ大統領が考えるアメリカの利益を損ねると判断したものだろうが、いずれも自分勝手すぎる。国の指導者が国益を追求のは当然のことではあるが、アメリカの大統領は世界最大の大国の指導者 だ。長期展望と大局的な見識が必要なはずだ。

 

最近の国内問題では、人種差別抗議デモへの対応としては、軍を派遣して鎮圧すると言ってみたり、(さすがに、周囲の猛反対で実現しなかったが)、新型コロナを甘く見て、徹底した感染防止措置をとらず、世界最大の感染者(一日18万人:11月18日)を出すに至っている。

 

人事においては、自分と意見が合わなかった国務長官、国防長官、特別補佐官等の主要閣僚、側近を次々と更迭した。4年間で何人交代したことか。

 

トランプ氏は、大統領になる前、売れっ子のテレビ番組司会者で、ビジネスの才能のない人を「クビだ!」と言ってバッサリ切るという役どころだったという。その歯切れの良い司会業と同じやり方を、ホワイトハウスでもしていたのだろう。

 

自身のロシア疑惑ウクライナ疑惑、女性スキャンダルはスルリとすり抜けている。あらゆるスキャンダルをやり過ごしてきた大統領には、「テフロン・ドン」というあだ名があるそうだ。テフロン加工のフライパンのように、何が来ても平気でツルンと避けられるということらしい。

 

 

こういうトランプ大統領の、4年間の実績を見た上での、アメリカ国民による次期大統領選挙が、11月3日に行われた。アメリカの大統領選挙制度は複雑で、州ごとに割り当てられた選挙人の数で争われる。過半数の270人以上獲得した候補が勝利する。

 

日本のように即日開票での決着とはいかず、激戦州では票差が少ないこともあって、民主党バイデン氏の当確が出たのは、選挙から5日後、日本時間の11月8日未明のことだった。バイデン氏は当日、勝利宣言したが、トランプ大統領は選挙に不正があったとして、敗北を認めず法廷で争うとしている。

 

私は、トランプ大統領が負けたとはいえ、上記の大統領を見続けたアメリカ国民の内、7000万人以上の人がトランプ氏を選んだことに驚いた。今回のトランプ氏獲得票は前回よりも多いという。

 

世界には過激な政策を述べたり、大衆迎合ポピュリズム政党も多々あるが、アメリカのような民度の発達した先進国でのこの数は意外だ。

 

トランプ氏には、スキャンダルがあろうが、何があろうが熱狂的に支持する岩盤支持層があるという。ラストベルト(錆びついた工業地帯:ミシガン、ウィスコンシンペンシルベニア)の白人労働者がトランプ大統領の政策で雇用が回復して、岩盤支持層になったのか?

 

今回の選挙での出口調査で、白人は60%がトランプ氏支持だったとのこと。

 

ここ数十年アメリカンドリームが叶えられなくなり、アメリカ社会は1%の特権階級によって牛耳られている。これまでの政治に不満を抱く白人ミドル層の多くがが、「トランプなら変えてくれそう」と期待しているのか?

  

身内の共和党が、在職中のトランプ大統領の横暴無人のやり方に、ほとんど異を唱えなかったのも、選挙になれば7000万票も獲得する大統領の人気をおもんばかったためか。

 

 

それから、アメリカの大統領選挙制度は、先にも記したが、非常に複雑で民意を反映していないと思われる。前回の選挙では、ヒラリークリントン女史の方が、得票数ではトランプ氏を上回ったものの、選挙人の数がトランプ氏に及ばず負けてしまった。

  

日本では、毎回選挙で一票の格差が問題となり、裁判が行われているが、民主主義の先進国であるアメリカ国内で、そういう議論が起きてこないのが不思議だ。

 

ロシアのラブロフ外相には、「アメリカの大統領選挙制度は、民意を大きくゆがめ、他の主要国と比べ最も時代遅れ」とまで言われている。

 

選挙でバイデン氏の勝利が確定してから、1週間以上たってようやく全米の選挙結果が判明した。南部ジョージア州も、28年振りに民主党が制し選挙人16人を獲得し、バイデン氏は過半数の270人を36人上回り306人となった。トランプ氏は232人だった。

 

トランプ氏は、それでもまだ敗北を認めていない。