にっぽん縦断こころ旅

NHK BSに「にっぽん縦断こころ旅」という番組がある。俳優の火野正平さんが、視聴者から寄せられた心に残る風景を、自転車で訪ねるという番組だ。

 

2011年2月に、パイロット版として長崎県の旅が放送されて以来、毎年春と秋の2回、日本列島の各都道府県を春は北上し、秋は南下する姿が放送されている。来年で10年にもなる長寿番組で、この番組のファンクラブもあるくらいの人気番組だ。

 

訪れる所が、有名観光地ではない全国各地の普通の場所であるとか、火野正平さんのキャラクターに惹かれて、私は放送開始から毎回ほとんど欠かさず見ている。

 

パイロット版の時は、画面に映るのは正平さん一人であったが、本番からは、正平さんを先頭に、カメラ、音声、監督、メカの4人のスタッフが続き、5人一列で走る様子が映し出されるようになった。この映像は数人の別働スタッフ(Bカメ)が、時には超望遠カメラを駆使して撮影している。

 

正平さんは、10年前の放送開始当時は、1日に50㎞以上も自転車で走ることもあったが、最近は10~20㎞位と控えている。正平さんが今年で御年71才ということもあってか、スタッフも気を遣っているようだ。出発地は大抵見晴台とかの高台で、手紙を読んでから出発するので、初めは下り坂だ。

 

なんて言ったって、正平さんの信条は「人生、下り坂、最高!!」なのだ。

 

途中当然上り坂もある。苦しそうにハーハー息を吐きながら、必死でペダルをこぐ姿が、自転車搭載カメラで映し出される。長い坂では、何度も立ち止まって「オレもうやだ!なんでこんなに苦しい思いせにゃならないんだ」と弱音を吐く。自分の弱さを曝け出すのも正平さんらしくて良い。

 

彼は動物が大好きだ。道中に出会う馬、牛、犬、猫、猿、鹿、蛙、蛇、昆虫、鯉、鳥、海の貝類などに対して、興味津々で触ったりする。道路を横断中の毛虫を見つけると、車に轢かれるからと、手でつまんで、道端の草むらへ放してやったりする。そんな心優しい姿も彼の好感度をアップしているのだろう。

 

正平さんは、若い時もそうだったが、今も女性に人気で、とてもモテる。番組でも地方のおば様族や、若い女の子からも熱烈歓迎される姿が、よく映し出されるが、デレデレせず、彼女らを少し突き放すようなところが又良い。若くきれいな女性が大好きで、積極的に話しかけるのも正平さんらしい。

 

今年の秋の旅は、終盤四国へ行くこととなり、番組で四国各県の「こころの風景」を募集していた。いつも番組を見ているだけだったが、私も手紙を出してみようと思い立った。そして、6年前四国へ遍路に行った時、お世話になった徳島県の民宿のご主人と、そのご主人が作った仏像を「こころの風景」として、手紙を書いた。

 

9月末に手紙を出し、徳島県分は12月1日~4日に放送されたが、私の手紙はボツとなった。

 

自然風景とか、神社仏閣、学校、駅等の公共性のあるものと違って、私が書いたものは、個人が作った仏像なので、民宿や個人の宣伝となり、公共性に欠け、NHKには馴染まないと判断されたのかなとも思った。

 

しかし、一番の理由は、単に私の筆力が足らなかったのだろう。放送で紹介された4通は、いずれも私の手紙より魅力的であったから。

 

 

ボツになった手紙

 

正平さん、スタッフの皆さんこんにちは!いつも正平さんの心優しい仕草に癒されています。

 

さて、私の心に残る風景は、徳島県勝浦町の「星の岩屋寺の洞窟に彫られた仏像(不動明王)です。

 

私は、四国の歩き遍路を2回させてもらいました。

 

6年前の最初の遍路で、山頂にある20番札所鶴林寺に向かう時、台風19号が四国に接近していたため、麓の勝浦町の民宿で2連泊して台風をやり過ごそうと考えました。

 

その民宿のご主人は、非常に親切な方で、初日の夜は台風の影響がまだなく、勝浦川で花火が開催されているからと、他の宿泊客とともに花火に誘ってくれました。

 

そして翌日、もう一泊する予定の私に、「昼までは天気は大丈夫そうだから、13時頃までには、20番と21番(太龍寺)を参拝して下山できる。太龍寺麓までザックを車で運んであげるから、さんや袋(参拝用のショルダーバッグ)だけ持って出発しなさい。悪天候になったら、またここへ戻ればよい。」と言ってくれました。

 

お言葉に甘え、その通りにして、台風が来る前に次の宿に到着でき、旅の工程も一日短縮できました。

 

そして、四国を一周したのち、その時のお礼を言いたくて、再度その民宿にバスに乗って泊まりに行きました。

 

宿では、ご主人と奥さんが歓待してくれ、その時ご主人が、「車で20分くらいの星の岩屋寺の洞窟に2年半通って、仏像(不動明王)を彫った。」と話してくれました。

 

ご主人は「翌朝朝一番にその仏像を見て欲しい。そのまま徳島港まで送るから」と言われました。私は翌日フェリーで和歌山に行き、高野山へ結願(けちがん)のお礼参りをする予定だったのです。

 

港まで送っていただくのは気が引けたのですが、又又ご厚意に甘えました。

 

早朝の紅葉が色ずき始めた山寺は、しんとして静まり返り、荘厳な雰囲気に満ちていました。ご主人の彫った岩の不動明王は、周りの風景に溶け込み威厳を放っていました。とても元バスの運転手さんが作ったものとは思われず、名のある仏師が彫ったものと言っても差し支えないような立派な仏像でした。

「自分の作ったものが、何百年も後世に残っていいですね」と言うと喜んで下さいました。

 

正平さん、星の岩屋寺は勝浦川北側の県道212号から約2㎞山に入った所です。自転車には少しきついかも知れませんが、正平さん及び全国の皆さんに是非ご主人の不動明王を見ていただきたいです。よろしくお願いします。

 

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