あてなよる

コロナ禍の現在、お店での飲食は、自由にできない状態です。

こんな時だからこそ、私の理想とする飲食をテーマに選んでみました。

 

私はお酒は強くありませんが、気心の知れた少人数で、色々と由無し事を語らいながら飲むことは嫌いではありません。これに美味しい料理が付けば尚更です。

 

今回は、お酒好きには堪らない番組を紹介します。

 

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「あてなよる」というNHKのBS4KとBSPで放送している番組がある。BS4Kは定期に放送しているようだが、我が家はBS4Kが見られない。BS4Kで放送したものを、BSPで非定期に再放送しているので、気が付いた時はBSPで見るようにしている。

 

冒頭に、石橋蓮司さんがこの番組を、渋い語り口で「酒の肴(さかな)のことを、日本人は愛情をこめて「あて」と呼ぶ。酒にあてがうもの、酒の味を引き立ててくれる伴走車。極上の「あて」と酒で楽しむ大人のエンターテインメント。」と紹介する。

 

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大原千鶴さんと若林英司さんが、大原さんのキッチンアトリエで、一人か二人のゲストを招いておもてなしをする番組だ。

 

大原千鶴さんは、NHK「きょうの料理」の講師などで活躍している京都在住、50代で2男1女のお子さんがいる美人料理研究家だ。実家は洛北の歴史ある料理旅館で現在は弟さんが4代目として後を継いでいる。大原さんは本番組では、あての求道者と呼ばれている。

 

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 若林英司さんは、長野県出身、現在は銀座の一流フレンチレストランのシェフソムリエとして活躍中。本番組では、あてと酒の媒酌人と呼ばれている。

 

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キッチンアトリエは、京都御所南の閑静な町家の一画に、築30年の古い一軒家を改築した大原さん所有のもので、内装も風情豊かで映画かテレビのセットのようだ。大原さんの仕事場であり、おもてなしの場でもある。

 

 

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アトリエの名前は「遇酒旦呵呵」と名付けられ、意味は「酒を飲んだら、ひとしきり大笑いしましょう」「陽気に飲みましょう」ということらしい。

 

番組では毎回、食材のテーマを決めて、「〇〇で呑む」と題して、大原さんが一つの食材で4品ほど作り、若林さんがその料理に最も合うお酒を選定し、ゲストに提供する。

 

大原さんは、料理を作りながらその料理に纏わる話をし、若林さんは、なぜその料理にこのお酒が最適なのかを、いろいろ蘊蓄を交えて説明する。

 

お酒は、各種日本酒、各種焼酎、各種ビールにワイン(赤、白、ロゼ)、ウイスキー(モルト、グレーン、スコッチ、アイリッシュ、バーボン)、ブランディ、シャンパン、ウォッカテキーラ紹興酒、他ありとあらゆるお酒の中から選ぶのであるから、若林さんのお酒の知識たるや半端でない。 

 

また提供する時、その料理がより美味しくいただけるように、提供する時のお酒の温度にも気を配る。

 

大原さんが料理を作る間、カウンターを挟んで、大原さん、若林さん、ゲストが料理、お酒その他を話題にして語り合う。実に楽しそうである。

 

そして料理が出来上がり、それにピッタリのお酒が供され、それらを飲食した後、ゲストが感想を述べるのであるが、あまりにも料理とお酒の相性がマッチし、旨さが増幅され、ゲストがその旨さを何と表現したらよいか、言葉に窮することも多々ある。

 

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最近再放送で、「牛肉で呑む」編を見た。

ゲストは俳優の鈴木浩介さんと女優の戸田菜穂さん

 

まず近江牛のブロックを5㎝ほどの厚さに切って弱火でじっくり15分かけて焼く。

 

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その間に一品目の「コンビーフのラスク」が供され、合わせるお酒はカリフォルニアの赤ワイン。

 

15分経って二品目の牛肉を焼いただけの「かんたんローストビーフ」が出来上がり、粒マスタードと塩だけでいただく。ゲストはただ焼いただけなのに、その旨さに大満足。

 

 

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ここで合わせるのは、赤ワインではなくてカリフォルニアの白ワイン。

 

若林さんの説明:赤だとワインのタンニンが、脂身の少ない肉の繊細な旨味を削いでしまう。白ワインは果実の旨味が肉の繊細な旨味を引き立たせてくれる。今回の白は樽熟成したものなので、ワインに移った樽の香ばしいところと肉の焼いたところが合致して相性も更に良くなる。

 

肉料理には赤ワインという固定観念は捨てねばならない。赤身の肉には白ワインなのだ。

 

三品目は「キャミカツ(キャベツたっぷりのメンチカツ)」、トマトソースにつけていただく。トマトソースは(皮ごとトマトをすりおろしたもの )2に(ケチャップ)1を混ぜたもの。

 

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合わせるお酒は国産クラフトビール、揚げ物にはビールが最適。

 

 

 四品目は、「牛こま肉とトマトのスープ」 材料は牛こま肉、トマト、レタスと水のみ。だしは牛肉以外一切使わない、牛肉に醤油を加え、練って、煎って焦げ目をつけて水を足す。それを熱しトマトとレタスを加えるだけである。(だしが入ると牛肉のだしと喧嘩しておかしくなるそうだ)

 

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これに合わせるのは、奥能登特別純米酒(汁物にはとろみが必要、ワインはご法度だとか)

 

 

 

〆は「牛肉の旨味チャーハン 」材料は牛脂とネギとニンニクのみ。焼きあがったところで醤油を回し入れる。醤油の焼ける香ばしい香りが食欲をそそる。牛肉は入っていないが、「ご飯に肉がコーテイングされていて、そこにネギとニンニクが入っているような食感で、今まで食べたチャーハンの中で最高に美味しい」とゲストの鈴木さんが絶賛していた。

 

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〆の一杯は、日本食(醤油)に合うという、フランスヴィザン村の赤ワイン

 

 

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今回は、「牛肉」という高級食材がテーマであったが、「ナス」とか「揚げ」とかの庶民的な食材がテーマとなることもある。大原さんの手にかかると魔法のように、極上のあてに変身する。

 

今回もそうだが、大原さんの作るあて料理は、短時間で簡単にできるものばかりだ。ゲストの前で作るので、ゲストを待たせないよう気を遣っている。

 

大原さんにとって料理とは、人を幸せにしたり、人を喜ばせたり、楽しませたり、人を十分に甘やかせてあげるものと言っている。そのことによって人の心も満たされる。

 

そんな大原さんが、心を込めておもてなしをするのだから、、ゲストは至福の時間を堪能するのだろう。

 

私も一度でいいから、目の前で大原さんの作るあてを肴に、若林さんの選んだお酒を吞んでみたい。

 

次回のBSPの放送は、3月21日(日)の未明(3月20日の深夜)に放送予定、興味のある方は深夜なので、録画してご覧ください。

 

・「スパイスで呑む」3月21日 AM2:30~3:14

・「ビターで呑む」3月21日 AM3:14~3:58

・「昆布で呑む」3月21日 AM3:58~4:44