名古屋語(名古屋弁)       https://blog.hatena.ne.jp/my/

前回「名古屋」のタイトルで投稿しましたが、その際参照した岩中祥史著「名古屋学」の中に、名古屋語(名古屋弁)に関する章がありました。それを読んでいて、名古屋を離れて以来、全く使っていなかった名古屋語が次々と出てきて、それを使っていた子供の頃、青春時代が懐かしく思い出されました。

 

今回は、名古屋語でよく使われる言葉を拾い上げて、名古屋に縁(ゆかり)の無い方にも分かるよう、簡単な訳、注を付けてみました。ここでは、「名古屋弁」を清水義範さんの唱える「名古屋語」で統一しました。

 

岩中祥史著「名古屋学」、清水義範著「笑説大名古屋語辞典」を参照及び引用させてもらいました。

 

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          イラストACより acworksさんの作品 

 

名古屋語は、汚い言葉と思われているが、本来は語感のまろやかな美しい言葉だった。

京都言葉の「おこしやすー」のようなまろやかな語感だ。

 

・「やっとかめだなもー」:「お久しぶりですね」

             「やっとかめ」とは「八十日目」のこと 

             「だ」は終助詞、「なも」は標準語の「ねー」

              年配の女性が和服でこの言葉を使っているのを見ると

              心和らぐ

 

・「そんなとこおらんと、こっちいりゃー」

            :「そんな所にいないで、こっちにいらっしゃい」

             「やー」を動詞「いる」(来るの意)の後につけると命令

              形になるが、語感がソフトなのでキツイ命令には感じな

              い

 

・「そんなこと、いわんどいてちょお」

             :「そんなこと、言わないでちょうだい」 

              「いわんどいて」は「言わないでおいて」の省略形 

              「ちょお」は動詞の後につけて「してください」の意

               否定の命令形だが、キツク感じない

 

・「なんでですー?」   :「どうしてですか?」

              東京人が「どうしてですか?」と発音するとカドが立つ  

              が名古屋人が「なんでですー?」と言うと、険しさが感

              じられずまろやかな言い方となる

 

 

美しいまろやかな名古屋語は近年消えつつあるが、濁音の多い汚い名古屋語は衰えそうにない。「(だ)がや」「~だで」は単なる接続詞であるが、頻繁に使用されるので名古屋語全体の印象を悪くしている。語尾に付ける東京弁の「さー」にあたる「よー」も印象に悪そうだ。

 

 

名古屋語は名古屋人の合理性を追求する気質に由来してか、省略形や、音便を駆使して徹底的に省エネ化している。

 

・「しなかん」「行かなかん」 :「しなくてはならない」「行かなくてはならない」

                標準語に対して効率的に短縮されている  

        

・「おらん」         :本来は「お(居)る」の否定形で「いない」の意だ

                が、その前に動詞の連用形をつけると、その動詞の

                否定表現となる

               「しとらん←しておらん(=していない)」

               「笑っとらん←笑っておらん(=笑っていない)」

               「帰ってきとらん←帰ってきておらん(=帰ってきて 

                いない)」

 

・「そんなこと言っとらんと、いっぺん会ってみやーええがね」

              :「そんなこと言っていないで、一度会ってみたらいい 

                 のに」

 

  ・「行かせたらな」     :「行かせてやらないといけない」

                標準語に対してすごく短縮されている

 

 

尊敬表現

・「〇〇さん、きんのー、いりゃーたよ」

               :「〇〇さん、きのう、いらっしゃいましたよ」

               「いりゃーた」は「いらした」が音便変化した

                尊敬表現の過去形、現在形は「いりゃーす」

 

・「お父さんなら知っとりゃーすにー」

              :「お父さんならご存じですよ」

 

 

・「旦那さんみえる?」   :「旦那さんいっしゃいますか?」

               「みえる」は物が見えるのではない、「居る」の敬語

 

 

・「お父さん帰っとらっせるよ」

              :「お父さんは帰っておいでです」

               「らっせる」は尊敬語

 

 

 

あいずち

・「そーだがね」/「ほーだがね」:「そうだよ」/「そうなのよ」

                ここで「だ」とか「が」の濁音が入るので汚く聞こ  

                える

 

 

形容詞/副詞

・「まっぺん」        :「もういっぺん」

 

・「ばーっか」        :「ばかり」の意、

                「海水浴場は人ばーっか」のように使う

 

・「めちゃんこ」       :「めちゃくちゃ」

 

・「お風呂がちんちん」    :「お風呂 すごく熱い」

                    

 

ディープな名古屋語

・「たわけ」         :「バカ」

                「たわけらしい」は許容できる範囲だが、   

                「どたわけ」はどうしようもない大バカ者

                 関西弁の「あほう」と同義語

 

・「嘘こいとったらかんよー」 :「嘘言ったらダメだよ」    

                「こく」は「放つ」「発する」の意

                どちらかというと、下品な言葉なので名古屋でも

                育ちの良い人は使わない

 

・「おーじょうこく」     :「大変な目に合う」「困り果てる」の意

 

・「~げな」         :「~だそうだ」「~らしい」

                「向かいのネエさま、今度結婚するげな」の

                 ように使う

 

・「おそがい」        :「怖い」「恐ろしい」の意

 

・「あらすか」        :「あるわけがない」そんなこと絶対にあるわけがな

                いというニュアンス

 

・「どえりゃあ」       :「非常にすごい」の意 最近全国でも名古屋の代表

                的な言葉としてよく耳にするようになった。

                東京では「どえりゃあ」=名古屋のような使われ方

                もしている

 

・「えらい」         :「偉い」の意味でも使われるが、「疲れる」の意味

                で使われることが多い

               「歩いて帰ってきたんかねー、えらかったでしょう」

  

・「わやだがや」       :「わや」は「無茶苦茶」「台無しにすること」

 

・「ほかっとく」       :「放っておく」の意、

                「ほかる」は「捨てる」「放る」の意

 

・「~まい」         :動詞の後に付けて、「~しよう」英語のLet's

                行くに「まい」を付けて「行こまい」=「行きま

                しょう」

 

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今回は、私のノスタルジーから書かせてもらいました。

 

言葉を略して使うことは、現代でもよく行われていますが、(若者言葉で、「了解しました」を「り」と極端に簡略化するとか)名古屋語には略してできた言葉が沢山あることを知りました。それは昔から名古屋人が合理性を重んじる気質から生じたと知り興味深かったです。