川井郁子さん

このブログを始めた直後と、昨年秋の2回、ジャズヴァイオリニストの寺井尚子さんについて投稿した。

     ・2019年9月23日 「寺井尚子さん」

     ・2020年11月13日「寺井尚子さん 2」

 

寺井尚子さんについては、今でもYouTubeでよく聴いているが、その時必ず近くの枠に表示されるのが、川井郁子さんの動画だ。

 

川井さんの演奏を始めて視聴したのは、寺井さんの「リベルタンゴ」と聞き比べるためだった。この時は、私が寺井さんの演奏に圧倒された直後だったため、川井さんの演奏は演出に凝っていて面白いなとは思ったものの、視聴後の感動は、寺井さんの方が勝っていた。

 

その後、川井さんの演奏も色々視聴してみると、舞台演奏は何れも、目で見ても楽しめるように演出され、演奏も芸大クラシックヴァイオリン出身だけあって、お上手であった。

  

今回は、川井さんにスポットを当ててみようと思う。

 

川井さんは、香川県高松市出身、今年53才のヴァイオリニストだ。ヴァイオリンのみならず、作曲家、大阪芸術大学教授、俳優など多方面で活躍されている。

 

6才でヴァイオリンを始め、小5の時、高松で行われた海野義雄リサイタルでサインをもらいに行って、海野氏から東京の海野氏宅に練習に来ないかと誘われる。以降2年間、月に数回宇高連絡船、こだまを乗り継いで日帰りで東京に通った。

 

東京芸大に入学以降も、クラシックヴァイオリンを弾いていたが、譜面通りに演奏することに疑問を感じるようになる。そんな時、タンゴの革命児といわれたピアソラの曲を聞く。それは、タンゴをベースにしたジャズ、クラシックの要素が取り入れられており、ジャンルを超えたピアソラ独自の音楽に触れ、深い感銘を受ける。

 

ピアソラを聴いたことで、自分も自分の音楽を表現したい思うようになり、以後作曲も手掛け、演奏も独自の表現を模索し、曲目もクラシックにとらわれないようになる。

 

以降はジャンルを超えた活動が多様となり、フィギアスケートの荒川静香さん、バレーの熊川哲也さんとの共演、国内外の主要オーケストラや、ポップス系アーティストとの共演も数多くこなしている。

 

自身の音楽世界を表現するために、舞台芸術と一体化した演奏パーフォーマンスで、音楽総監督として舞踊劇を作り出すといったこともやっている。

 

最近は「和」とのコラボレーションに傾倒し、7年前に発表された「夕顔・源氏物語より」は川井さんが、十二単のような衣装を纏ってヴァイオリンを弾き、セリフも語り、バックには雅楽の奏者が並び、一人芝居のような創作劇にもチャレンジしている。女優をやっていたので、その素養があるのだろう。YouTubeにも投稿されているので、興味のある方は検索下さい。

 

 

 

今回は数ある川井さんの演奏の中から、

リベルタンゴ」「死ぬほど愛して」「エル・チョクロ」の3曲を取り上げる。

 

①「リベルタンゴ

この曲は、川井さんの経歴でも書いたように、川井さんが現在の活動を始める基となったピアソラの作品である。ピアソラは、従来のタンゴに行き詰まりを感じ、ダンスの為の制限の多いタンゴからの脱却を模索する。当時若者達に人気のロックやジャズの形式をタンゴに取り入れて完成したのが、この「リベルタンゴ(自由なタンゴ)」だ。

 

この曲は又、寺井尚子さんも大切にしている曲で、この曲を通して、私が寺井さん、川井さんを知るキッカケとなったので、私にとってもご縁の深い曲である。

  

この動画は、2005年の嵐が丘Live concert tour  で収録されたものだ。

出だしは、島健さん(歌手の島田歌穂さんの夫君)の圧倒的で歯切れの良いピアノ演奏で始まり、しばらくして暗闇から川井さんが現れヴァイオリン演奏をする仕掛けだ。ピアノ、ヴァイオリン、ギターが一体になっての演奏はなかなか見ごたえがある。

  


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②「死ぬほど愛して Sinno me moro」

1959年に公開されたイタリア映画「刑事」の主題歌だ。映画の出演者はピエトロ・ジェルミクラウディア・カルディナーレと言った懐かし名前が並ぶ。歌っているのは、アリダ・ゲッリ、 ヨーロッパの曲なのに、どこか日本人の好みそうな旋律で、日本でも長く親しまれてきた。

 

この動画も、①同様 2005年嵐が丘Live concert Tour での収録である。

ギター前奏の後、聞き慣れたメロディを川井さんが切々と奏でる。後方に黒人ダンサーが現れ、ヴァイオリン演奏に沿って踊り、「アモーレ、アモーレ、アモーレ、アモーレミオ」と歌いだす。見た目の印象より歌は上手い。川井さんは陶酔した表情で、遠くを見据えて聴き入る。なんとも官能的である。

 

黒人ダンサーとのコラボが見事な動画だ。

 


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③「エル・チョクロ」

1903年アンヘルビジョルドが作曲したとされるアルゼンチンタンゴの代表作。「エルチョクロ」とはスペイン語で「とうもろこし」と言う意味だそうだが、由来は諸説あって不明。

 

今回紹介する動画は、川井さんが、腰までスリットの入った緋色のロングドレス姿で登場し、タンゴのリズムに合わせて、颯爽と演奏する。時々スリットから伸びる白い脚線に、世の殿方達は悩殺されてしまいそうだ。

 

ヴァイオリンの響き、リズムを刻むステップに魅惑される動画である。

 


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