へんろ日記 1

今回からの「四国遍路」は、2017年(平成29年)秋から初冬にかけて旅した二回目の「四国へんろの旅」を、日記風に綴ってみたいと思います。(非定期)

 

 

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10月22日(日)(2017年/平成29年)

<旅の出発>

1番霊山寺から巡拝する場合、序盤の難関11番藤井寺から12番焼山寺の遍路転がし(急な山道の続く難所)を、無事通過することがその後の旅の重要なポイントだ。ここは普通に歩けば三日目に当たり、晴れた日に通過したいので、その日の天候は非常に気になる。

 

出発の数日前から、毎日徳島県北東部の週間天気予報をチェックしていた。この日(22日)は台風21号が四国に接近するので、出発は24日の台風が過ぎ去ってからと考えていた。

 

5:00に起きて、徳島県の天気を見ると、明日(23日)雨は明け方には止んで、その後3日間は晴れマーク、24日出発だと3日目の天気があやしい。急遽本日の出発を決意する。長期間留守にするので、風呂掃除、冷蔵庫の片付けなどをバタバタとやって、自宅を8:10に出発する。

 

台風の影響で、雨が強く降っていたが、新幹線は通常運転、新大阪からJR大阪駅へ。西口のバスセンターでバスを待つ間に、本日と明日の宿へ宿泊前倒しの予定変更を連絡し、OKとなり一 安心。

 

12:40高松行の高速バスに乗車。発車してアナウンスで明石海峡大橋、鳴門大橋の風速が15m/S以上の場合は大阪に引き返すと告げられる。私の座席は1B、左の最前列で 運転手の運転の模様がつぶさに観察できる。

 

この運転手、高速道を運転中雨が強く降りしきる中、ペットボトルのお茶を飲んだり、ハンドルから両手を放して飴の袋を破いてと口に入れて食べたりしていた。それを見ていた私は、もう怖くなって「真面目に前を見て運転してよ!」と言いたくなるほどであった。

 

明石海峡大橋に着いたが、なんとか大阪へ引き返えすことなく橋を通過できた。淡路島に入ると、台風の風雨のため高速は、50㎞/Hに制限されていたが、バスは80~100㎞/Hの速度で飛ばす。雨は10~30mm/Hの大雨、スリップが怖い。

 

鳴門大橋の橋上に出る。風が強くなり走行中のバスは何度も横に流される。それでもバスは速度を落とさない。バスが横転するのではと恐怖心にかられる。「このまま何とか四国まで行ってくれ!」と祈る。

 

無事橋を渡って四国に上陸、15:00に鳴門西PA着、バスを降りて恐怖心から解放された。

 

外はどしゃ降りの雨だった。PAの軒下でザックから雨具を出し、万全の雨支度に身を整え、本日の宿(O苑)まで大雨の中を歩く。

 

15:30 O苑着、O苑は1番霊山寺東門の前にあり、参詣には絶好の位置にある。宿で濡れた雨具を乾かしている間に、霊山寺へ行く。霊山寺は本堂を修復中で、売店も移動しており、3年前に来た時とは、だいぶ様子が違っていた。本堂で明日からの遍路の無事を祈願し、売店で納経帳、収め札などを購入する。杖、笠、さんや袋、白衣、地図帳などは、初回使用したものをそのまま自宅から持参した。

 

O苑に戻り、18:00夕食、宿は料亭も兼ねているだけあって食事は牛肉の陶板焼き、鯛やヒラメの刺身、魚のから揚げ、茶わん蒸し等豪華で美味しかった。料金は少々高かったが、設備もよく満足のいく宿だった。

 

3年前の初回に泊まった宿は、老夫婦の営む民宿で、寝具の枕や布団のシーツが洗濯せずに前の客が使ったもので、度肝を抜かれた。遍路宿とはこういうものかと、その時思い、これから先もこのような宿のお世話になるのかと、暗い気持ちになったものだ。

 

今回のO苑はそれに比べると雲泥の差で、21:30気持ち良く就寝.

 

 

 

10月23日(月)(曇→晴)

<1日目 1番霊山寺→6番安楽寺

7:55 1番霊山寺は、昨日お参りはすませてあるが、もう一度参拝して、2番に向かう。台風は深夜に四国を通り過ぎて、東に去っていったが、朝方は曇りで、時折台風名残の突風が吹き、かぶっている笠が飛ばされそうになる。途中小さな川を何本も渡るが、どの川も、昨夜の雨で増水し、川幅一杯にゴーゴー音を立てて流れていた。

 

8:20 15分で2番極楽寺に到着。へんろ道のルートはよくできていて、旅の初めの1日目と2日目は、札所間隔が短く平地で歩きやすく、これから先長旅の足慣らしに恰好である。

 

極楽寺は、88カ寺の内、私の好きなベスト10に入るお寺である。お寺の手入れが行き届いており、清潔で清々しく心洗われるお寺だ。

 

境内に水かけ不動尊像があり、不動尊の前の2体の子供の像がとても可愛らしくて、カメラに収める。

 

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大師堂の陽当たり良い屋根で、2匹の猿(親子か?)が、毛繕いをしていた。

 

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9:20 3番金泉寺 納経所で次の4番へのルートは、大雨でへんろ道がぬかるんでいるので、先に5番へ行って4番を往復するよう勧められる。これだと4㎞ほど遠回りになる。私はロングスパッツを持参していたので、大丈夫と判断して、通常のへんろ道を取る。問題なかった。

 

途中へんろ道上にある「愛染院」というお寺でお茶の接待を受ける。その先の3年前に立ち寄った「うどん屋さん」は無くなっていた。

 

極楽寺金泉寺の南にある藍住町は、全国的にも有名な藍染めの産地だ。

 

11:00 4番大日寺の手前の道路には、台風で木の枝が散乱しており、お寺の若いお坊さんが掃除していた。空は晴れてきたが、風が強く周りの山がゴーゴーと鳴っていた。

 

11:35 五百羅漢 展示場の受付に、3年前の見覚えがあるお婆ちゃんと、その介助役の男性に再会する。柿の橙色が周りのお寺の景色に溶け込んで美しい。

 

11:50 5番地蔵寺着 初日ここまで非常に順調にきた。台風一過の快晴で、天高く真っ青な天空を飛行機が悠然と飛んでいる。このまま進むと次の6番安楽寺(今日の宿)へは、早く着きすぎるので、ベンチで靴下も脱ぎ、ここで長い休憩を取る。

 

今回1番からここ5番までへんろさんには、個人団体とも一人も会っていない。しばらくすると20代位の若いへんろさんがきた。彼は、般若心経の後に、梵語のお経も読んでいて感心する。彼は今日は10番まで行って野宿するそうだ。

 

13:00 地蔵寺発 平らな歩きやすいへんろ道を遍路の道標に導かれて進む。この辺りは和菓子の和三盆の産地でもある。上質なものは100g1260円もして上品な甘さを保っているとのこと。 

 

14:10 6番安楽寺着。部屋で荷物を整理し、風呂に入る。このお寺は「温泉山安楽寺」という名称だけあって、お風呂は温泉ホテルのような立派な岩風呂だ。夕食の後、僧侶の説話を聞いて20:00就寝

 

1日目の歩数:30,600歩  歩行距離:19.9㎞

 

 

10月24日(火)(晴)

<2日目 6番安楽寺吉野川市鴨島

7:10 6番安楽寺出発。早朝の気持の良い時間に、7番十楽寺、8番熊谷寺、9番法輪寺と順調に参拝を続ける。

 

10:05 10番切幡(きりはた)寺の参道到着。切幡寺の本堂と太子堂は333段の石の階段を登った先にある。前回は参道の表具屋さんから「荷物を預かりますよ」と声を掛けられ、ザックを預け、さんや袋だけでお寺を往復したが、今回は声掛けもなくザックを担いで往復した。(これが普通なのだが)

 

次の11番藤井寺は、この南を流れる四国第一の大河吉野川の対岸にある為、吉野川を渡らねばならない。この辺りの吉野川は中州が発達し、中州は広大な農地となっている。したがって、対岸へは、左岸-中州、中洲-右岸(川島橋)と二つの橋を渡る。

 

11:10 最初の橋を渡った先の道端に「川島橋通行不可」の看板が目に留まる。昨日の大雨による増水の影響だろう。車の通行不可は分るが、歩行もだめだろうか?と考える。農夫の方が軽トラで通りかかったので、聞いて見る。彼も人の通行については知らないとのことで、私を軽トラに乗せて現場まで運んでくれる。(歩くと30分以上の距離)「こころ旅」の火野正平さんになった気分だ。

 

この橋は沈下橋で、昨日までの大水で埋まり、今は水は引いたが橋は泥だらけで、小型のショベルカーでその泥の除去作業をしていた。作業員さんにショベルカーの横を歩いて通っても良いかと聞くと、OKとの返事。

 

軽トラの農夫さんと、作業員さんにお礼を言い、橋を歩いて渡る。まだ十分泥を除去していないので、靴はどろだらけとなる。沈下橋なので橋の欄干、手すりは無い。橋の10㎝位下の所を、濁った水がゴウゴウと流れていて、長い筏(いかだ)の上を歩くような感じだ。水を見つめていると目が回りそうだ。橋は7~80mはある長い橋なので、橋の途中で周りを眺めると大量の濁流に飲み込まれてしまいそうで怖かった。対岸についてホット一息つく。

 

11:50 岸の上のうどん屋さんに入る。徳島県北部のうどん屋さんは、お隣香川県に近いせいか讃岐うどんやさん形態のお店が多い。山菜うどんとレンコン天を注文、四国のうどん屋さんの味で美味しかった。店の人から接待でシユウクリームを頂く。

 

13:00 11番藤井寺、明日参拝の予定を本日中に済ませる。

 

14:00 ビジネスホテルチェックイン 洗濯をしながら入浴。

 

17:30 ホテルでは食事が出ないので、近くの回転すしで夕食

 

21:30 明日はへんろ序盤の難所「遍路転がし」だ。明日に備え就寝。

 

2日目の歩数:38,700歩  歩行距離:25.2㎞

 

 

              ー続く(不定期)ー