前回(11月2日アップの「へんろ日記 2」)の続きです。
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10月28日(土)(雨)(2017年/平成29年)
4:40 ビジネスホテル出発 1日目から5日目までは天候に恵まれ、全て晴れだったが、台風22号が四国に接近しており、その影響で徳島県も、日付が変わった頃から雨が降り始めた。
今日は一日雨中歩行となりそうなので、少しでも早く今日の宿(勝浦町の民宿 K亭)へ到着したくて、ホテルの朝食をキャンセルして早朝出発した。
今日の雨対応はどうしようかと迷った末、一日折り畳みの携帯傘のみで通した。頭はビニール付きの網笠でザックは雨カバーをしているので、傘はさんや袋と身体の前方を守るように置く。この恰好で歩けば、背中はほとんど濡れない。ズボンは短パンなので足元が濡れるのは気にならない。
このスタイルだと歩いていても涼しくて快調である。そして何よりの利点は、雨具着脱の手間が省けること、即ちその分時間が稼げることだ。上下セパレートタイプ雨具のように、内側がむれて自分の汗でビショビショになるという不快な思いをせずにすむ。
ホテルを出た頃はまだ暗かったので、懐中電灯を照らしながら歩いたが、国道55号へ出ると灯りは十分で、懐中電灯も不要となった。
6:50 18番恩山寺着 境内には、大師の立像の両側には、何百体もの仏様の像が設置されており、早朝の雨のお寺の雰囲気に馴染み心癒される。
恩山寺の参拝を済ませて、山門を出たところで、アスファルト道路の雨水桝上のグレーティング(格子状柵)に足を滑らせて転倒した。右膝を打ち血とか白いものが出て、外見ではとても重症に見えたが、痛くはなく歩行にも支障なかったので、そのまま手当もせずに、へんろを続行した。
8:00 19番 立江寺着 立江寺の周りは民家が密集し門前町を形成している。お寺も16番観音寺のような街中のお寺と言った趣きがある。
本堂内の[賓頭盧(びんずる)像] (釈迦の弟子十六羅漢の第一)
9:55 勝浦川沿いの県道16号に出たところのコンビニに立ち寄る。店のイートインでおでんとホットミルクティを買って飲食する。雨の中を歩いてきたので、冷えた身体が温まり一息つく。
たまたまイートインしていた64才の野宿へんろが、私の足のけがを見て、医者に診てもらった方が良いと言う。今夜泊まるK 亭に電話して、この近くの病院を教えてもらう。病院はK亭から更に30分程行った所で、今日は土曜日だが、そこは町立の救急病院なので、診てくれるそうだ。
10:35 雨の中病院に向かって歩いていると、心配したK亭のおかみさんが車で迎えに来てくれた。折角のご厚意ではあるが、へんろの途中なので、歩きを中断することはできないと、鄭重に乗車をお断りして歩行を続行する。(へんろを中断すると、再開する時はその地点まで戻らねばならない。)
11:15 K亭近くの道の駅まで来た時、雨が本降りとなり、雨具を付けようかと降りしきる雨の道端に佇んでいたら、車の若い男女が声をかけてくれ、病院まで送ってくれると言う。K亭までの距離は歩いたので、お言葉に甘えて運んでもらうこととする。
11:30 勝浦病院 病院の待合室で怪我の様子を観察すると、外見上は派手に出血しているが痛くはない。
本日の担当医は内科の先生ではあったが、傷口を4針縫ってくれた。田舎の病院なので軽度のことは何でも対応するのであろう。ボソボソと独り言を言いながら治療してくれる人の良さそうな先生だった。
13:30 K亭のご主人が車で迎えに来てくれ、K亭着。台風が到来しているので、K亭には2連泊する予定。
ご主人自らが作った自慢の岩風呂には、足の怪我で入ることができなかった。
6日目の歩数 44600歩 歩行距離 29.0㎞
10月29日(日)(雨 台風22号)
<7日目 勝浦町 K 亭 滞留>
本日は台風が通過するまで、歩行を中止してK亭に滞留することとする。
K亭には、初回のへんろ旅の時も、台風と重なり大変お世話になった。 四国を一周した後、その時のお礼が言いたくて、バスに乗ってK亭を再訪したくらいだ。
(その時の経緯については、本ブログの2020年12月11付け「にっぽん縦断こころ旅」の後半に記載していますので、一読下さい。 )
K亭のご主人は、前回来た時は癌の治療中で、どことなく暗い感じがしたが、今回凄く元気だったので安心した。 ご主人曰く「自分本位に考えていたものが、生かされていると悟ったことで、病気も病院治療せずに奇跡的に良くなった。」
このご主人、県警のテレビコマーシャルに出演したり、鶴林寺へのへんろ道上に竹のベンチを作って新聞に載ったりと、地元では有名人だ。 その他尺八や岩風呂を作ったり、星の岩屋というところへ2年半通って、岩壁に摩崖仏不動明王を彫り込んだりと、ただものではない人物だ。
ご主人の彫った不動明王
朝食時にご主人が、雨が降ると見栄えがするという「灌頂(かんちょう)ヶ滝」を見に行こうと言う。 台風による強風は吹いていないものの外は大雨だ。 余り気は進まなかったが、折角のお誘いだったので、同宿のへんろと車で連れて行ってもらう。
県道16号を西へ15㎞ほど山道を車で登った所から滝が遠望できた。 ここは20番鶴林寺の奥の院「慈眼寺」の近くだ。 「灌頂」とは水行のことで、その昔、弘法太子がこの滝で修行したことから、この名前が付いたという。
余り期待していなかっただけに、一目見てその高さ(70m)と美しさに驚いた。 華厳の滝か那智の滝かと思えるほど立派な滝だった。 雨にけぶる姿も良かった。 ご主人も、いつもは水が少なく、これだけの水が落ちているのを見るのは始めてだと言っていた。
帰りに病院に寄って、看護婦さんが傷口の確認と傷口パットの交換をしてくれた。可愛い娘さんだったが、「化膿の進行が心配なので、明日も外科医に診てもらった方がよい」と脅かされる。
昼食は宿のおかみさんの案内で、道の駅のうどん屋さんに行った。
10月30日(月)(晴)
6:00 ご主人はバスの運転のアルバイトで出勤、今回も色々お世話になった礼を言って別れた。
6:45 K亭出発、おかみさんから、遍路の接待として昼食のおにぎりとバナナを頂く。台風も昨日中に通過し、明け方は曇っていたが次第に晴れてくる。
登り始めて20分位のところに、昨日聞いたK亭のご主人が作ったという竹のベンチを発見する。
今日参拝予定の20番鶴林寺と21番太龍寺は、何れも山の頂上にあって、その登りは急でへんろ道としては、二番目の「へんろ転がし」(最初は焼山寺への登り)とされている。
私は初回のへんろの時、この鶴林寺への登りには大変苦しめられ、山頂近くの急な登りでは、10歩登ってハーハーして休むということを繰り返した。四国の全工程中一番キツイと感じていた。
前回あれだけ苦しんだ山道も、今回はそれほど苦しまずに登れた。途中那賀川を見晴らせるところでも、「きれいで気持ち良いな」と感じる余裕があった。
8:10 20番 鶴林寺着 ここから那賀川までの急な下りは、前回30分で駆け下ったが、今回は昨日の雨で登山道が濡れていて、滑らないように細心の注意を払いながら下山したので、55分かかった。
9:20 那賀川へんろ休憩所 鶴林寺と太龍寺の中間の那賀川左岸にある休憩所で、初回の時はへんろ接待用に段ボール一箱のみかんが置かれていたが今回は無かった。
11:10 21番 太龍寺着 21番への登りも、初回へんろの時より苦しまずに登れた。ここへの途中から、冷たい風が吹くようになり、山頂にある太龍寺はとても寒くて、昼食は下山して食べることとする。
12:25 十三亀の塔 山を下りたところにこの塔がある。13匹の亀が背中に乗って塔を築いている。名前の下に「不老長寿 無病息災 財運を招く縁起の良い塔」と彫られている。
ここは、初回のへんろの時、K亭のご主人から預けたザックを受け取った所だ。
下山してもまだ寒く、宿を出た時は、半袖のTシャツに短パンの姿だったが、長袖シャツ、ヤッケなど防風防寒着を着て、K亭おかみさんが作ってくれたおにぎりとバナナを立ったままで食べる。
13:10 阿瀬比 ここから22番平等寺へはへんろ道の山道となるが、前回この峠道で大変辛い思いをしたので、峠道を迂回する県道経由を取ることとする。
14:05 阿南山口郵便局 昨日K亭で書いた友人への手紙の重量を量ってもらい、投函した。
14:55 本日泊まる民宿Sへ到着、
15:00 22番 平等寺 宿へ荷を預けて参拝
民宿Sは、初回台風で連泊した宿だ。設備は良く、おばちゃんは働き者で、食事も美味しく良い宿だ。洗濯は接待ということで無料だった。有難い。
8日目の歩数 45800歩 歩行距離 29.7㎞
ー続く(非定期)ー