へんろ日記 4

11月16日にアップした「へんろ日記 3」の続きです。

 

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10月31日(火)(晴)(2017年/平成29年)<阿南市→日和佐市>

<9日目 22番平等寺→23番薬王寺

 

6:30 民宿S 朝食 この宿のオーナーが接待として手作りのパンを差し入れてくれた。前日のK亭といい、このSといい、へんろへの心遣いをありがたく頂戴する。

 

7:30出発

 

8:25 国道55号 へんろ道はここで国道を歩くことになるのだが、国道へ出るあたりのルートが、初回も迷ったが分かりずらい。  国道を30分歩いて一般道へ。

 

8:55 交通量が多くて、騒音や排気ガスで不快な思いをした国道を離れる。刈り取りの終った静かな 田圃の中の道を気持ち良く歩く。

 

9:35 由岐坂峠 峠の少し先で、へんろ開始以来初めての海を遠望する。「やっと海の見えるところまで来たか・・・」の感。

 

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10:30 海沿いの「由岐」の集落を通る。今まで歩いて来た内陸の集落とは、全然雰囲気の違う潮の匂いが染みついた田舎の佇(たたず)まいだった。しばらくすると、JR牟岐(むぎ)線の向こうに綺麗な砂浜の海岸が現れる。田井の浜だ。

 

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夏は海水浴場にでもなるのであろうが、その他のシーズンはこの日のように、誰もいない静かな美しい風景を持て余しているようだ。

 

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11:10 木岐 先ほど通った由岐の隣の漁港の町で、由岐、木岐と同じような名前の地名が二つ並んでいる。

 

11:20 木岐郵便局 3日前に膝の怪我で診療してもらった勝浦病院の診療費は、休日で未払いだった。昨日メールで請求額の通知があったので、この郵便局から振り込むこととする。ここは、3年前も立ち寄ったところで、その時は、現金の引き出しと、ハガキ、切手、封筒を買った。

 

封筒は茶色の事務用と思しきものしか無かったが、局の職員や女性事務員さんはとても親切だった。今回対応してくれた方に3年前も立ち寄ったと告げると、とても喜んで下さり、その時の女性事務員さんはお辞めになったとのこと。

 

郵便局前の「よろずや」に入ってみる。今でいう「コンビニ」で食料品から生活用品まで何でも売っている。店がほとんど見当たらない田舎では貴重な存在で、近所のおばあさん達が買いに来てお喋りをする地域のコミュニケーションの場にもなっている。店の中でさつま揚げを揚げていたので、それを買い求める。

 

11:35 木岐漁港 漁港の少し先の防波堤で、立ったまま、先程買ったさつま揚げと宿でいただいたパンを食べていると、郵便局の職員さんが車で私を捜しに来た。私が局で健康保険証等の入った小袋を忘れ、それを職員さんが届けようと来て下さったのだ。

 

私が、食事休憩をせずそのまま先に進んでいたら、車の通行できない山道となり、職員さんにも見つけられず、保険証等は忘れたままになっていた筈だ。何て幸運なのかと大師様のお陰と感謝する。親切な局員さんには、厚く厚くお礼を申し上げる。

 

漁港から先は左手に海を眺めながらの、登りの遊歩道となり、全国から寄せられた「へんろ」に関する俳句の標識が続く。「俳句の径」と称せられている。 

 

12:40 山座峠 峠から急な山道を30分ほど下ると、日和佐湾に出る。湾を左に見ながら風光明媚な海岸道路は上り下りを繰り返す。

 

14:10 T 薬局 日和佐の町へ入り、薬屋さんをグーグルで探して立ち寄る。膝のケガの消毒剤とシールを買う。太った店員さん(店長さんか?)が貼ってくれる。風呂に入ってもいいとのことだが、店員さんの貼り方は雑だった。

 

日和佐は、この辺りとしては大きな町で、白い日和佐城が町のどこからも眺められ、雰囲気も良い。ここは、平成21年度後期のNHK朝ドラ「ウェルかめ」の舞台となったところだ。日和佐川の橋から、川の先にこれから訪れる薬王寺の塔が望まれる。

 

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14:40 23番薬王寺 徳島県最後の札所だ。本堂への登り階段はキツイ。

 

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                薬王寺の境内

 

15:30 本日の宿、日和佐駅前のビジネスホテルKにチェックイン。田舎のビジネスホテルなので、名ばかりかと思ったが、エレベーターは無いものの、意外と小ざっぱりとして感じの良いホテルだった。

 

18:00 ホテルで夕食は出ないので、駅前の食堂に行く。その食堂の中学生くらいの息子さんと、仕事を終えた地元の職人さん達がお酒を交えて楽しそうに食事をしていた。私はよそ者ではあるが、違和感なく迎えてくれた。カツカレー、サラダ、ビールを注文する。塩味が濃かった。

 

21:00 就寝

 

9日目の歩数 44600歩  歩行距離 29.0㎞

 

 

 

11月1日(水)(晴)

<10日目 日和佐市→海陽町宍喰(ししくい)>

 

4:30 出発 ホテルの朝食が無いので早朝出発し、国道55号を西進する。この時間山道の国道は照明が無く真っ暗闇、懐中電灯が無ければ歩けない。40分程で日和佐トンネルに入り、通過に16分を要す。

 

6:00頃から明るくなり始める。地方の国道は歩道が無いところが多く、トラック等の大型車両とすれ違う時は怖いが、この辺りは歩道が比較的多くて助かる。

 

7:00 小松太子 この時の出で立ちは、下は短パン、上は半袖Tシャツ+長袖シャツ+ヤッケで、早足に歩けども寒い。私は汗かきで、シャツはすぐに汗で濡れてしまい、休止時に着替える手間を省くため、歩行中は極力薄着にしている。

 

7:30 牟岐(むぎ)市街に入る。国道に平行する牟岐川は河口に近いにもかかわらず水は透明できれいな川だ。街も趣きがあって歩いていて気持ちが良いが、この辺りから猛烈に寒くなった。

 

7:40 コンビニの看板が見えて嬉しい。店に入り、ホットミルクティー、おでん(大根、コンニャク)を求める。ここはイートインできないので、店の外で食べて体内から暖を取る。

 

8:35 内妻海岸 意味深長な名前だが綺麗な海岸だ。11日目と12日目の宿を予約する。2件ともOKでホット一息つく。

 

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9:45 鯖太子 ここは別格4番の札所だ。今回は88番霊場の参拝なので、別格は通過する。

 

11:15 海陽町海南の町に入る。百均で消しゴムと手袋を、 地方にしては大きなドラッグストアで身体に優しいMg下剤を買う。

 

11:50 海部川(かいふがわ) 川を渡った所の河口の堤防で昼の休憩とする。海部川の河口なれども、水は清くゆったりと流れている。、今日は早朝出発でここまで懸命に歩いてきたので、久々に川のようにゆったりとした気分になった。

 

12:40 左手に那佐湾が大きな川のように続く。早朝からの歩きで少しバテテきた。

 

14:30 本日の宿 B 旅館に到着。宿に荷を置いて、宍喰(ししくい)の町を散策する。宿の西側を走る「阿佐海岸鉄道阿佐東線」の宍喰駅へ行ってみる。

 

JR牟岐線海部駅が終点でその先、高知県甲浦(かんのうら)までのたった二駅の距離を第三セクター阿佐東線が敷設されている。この辺りは高架になっていて、駅も階段の上にある。駅周辺には店も何も無い。自販機でカフェオレを買って飲みながら、「こういう所もあるものだな~」と感慨深く思う。

 

18:00 夕食 「赤毛のアン」を中年にしたようなソバカスの多い英国の女性と同席する。会話をすれども、私の英語力では2~30%くらいしか理解できなかった。

 

20:00 就寝

 

 

10日目の歩数 62610歩  歩行距離 40.7㎞

 

 

 

11月2日(木)(晴)

<11日目 徳島県海陽町宍喰→高知県室戸市佐喜浜>

 

6:55 B 旅館を出発

 

7:25 国道55号へ出て、水床トンネルを通過。高知県に入る。昨日の朝は寒さが堪えたので短パンにオーバーズボンをはき、上は長袖シャツにヤッケ姿で歩いていたら、登り坂では暑くなりヤッケを脱いだ。

 

7:45 東陽町甲浦(かんのうら) 高知県最東端の町だ。国道沿いに立派なリゾートホテルもあって、町は観光に力を入れているようだ。

 

8:30 生見(いくみ)海岸 ここはサーフィンの名所らしい。

 

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この写真では分かりにくいが、波の先にポツポツと黒い点に見えるのがサーファー

 

初回へんろの時は、京都を深夜に出て高速を走ってここへサーフィンに来て、日光浴をしていた若い女の子の二人連れに会って会話したところだ。暑くなって長袖長ズボンを脱ぎいつもの半袖、短パン姿になる。

 

9:30 野根川 橋を渡ったところにある民家の3匹の犬に猛烈に吠えられ、飛びかかってくるのではと怖い思いをする。

 

9:40 ここから室戸岬の手前までは、民家は一軒もない。山裾の海岸線に沿った国道55号を、右に山、左に太平洋を見ながらひたすら歩くしかない。下の写真の風景が4時間続く。

 

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11:45 へんろ休憩所  東陽町から室戸市に入ってすぐに「へんろ休憩所」があり、干し芋を食べていたら、ブラジルの若い男性がやってきた。2~3回野宿をして1回は民宿やホテルに泊まるそうだ。外国人はこのパターンが多い。

 

ここでも会話は半分くらいしか通じない。彼に干し芋をあげたら、プロテインをくれた。水気の物はミカンしかなく、喉が渇いていたので、とても美味しかった。彼にとっては貴重なものをくれたみたいで、申し訳ない気がした。

 

13:25 佐喜浜スーパーマーケット 国道から外れて佐喜浜の集落に入る。どこか懐かしく好感のもてる集落だ。田舎の小さなスーパーだが地元の人にとっては掛け替えのない店なのであろう。

 

ジュースを2本買い店の外のベンチで飲んでいると、先ほどのブラジル青年がやって来て、彼もこの店に立ち寄った。先のプロテインのお礼に別のプロテインを買って与える。「Idont need this」と言うので、「Iwant to give you it」と返すと「オセッタイ? OK アリガトウ!」と言って受け取ってくれた。

 

14:30 民宿T着。時間が早かったのか、民宿の窓は全て開け放たれて、室内に風を通していた。

 

18:00 夕食 この宿の食事は今回のへんろではピカ一だった。金目の煮つけ、マグロ、カンパチ、イカの刺身、酢の物、煮物他、天ぷらは客が座席に座ってから揚げる揚げたてだ。こんな美味しい料理なのに、お酒を注文したのは、10人ほどの客で私だけだった。

 

11日目の歩数 44900歩  歩行距離 39.2㎞ 

 

 

             ー続く(非定期)ー