へんろ日記 9

2月6日にアップした「へんろ日記 8」の続きです。25日目から後半の愛媛県に入ります。

 

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11月15日(水)(晴)(2017年/平成29年)

<24日目 土佐清水市竜串 → 宿毛市平田>

 

5:50 朝食 ここも朝早い時間に朝食を出してくれて助かる。

 

6:15 ホテルO 出発 歩き始めて直ぐに、左手の日の出前の海岸線が美しい。朝早く誰もいないきれいな場所を歩いていると、風景を独り占めしているようで、贅沢で幸せな気分になる。

 

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7:00 下川口 集落の民家の前を通ったら、二階の窓から声を掛けられ、みかんの接待を受ける。この辺りは、余りへんろは通らないと思うが、四国全体に接待文化が根付いているのだろう。ありがたい。

 

8:35 出会橋 昨日半日ゆっくり休養したせいか、体調は頗(すこぶ)る良好。一気にここまで来た。

 

9:00 道の両側に5~6軒の廃屋が点在する。数年前までは、ここで生活していた人がいたのかと思うと切ない。この辺りは四国でも特に交通の便が悪く、耕地も少なく、生活に不便で家を捨てて転居したのだろう。

 

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9:30 3年前に通った時は、左の山の斜面が崩落して、赤い土がむき出しになっていたが、3年経って、崩落個所は草木が生えて土の色は見えなかった。自然の回復力は凄い。

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10:30 ダラダラの登り道でキツクはないが、高度は標高250mまで上がっている。

 

11:05 神社の前の道端の陽だまりでお昼休憩、ホテルOで用意してもらったおにぎりと接待で頂いたみかんを食べる。久しぶりに食欲があった。ここは、高知県西南部の山間にある三原村という小さな村で、日本昔話の舞台のような所だ。 

 

13:00 県道21号 ここから本日の宿のある平田までは、下り坂の連続、途中景観の良い中筋川ダムのダム湖を見下ろしながら、快適に下る。

 

14:55 T旅館着。 宿の手前で、学校帰りの女の子に宿の場所を尋ねると、その子は泊まる旅館のお嬢さんだった。

 

旅館は、こざっぱりして感じが良かったが、部屋は隣室と襖一枚なので、音のプライバシーが保てない。

 

宿泊者は私を含めて3人。私以外の2人は横浜へんろだった。その内一人は、この後1週間程、同じ宿になったり、お寺やへんろの途中で会ったりした。

 

24日目の歩数 56,600歩     歩行距離 36.8㎞

 

 

 

 

11月16日(木)(晴)(2017年)

<25日目 高知県宿毛市平田→愛媛県愛南町御荘>

 

6:30 T旅館出発

 

7:00 39番延光寺 3日ぶりに札所を参拝する。お寺裏手の山の中のへんろ道を15分ほど行くと一般道へ出る。

 

8:15 「ハゼの木」バス停 自販機でホットミルク買って飲む。森永乳業のキャッチコピー「ホットミルクでホッとする」を思い出す。

 

8:50 松田川の大きな橋を渡ると、宿毛の市街地に入る。宇和島バスの営業所、郵便局、古い旅館等が立ち並ぶこの町のメインストリートを東進する。宿毛は一昨年引退した大相撲豊ノ島の出身地だ。私は、身体が柔らかく技の豊富なこの力士が好きだった。

 

宿毛からは土佐くろしお鉄道宿毛線が、六日前に訪れた37番岩本寺のある窪川へ通じている。宿毛は近代的なビルはほとんど無い古い町ではあるが、高知県西部では主要な町なのだ。

 

9:10 Dホームセンターで靴底補修剤を購入。※

※今回のへんろ出発前に、トレッキングシューズの選定で、山道よりも一般道を歩く方が多いと考え、重さを重視して軽いものを購入した。まだへんろの半分の地点で、左足靴底かかと部分の摩耗が激しく、その摩耗はクッション部スレスレまで至ってしまった。このまま放置すると、穴が開いてしまう。

 

新しい靴を買うにも、四国の田舎町ではスポーツ用品店も無く、困惑していたところ、ホームセンターがあったので、応急的な補修剤が無いか探したら、「クツ底の肉盛り補修剤」なるものを見つけた。

 

10:35 松尾峠登山口 宿毛の街を抜け急斜面を登り、山裾に沿ったへんろ道を行く。途中、文旦(ブンタン、ボンタン)か何かの大きな柑橘類がいっぱい生っていた。後で調べたら高知は文旦の生産が全国の9割を占めると言う。

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11:15 松尾峠 登りはキツイにはキツかったが、12時に着けばよいと頑張ったので、峠では早く着いて、思わず「ラッキー!」と叫ぶ。

 

ここは、昔、土佐と伊予を結ぶ街道の両国の境にある標高300mの峠だ。峠には弘法大師を祀った大師堂(松尾大師)がある。

 

3年前、峠からの展望は無かったが、雑木が伐採されており、宿毛の海の美しい景観が眺められた。

 

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ここまでで、四国へんろの半分が終了した。いよいよこれから、へんろも愛媛県に入り後半に突入する。

 

11:50 林道 峠から愛媛県側は高知県側とは打って変わって、登山道がきれいに整備されている。県によって財政事情の違いで、このようなことが起きるのか?

 

路傍の陽だまりで、アンパン他で昼食休憩とする。

 

15:00 愛媛県最南端愛南町の、「一本松」「城辺」といった趣のある古い町並みを通って、「御荘(みしょう)」の町に入り、僧都川を渡って40番札所観自在寺に到着。

 

観自在寺は、88カ寺の中でも私の好きなお寺さんだ。華美さは無く、といって禅寺のような質実剛健なところも無く、ほんわかとした地元に根付いた、地元に愛されているお寺さんといった風情だ。晩秋の昼下がり、境内のベンチに座って、ぼんやりと心癒される寺を眺めていた。

 

15:40 ビジネスホテルPM チェックイン このホテル全くのビジネスライクで地方の味がしない。

 

夕食は国道沿いの中華料理店にする。四国へ来て初めての中華料理だ。時間も早かったせいか客は私一人。店の主人は卓球サークルの先輩にそっくりな顔をしていて、すっかり忘れていたサークルのことを思い出す。

 

鶏肉とカシューナッツ炒め、揚げ焼きそば、ギョーザ、ビールを注文する。中華料理は一人だと中途半端で、沢山の種類を選べない。味は少々しょっぱかったが、田舎だからこんなものかとも思う。

 

主人は話好きで、地元の話をしてくれた。昔はこの辺り交通の便が悪く、大阪方面へは船で行ったそうだ。

 

宿に帰り、宿毛で買った「クツ底補修剤」を塗ってみる。

 

 

25日目の歩数 50,900歩    歩行距離 33.0㎞

 

 

 

11月17日(金)(曇)(2017年)

<26日目 愛南町御荘(みしょう)→ 宇和島市

 

4:30 ビジネスホテルPM 出発。 六日ぶりの早朝出発だ。夜明け前の暗い国道を歩いていて、突然道端の植え込みに突込み、木の枝が顔にあたった。

 

夜が明けてしばらくすると、養殖の仕掛けが沢山浮いた明け方の宇和海を見下ろすことができた。宇和海は鯛の養殖で全国的にも有名である。

 

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7:10 柏坂郵便局前 御荘のコンビニで買った梅、昆布のおにぎりで朝食とする。食べ終わって道路の向かい側を見ると、立派なへんろ小屋があった。(ここで食べれば良かった)

 

9:10 浦知 出発時に着こんだ長ズボン、ヤッケを暑くなって脱ぎ、短パン姿となる。昨夜補修した靴底はまだ補修剤が剥がれていなかった。

 

9:35 津島嵐郵便局 手持ちの現金が残り少なくなったので、ATMから引き出す。

この辺り(旧津島町)は、獅子文六の小説「てんやわんや」の舞台となった地である。

 

11:25 津島大橋 ここは、3年前道路改修の大工事をしていたところで、高速の宇和島道路がここ国道56号まで延長接続されたようだ。

 

12:15 松尾トンネル入り口 国道56号線松尾トンネルは、全長1710m、歩行での通過に約30分を要する。一昔前までは、ここは交通量が多く、排気ガスが充満して、歩行には危険が伴ったが、国道に平行した宇和島道路の建設で交通量が減少して、今では普通に通過できるようになった。

 

13:30 トンネルを抜けて30分ほど歩くと、宇和島の市街地に入る。寒くなり又ズボンヤッケを着込む。

 

大きなスーパーや、ユニクロメガネドラッグ、ホームセンター等の商業施設が、道の両側に多く立ち並び、これまで、田舎の道をずっと歩いてきたので、久しぶりに都会に来たと言う感じだ。

 

15:00 ビジネスホテルT 到着。宇和島城の下にあるかなり古いホテルで、料金は安かったが、禁煙室が無く部屋はタバコ臭がムンムンであった。

 

夕食をする為、宇和島の中心部アーケード街近辺へ行く。宇和島まで来たのだから、ご当地の美味しいものを肴に一杯と考え、小料理屋へ入る。

 

少し時間が早く、客は私一人。主人は仕込みに忙しい。世間話でもして、宇和島の今を聞こうと話しかけても、返事がない。一見(いちげん)の客はよそ者扱いで無視される。

 

誠に居心地が悪い。主人に比べたら少しは愛想のよいおかみさんに、じゃこ天などお薦めの肴を教えてもらい、お酒をたのむ。一人で黙って飲んで、宇和島名物鯛茶漬けを注文する。そこへ地元の常連らしき男性が入って来た。それまで一言も発することの無かった主人は、その男性とは愛想よく会話をした。

 

よくテレビの旅番組では、知らない町のお店にぶらりと入って、知らない地元料理の美味しさに感激し、地元の話とかで盛り上がると言う場面がよくあるが、今回は全く逆であった。

 

宿へ帰って、今夜も靴に補修剤を塗る。靴底補修剤は効果がありそうだ。

 

 

26日目の歩数 66,600歩     歩行距離 43.3㎞

 

 

              ー続く(非定期)ー