へんろ日記 11

3月13日アップした「へんろ日記 10」の続きです。

 

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11月21日(火)(晴)(2017年/平成29年)

<30日目 久万高原町

 

7:00 朝食 宿で朝食を摂るのは、宿毛の旅館以来5日振りだ。

 

7:30 出発 若女将に見送られて出発。外は寒い(-2℃) 昨日44番大寶寺は済ませてあるので、直接45番札所岩屋寺へ向かう。

 

岩屋寺は、山間(やまあい)の奥まった所にあるので、岩屋寺を経由して次の松山方面へは行けない。松山へ行くには、岩屋寺を往復し、一旦大寶寺近くまで戻って、国道33号を北上することになる。

 

8:15 峠御堂トンネル ほとんどのへんろは県道12号の車道を通って岩屋寺を往復するので、これから参拝するへんろと、参拝を済ませたへんろが道ですれ違うことが多い。

 

道路の反対側を歩いていたへんろとすれ違った。足摺岬手前の久百々で同宿した横浜へんろではなかったかと思ったが、声をかけ損じた。

 

9:30 ゴルフ場前バス停 岩屋寺へのルートは、この車道と、山中の「八丁坂」という険しい山道(修験の道)がある。3年前の初回は往復車道を使ったので、今回は行きは「八丁坂」から岩屋寺へ入り、帰路は車道を使う予定であった。

 

ところが、車道から「八丁坂」へ入る入口を見落としてしまったので、「八丁坂」は帰路に通ることとする。

 

10:05 門前下橋 岩屋寺の麓に土産物や甘味処のお店が並んでいる。その内の一軒でアンパンを買ったが、お金を支払う時に外した手袋を、この店に忘れてしまった。

 

10:30 45番札所 岩屋寺 ここは標高700mにある岩山全体を霊地とし、弘法大師の時代より山岳修行の場として、多くの修行僧の信仰を集めてきた寺だ。岩をくり抜いた穴で修行をした跡もある。お寺も崖の中腹に、岩山にめり込むように建っている。

 

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バスや車で来た参拝者は駐車場から寺まで急な坂道を2~30分かけて登らなくてはならない。年配の方や足の悪い参拝者にとっては、過酷な坂道だ。

 

10:45 八丁坂 参拝を済ませ、いよいよ八丁坂、岩屋寺の裏手から道が始まるが、標識が何もない。しばらく行くと不動明王を祀った祠があった。

 

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   (この写真ではよく分からないが、奥に赤い不動明王像がある)

 

修験道の道と言うので、鎖場とか崖の道とか、かなり険しい道を想像していたが、今まで通って来た山岳のへんろ道とそんなに変わらなかった。

 

12:00 八丁坂の尾根から下ったところで、この一週間くらいの間に何回も宿で同宿した横浜へんろに会う。彼はこれから八丁坂を登って岩屋寺へ向かうと言う。

 

12:45 県道12号

 

13:55 国道33号

 

14:20 ホームセンター K 昨日の雨中歩行で、雨具のセパレートズボンが破れてしまったので、作業用のレインズボンを、撥水スプレー、手袋とともに購入する。

 

15:30 T庵 着。この宿は松山と久万高原を結ぶ国道33号の三坂峠トンネルを建設した時に、ゼネコンが仮設事務所として使用していた建屋を、工事終了後に遍路宿に改装したものだ。

 

入り口に薪ストーブがあって、薪ストーブの柔らかい穏やかな温もりが何とも言えずに心地良い。

 

主(あるじ)はまだ若く(40台位か?)個性的で、夕食時、遍路の近況を語ってくれた。最近は歩きへんろの数が減少し、へんろ宿としての経営は厳しくなっていると言っていた。(今日も客は私一人)

 

 

30日目の歩数 46,500歩    歩行距離 30.2㎞

 

 

 

11月22日(水)(曇→雨)

<31日目 久万高原町松山市道後>

 

5:30 朝食 ここも、6時前に朝食にしてくれて助かる。

 

6:05 出発 天気予報では、11時頃から雨なので、出発時から昨日買ったレインズボンを穿く。見た目普通のズボンと変わらず、防寒にもなることを知る。

 

6:40 三坂峠 峠から少し下ったところで、松山市とその向こうの瀬戸内海・伊予灘が見える。今までこの旅で見てきた海は、太平洋・土佐湾宇和海だったので、又新しい海と出会えることが嬉しい。

 

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7:20 休憩所近くの碑 碑文には「石濱典夫氏記念碑」とあるが、よく分からない。

 

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8:45 46番札所 浄瑠璃寺 小さなお寺ではあるが、境内は掃き清められ、こざっぱりしていて気持ち良い。参拝後、鐘を突く。納経所の和装の女性は、品があって優しく対応してくれ感じ良かった。

 

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9:15 47番札所 八坂寺 46番からわずか15分の距離にある。

 

次の48番に向かう途中、重信川の長い橋の半ばあたりから雨が降り始める。

 

10:20 48番札所 西林寺 雨が本降りになってきた。始めさんや袋をレインコートで被せていたが、レインコートを後ろ前に着て、さんや袋を雨から守る。

 

10名程の男性団体へんろ(地元の人達か?)が、私の後ろに付いて来る。何だか落ち着かない。一人で気ままに歩きたい。

 

11:30 49番札所 浄土寺 平安時代中期に「南無阿弥陀仏」を唱えて人々に念仏を広めた空也上人と縁深く、空也ゆかりの事物が多く残る寺である。

 

その中でも、重要文化財に指定されている寄木造りの「空也上人立像」は、口元から「南無阿弥陀仏」の6文字の念仏が仏の姿になったということを表わしている。(空也が創建したと言われる京都の六波羅蜜寺にも同形の像が所蔵され、そちらの方が有名で教科書にも載っている。)

 

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参拝を済ませ、納経所の横で休憩していると、出張で松山にきて、この寺に立ち寄ったと言う男性に声を掛けられる。歩きへんろの途中だと告げると、その人は非常に驚いた様子だった。

 

49番から50番に向かう時、雨はザーザー降りとなる。五木ひろしの「夜明けのブルース」を替え歌にして「ここは松山!土砂降りの雨~」と、ヤケクソ気味に鼻歌で歌いながら歩いていたら、道を間違え、遍路標識を見失ってしまった。

 

道を訊こうにも、この雨で誰もいない。雨宿りの出来るところで、スマホのグーグル地図から現在地を確認し、何とか50番に辿り着く。

 

12:30 50番札所 繫多寺

 

13:20 コンビニ L コンビニでおでん(こんにゃく、じゃこ天、ちくわ、じゃが芋)を買い、ここはイートインできないので、店の外で立ち食いする。

 

雨は一段と強くなる。この辺りは松山市の住宅街の大きな通り、車の往来は多いが、雨もあって人は誰も歩いていない。一昨日人気(ひとけ)のない雨の山の中で、冷たい昼食を採って侘しく寂しい思いをした。今日は降りしきる雨の中、コンビニの外でおでんを一人で立ち食いしている自分を想像すると、車で私を見た人からは、哀れでみすぼらしい姿と思われるだろうなと思った。

 

13:40 51番札所 石出寺 ここは、松山の道後温泉近くの繁華街ど真ん中にあるお寺だ。巡礼者よりも地元のお大師さん信者や観光客が多い。

 

国宝の仁王門をくぐると、参道は土産物店が並んだ仲見世となっており、その先が重要文化財に指定されている本堂、三重塔、鐘楼などがある境内だ。

 

雨が益々強くなってきたので、急いで参拝を済ませ本日の宿に向かう。

 

14:30 ビジネスホテルS 道後温泉ホテル街の中のビジネスホテル。「坊ちゃんの湯」も直ぐ近くだが、前回そこで入浴したので、今回はホテルのバスにする。

 

案内された部屋へ入ってびっくり、まず部屋が広い。ベットはダブルサイズ、ビジネスホテルでは通常、バスとトイレは同じ部屋であるが、ここは別々、浴室も広く、浴槽も大きくゆったりとしている。

 

シティホテル並みの設備だ。フロントが部屋を間違えたかと思い電話したが、間違いないとのこと。立地も道後温泉のど真ん中で、宿泊費は、素泊まり4800円。この辺り競争が激しくて、こんなに安いのか?

 

16:30 ホテルで入浴後、道後温泉アーケード街の鉄板焼き屋に入る。ステーキ、お好み焼き、焼きそば、ビールを注文。味は△だった。

 

 

31日目の歩数 48,100歩   歩行距離 31.2㎞

 

 

 

 

11月23日(木)(晴 風強し)

<32日目 松山市道後→松山市北条>

 

6:05 ホテル出発 昨日あんなに降った雨も上がっていた。まだ暗い松山の市街地を西進する。

 

7:10 JR予讃線三津浜駅 この辺りは松山市の住宅街で下町の感じがする。駅前の広い道を北進すると次第に家が少なくなり、小高い山のゴルフ場横を通過する。

 

8:10 52番札所 太山寺 どっしりとした本格派の寺院といった感じで、私の好きなお寺の一つだ。

 

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徳島から車でへんろを続けているというご夫婦と話ををし、歩きへんろを労われた。

 

3年前にこの寺を訪れた時、納経所で墨書授印して頂いた長い髪の若い女性が、それはそれは美しく素敵な方だった。(へんろ仲間の噂では、彼女はお寺の娘さんだとか?) 今回また会えるかと期待したが、その方は納経所にいなかった。

 

9:05 53番札所 円明寺 下町の民家の中に有る比較的小さなお寺。

 

10:00 堀江海テラス 今日の宿には早く着きそうなので、海の駅ということで、寄り道したが、今日は休日で休業していた。その後北上したが、海沿いの道は風が強く、笠が飛ばされそうになり、手に持って歩く。

 

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11:20 ホームセンターK 靴修理接着剤を捜したが、無かった。手袋を買う(4回目)

 

12:30 床屋 道路を歩いていると、道沿いに床屋さんがいっぱいあり、今日は時間の余裕もあるので、その内の一軒に入る。74才の旦那さんと、久万高原出身のおかみさんが、散髪と髭剃りをしてくれた。マッサージもしてくれ、気持ち良くて眠ってしまいそうになる。

 

14:00 北条の瀬戸内海(伊予灘)の海岸を見に行く。風が強く穏やかではなかった。

 

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14:20 旅館O 到着 宿の女将は首を保護カバーで吊って対応してくれる。「どうしたの?」と訊くと、「仕事のし過ぎ」と答える。人の良さそうなオバサンだ。

 

この旅館は前回も泊まったが、料理が美味しい。鯛めしが名物らしいが、宇和島のそれと違って鯛をご飯に炊きこむものだ。私はこちらの方が好きだ。

 

横浜へんろと又も同宿だ。夕食時は彼と対面して食事する。料理は今日も海の幸満載で美味しかった。彼はお酒好きだが、へんろ中は酒を断っているので、私だけ鯛のひれ酒を3杯注文した。 

 

 

32日目の歩数 43,000歩   歩行距離 27.9㎞

 

 

 

           ー続く(非定期)ー