へんろ日記 15

6月12日にアップした「へんろ日記 14」の続きです。

 

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12月3日(日)(晴)(2017年/平成29年)

<42日目 高松市国分寺町高松市栗林町>

 

6:25 S旅館出発  国分寺の集落の外れで、朝の散歩をしていたオジサンから、飴の接待を受けた。集落を抜けるとかなり急な勾配の登山道となる。

 

7:45 登り切った所は、この辺りの山間部を縫うように敷設された車道となっている。近くには、自衛隊の演習場があり、自衛隊ジープ車両が10台ほど連ねて走って行った。

 

8:00 車道から白峯寺へ向かうへんろ道(山道)に入る。

 

8:25 81番札所 白峯寺 早い時間なのに既に10名程が参拝していた。今日は日曜日ということで、紅葉見物も兼ねて車で参拝に来ているのだろう。

 

9:50 一時間程へんろ道を歩いて、再び車道に出る。車道をしばらく行くと、根香寺(ねごろじ)へ下るへんろ道(山道)がある。ルートとしてはへんろ道を往復することになるので、車道脇のミカン園ゲートの横にザックを置いて、サンヤ袋のみで根香寺へ向かう。

 

10:10 82番札所 根香寺(ねごろじ) このお寺も境内の紅葉が丁度見ごろで美しかった。このお寺の本堂には、33,300体の仏像が祀られている。

 

 

10:40 ザックを置いた車道に戻る。学生時代の夏休みに、石川県小松の海岸で、旅行カバンを浜辺に置いて泳いでいて、カバンを盗まれたことを思い出し心配したが、ザックは無事だった。

 

11:00 この車道は、高松市西の山間部、標高400m位の所に敷設されているので、スカイラインのように景観が良い。このへんろ旅でもベスト3に入る絶景ルートだ。紅葉の山の下には、遥か瀬戸内海の島々や行き交う船が見える。

 

 

12:00 車道から麓の鬼無(きなし)の集落に下る。鬼無は盆栽の町で、道路の両側に盆栽を育てている農家が続く。

 

12:15 鬼無Yうどんや屋 冷のぶっかけうどんかき揚げ、ごぼ天を注文。観音寺のうどん屋さんと違って、ここのつゆは丁度良い味で麺も程よいかたさで、とても美味しかった。

 

14:00 高松自動車道の高架を潜(くぐ)り、高松市南部の住宅地を進んで、83番札所一宮寺に到着。前回来た時は誰も居なかったが、このお寺も日曜日のせいか参拝者がちらほらと見受けられた。

 

15:40 一宮寺からは高松市の中心部に向けて、交通量の多い車道(歩道がないところが多い)を北進する。次第に街並みが都会らしくなって、栗林公園東側のビジネスホテルRに到着。

 

17:00 こんな街中であるが、ホテルの近くには適当な食事処が見付からず、ファミレスにする。係りの女性は東南アジアの学生アルバイトだそうで、日本語も普通に理解できた。オムライス、ポタージュスープ、ホウレンソウベーコン、ビールを注文する。

 

 

42日目の歩数   56,500歩       歩行距離 36.7 ㎞

 

 

12月4日(月)(曇/雨)

<43日目 高松市→さぬき市長尾>

 

5:35 ビジネスホテルR 出発 朝食をキャンセルして早朝出発する。国道11号のよく整備された歩道を快適に東進する。ここまでいくつかの歩道を歩いてきたが、この歩道は広くて歩きやすく、四国で一番快適な歩道だ。

 

夜が明け始め、目の前に、これから登る特徴的な一目で分かる屋島の全容が姿を現した。

 

 

 

7:20 11号から屋島寺への入り口を見過ごしてしまい、600m程国道の北側道路を引き返す。屋島寺への参道は山の斜面をジグザグに登る舗装された山道だ。前回は比較的に楽に登れたが、今回は結構キツク感じた。

 

8:05 84番札所 屋島寺 狸の石像の夫婦が迎えてくれる。広い境内は、参拝者が一人も居らず清々しくて気持ち良い。

 

 

 

屋島寺から壇ノ浦※へ下る急な坂道は、足場もガレていて崩れやすく。三年前はへんろ旅一番の下り坂の難所と思ったが、今回はそれほどでもないと感じた。同じ場所でもその時の体調とか気分とかで、随分と印象が違うのに驚く。

 

屋島源平合戦で、那須与一が小船の扇を射止めた故事に縁(ゆかり)の場所であるが、平家が滅亡した山口県の壇ノ浦と同名の地名が、屋島にもある。

 

9:40 八栗ケーブル山口駅 ここから、ケーブルの横に平行に作られた急な車道を登る。車道ではあるが、車がエンストしまうのではと思われるくらいの一直線の急勾配だ。

 

10:05 85番札所 八栗寺(やくりじ) 屋島寺同様山の上にあるお寺で、山門近くから麓が見晴らせる。

 

八栗寺から、JR高徳線讃岐牟礼駅/琴電志度線、八栗新道駅に通じる道路(県道145号)を下る。下り一方の楽な道だ。

 

途中、琴電の駅まで歩き、電車で高松市内の嫁いだ娘さんに会いに行くというオバサンと一緒になる。駅まで話しながら歩いた。娘さんは二人目の赤ちゃんをお腹に宿し、悪阻(つわり)がひどく、家事が大変なので手伝いに行くと言っていた。人が良く面倒見の良さそうなオバサンだった

 

11:00 うどん屋 ここは香川県うどん屋としては、珍しくセルフ式ではない普通のうどん屋さんだ。温ぶっかけ、玉子、コロッケを注文。味は悪くはないが、昨日の鬼無のうどん屋さんには及ばなかった。

 

11:50 志度(しど) 平賀源内記念館 平賀源内の生家が記念館になっている。入ろうと思ったら、休館だ。今日だけでなくずっと休館している雰囲気だった。雨がパラツキ始める。

 

 

12:10 86番札所 志度寺 どっしりとした重厚で趣のあるお寺だ。五重塔もある。

 



 

 

12:50 志度から長尾に向かって歩いていると、高齢のお爺さんに呼び止められる。なんでも、このお爺さん、今迄に四国を130回回っている(歩きは3回)という。16才から回り始め、今90才だそうだ。恐れ入った。 

 

13:20 雨が本降りになって来たので、上衣を雨対応の衣装に替える。

 

14:25 87番札所 長尾寺 小学校の運動場のような広い境内の楠の木の下でしばらく雨宿りをして、本日の宿 A旅館に向かう。宿に予約の電話を入れた時、宿のオーナーお婆ちゃんから、15:30まで留守にするので、それ以降に来て欲しいと言われていた。

 

15:00 A旅館着。30分早いが、玄関は開いていて、入館しても良いと言われ、外で待たずに済んだ。

 

本日の宿泊者は、私を入れて5人、私が一番到着だったので、風呂、洗濯も一番にできた。

 

同宿者は、愛知県岡崎の区切り打ちの女性二人連れと、姫路の車へんろ夫婦だ。夕食時五人で談話する。いよいよ明日は結願の日であるので、宿のお婆ちゃんから、「へんろ交流サロン」での「完歩証明」のもらい方、88番結願寺での心構え等を教えてもらう。

 

この宿は二回目とお婆ちゃんに言ったせいか、お婆ちゃんは私に対して好意的で、お酒も多めにくれ、宿賃を払うと、500円接待してくれた。

 

 

43日目の歩数  53,500 歩    歩行距離 34.8 ㎞

 

 

12月5日(火)(曇→雪)

<44日目 結願 さぬき市長尾→東かがわ市白鳥町>

 

2:30 起床 いよいよ今日は結願の日だ。 最後の88番まで無事に参拝できるように、ルートの再確認を行う。(初回とは違ったルートとしたため)

 

6:30 朝食 宿のお婆ちゃんが、結願の前祝として二つ黄身玉子と丸餅みそ汁を出してくれた。

 

6:50 出発 鴨部川 に沿った県道を南進する。30分程歩いたところで、昨夜同宿した姫路の夫婦が乗った車が、歩きの私を激励するようにクラクションを鳴らしながら追い抜いて行った。

 

8:00 前山へんろ交流サロン ダム湖の畔に「へんろ交流サロン」がある。ここには四国遍路の模型や写真が飾ってあって、歩きへんろに対しては、自己申告ではあるが、1200㎞を完歩したという証明書を発行してくれる。

 

 

これは、「完歩証明」であるとともに、「へんろ大使任命書」でもある。

記載文は 

「貴方は四国八十八ヶ所歩き遍路約1200㎞を完歩され、四国の自然、文化、人との触れ合いを体験されたので、これを証すると共に、四国遍路文化を多くの人に広める遍路大使に任命致します。」と書かれている。

 

完歩証明は貰ったものの、まだ結願は済んでおらず、これから女体山の岩山登山も控えているので、気を引き締めてサロンを後にした。

 

9:30 太郎兵衛館 ここまでは車の通れる道だが、ここから登山道になる。雪が降り始めた。

 

10:30 女体山 女体山の登りは急で、特に山頂直下は、岩場になっており、このへんろ旅で始めて両手を使い三点確保して登った。頂上は風強く 小雪も舞って寒い。岩に溜まった水は凍っていた。見晴らしは抜群だった。

 

 

11:12 88番札所 大窪寺 女体山の急な山道を下るとそこが大窪寺の境内だった。前回は、大窪寺の山門を遠くに見ながら徐々に近づき、山門に入った時は、それまでのへんろ旅が一気に思い出され、胸が熱くなったものだ、

 

今回は二回目と言うこともあって、感動の度合いも控えめであった。 それでも、結願の喜びは大きく、達成感も一入(ひとしお)だ。

 

前回は紅葉の季節で、ここは紅葉の名所らしく、境内は観光客でごった返していたが、今回は天候も雪混じりのせいか、観光客は見当たらず、参拝客が数人いただけで、小雪の境内は静まり返り、別の寺へ来たようだった。

 

一応結願したので、ここでへんろ旅を終了しても良いのだが、私は四国を完全に一周したいので、一番霊山寺まで戻る予定である。それにはもう一泊して、明日大阪峠、卯辰峠と二つの峠を越えて一番に至るルートを選択した。まだ気は抜けない。

 

11:35  門前のうどん屋で昼食とする。 ここもセルフ式ではなく、普通のうどん屋さん、つゆの味が薄かった。店を出る時から、雪が本降りとなる。

 

12:40  風もでてきて吹雪のようになる。 雪は乾いているので、コンクリの道路に叩きつけられた雪は白い粒となって、一面に舞っている。

 

吹雪の中を、スゲ笠を冠って一人行く姿は、まさに北島三郎の「風雪流れ旅」の世界だ。

 

13:20  境目バス停  やっと雪は小降りになった。 右へ行くと10番切幡寺方面だ。

 

14:20   白鳥温泉着 民営の築40年位の古い温泉付き宿泊施設だが、地元自治体からも資金援助さ れているようだ。

 

自分への結願祝いは、明日までお預けとする。

 

ここも、エアコンの暖房の効きが悪く、寒い夜を過ごした。

 

 

44日目の歩数  42,000 歩    歩行距離 27.3 ㎞

 

 

            ー続く(非定期)ー

 

へんろ旅は、1番から88番まで参拝し終えたのですが、旅はこの後、1番霊山寺へのお礼参り、高野山へのお礼参り、奈良、南紀の旅と続きますので、帰宅までこの連載を続けます。