10月23日にアップした「へんろ日記番外編1」の続きです。
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12月10日(日)(曇)2017年/平成29年
→八木>
5:00 昨夜泊まった大和郡山のホテルは、風呂が天然温泉で浴室も気持ち良いものだったので、この旅で始めて朝風呂に入る。
6:30 朝食 昨日の天理のホテルの簡素な朝食に対して、今日はバイキング形式で充実したものだった。
8:00 八木駅近くのホテルKに今夜の宿をとる。ザック等の荷物をホテルに預ける。
8:30 明日香方面に向けて歩いて出発、 八木の町は、昔の街道の面影が残っており、その古い商家が連なる通りを通り抜けて、JR桜井線の踏切を渡る。北に耳成山(みみなしやま)、東に香具山、西に畝傍山(うねびやま)の大和三山を眺めながら、住宅地を更に南へ進むと藤原宮跡に着いた。
9:10 藤原宮跡 藤原京は壬申の乱により即位した天武天皇の計画で作られた飛鳥時代の都城で平城京に遷都されるまでは、日本の首都だったところだ。今は何てことはないただの広場だ。
最近ここに300万本のコスモスが植えられ、今年の10月23日付け毎日新聞に写真が掲載されていた。
10:00 香具山の麓を通って飛鳥寺着
飛鳥寺は、蘇我馬子が発願して588年に創建された日本最初の寺で、本尊の飛鳥大仏は609年推古天皇が鞍作鳥(止利仏師)に造らせた日本最古の仏像である。
テレビ等で良く紹介されるので、見慣れた顔だ。高さ3mであるが、現物を見るとそんなに大きく見えなかった。
11:30 昼食 観光客相手の旅館が営む食堂に入る。店内はストーブが焚かれ暖かくホッとする。客は私一人。にゅう麺、葛、柿の葉寿司他のセットを注文する。奈良らしい料理で美味しかった。
12:20 石舞台 横穴式石室を持った方形墳で、7世紀初めの築造と推定され、蘇我馬子の墓ではないかとも言われている。玄室は長さ7.7m、幅3.5m、高さ4.7mで大小30数個の花崗岩が使用され、天井の石の重さは北側64トン南側77トンの巨石である。
クレーン等の重機の無い時代、これらの巨石をどのように据え付けたか興味深い。
写真ACより cloudshipさんの作品
14:20 明日香村、橿原神宮近辺を古(いにしえ)の飛鳥時代に思いを馳せながら散策し、八木のホテルに戻った。
12月10日の歩数 33,200歩 歩行距離 21.6㎞
12月11日(月)(曇)2017年/平成29年
<50日目 大和八木→十津川→熊野本宮>
奈良、明日香の旅を終えて今日は、大和八木から「日本一長い路線バス」に乗って熊野本宮に向かう。この路線バスは大和八木駅と和歌山県新宮駅を結ぶ奈良交通バスの八木新宮線だ。全長170㎞、バス停の数168(そのほとんどは通過だが)終点までの所要時間6時間半、路線バスだが、途中3回休憩がある。
今年の10月から、停車停留所が半分となり、所要時間が30分程短縮された特急バスが運行されるとニュースが報じていた。
7:40 ホテル出発
8:00 八木駅前 9:15のバスの切符販売は9時からだと言われ、外で待つのは寒いので、駅前ビルのロビーに入る。警備員のオジサンがいて立ち話をする。
この男性、明日香村に住む68才。私が旅を続けて今日が50日目だと言うと、自分は、たまの休みに大阪へ行って遊んでくるのが精いっぱいで、私のことを羨ましい羨ましいと言う。関西人らしく、ストレートに「お金はどのくらいかかるの?」と聞いてきた。
9:15 八木駅発 八木駅から乗った乗客は、3人組の観光目的らしいオバサン、大阪のオジサン(一人旅かと思ったら、五条で仲間が5人乗ってきた。)それに一人旅の女性と私の計6人だった。五条までは、街を走る普通の路線バスだ。
五条からバスは奈良の山奥に入っていく。目的地までは5時間以上の長旅で、客も少なく人恋しくなったのか、前の席の一人旅の女性が「へんろしているんですか?」と私に声をかけてきた。
それから、移り行く窓外の絶景を見ることも忘れて、彼女と話し込んだ。
彼女は小田原生まれで、大井町、相模原、名古屋、と引っ越し今の住所は千葉の市川。相模原在住の高校時代は県内の名門A校に通い、剣道部で活躍し、今でもその時の仲間と合っているという。
名古屋時代は、私の実家の直ぐ近くに住んでいたようで、不思議な縁を感じた。
今はキャリアウーマンのようで、「ビルの窓から見る朝日が素晴らしい」と言っていたので、仕事で徹夜になることもある様子だ。仕事をガンガンして、一段落したら一人旅をするのが、彼女の流儀らしい。今回は那智が最終目的地と言っていた。
12:25 上野地 二回目の休憩地点、20分の休憩、売店でめはりずし(高菜の浅漬けの葉でくるんだおにぎり)を買う。これは熊野や吉野地方の郷土料理だそうで、初回へんろの時初めて目にして買って車内で食べたら、素朴な味で凄く旨くて感激した。
バス停から3分程に「谷瀬の吊り橋」があるので、一人旅の女性と見物に行く。この吊橋は、長さ297m、高さ54mの生活用としては、日本最長だったそうだ。風が強くて寒く早々とバスに戻る。
13:55 十津川温泉 始発から乗車したオバサンの3人組、大阪の男性グループ、一人旅の女性はここで下車した。一人旅の女性とは将に「一期一会」の出会いで名前も告げずに別れた。
14:50 熊野本宮 下車数分前に車内で切符がないことに気付く。どこを探しても見つからない。思うに、吊り橋へ行った時、羽織った上着のポケットから強い風で吹き飛ばされたのではないか。
下車時、ここまでの運賃3950円の再支払いを覚悟して、運転手さんに話すと、彼は八木駅バスセンターに電話したが繋がらない。「お客さんを信用して」とそのまま降ろしてくれた。へんろ姿が信用させたか、何と親切な運転手さんか、何と幸運なことかと感謝する。
15:00 熊野本宮大社に、へんろが無事終了したことの報告と、これからの旅の安全を願ってお参りに行く。
写真ACより よしかっぱ さんの作品
熊野本宮大社は、全国3000社ある熊野神社の総本宮で、熊野速玉大社、熊野那智大社と合わせて熊野三山を形成している。この時参拝客は数人しかいなかった。
15:10 参拝後、スナックYに行く。ここは、最初のへんろの帰りにも寄った所で、ここの女性オーナーはスナックから少し離れたところに一軒家の宿を経営しており、食事はスナックで、宿泊は一軒家でというシステムになっている。
三十代位の若いママさんは、初回の時も私のへんろ旅に非常に興味を持ってくれ、色々と質問されたので、へんろ旅の様々を話した。二度目の今回も、旅の話を聞きたいとのことで、スナックでの夕食を挟んで長時間に渡ってへんろ地図とスマホの写真で彼女に説明する。
彼女は翌日彼女の旦那さん運転の車で、朝4時出発して京都のあるお寺さんに行く用事があるらしい。そんな時に遅くまで私の話を聞いてくれ、私は大変な迷惑をかけたものだと恐縮した。
22:00 彼女は、宿泊する一軒家まで送ってくれ、翌日の朝食とお昼の弁当を私に渡して別れた。
12月11日の歩数 7,340歩 歩行距離 4.8㎞
ー続く(非定期)ー