今週も10月10日(木)に桃花の「地獄八景亡者戯(後編・閻魔大王編)」を聴きに鈴本演芸場へ行ってきた。
前日の9日は終日雨で、気温も最高が17℃とすっかり涼しくなった。この日は朝から薄日の射す曇りで冷たい風が吹いていた。このところ気温の寒暖差が激しく、出かける前に何を着ていこうか迷う。朝寒かったので長袖シャツに更に薄手のジャンパーを着こんで出発する。
先週は10月上席(10/1~10/10)昼の部の三日目に訪れた。今日は上席の千穐楽だ。三日目は約7割の入りだったので、今回は満席になるかもしれないと、鈴本へ前回よりも15分程早く到着した。ロープ内に並んでいる人も先週より多いと予想したが、20人位と意外と少なかった。
開場時間前にスタッフの誘導で入場し、入場券は前回のレシート提示により500円割引の2500円で入場する。(桃花リピート割引)更にリピート客には特製ステッカーが配られた。
今回座席は最前列の中央を確保した。売店で先週と同じくカツサンドとお茶を買って、席に戻って食べる。開演前に後ろを見回すと、三日目と同じく7割位の入りであった。トリの桃花が演じる頃は客がもっと増えるだろうと予測する。
開演直前に、左隣の空席へ若い黒のスーツ姿の女性が駆け込んできて座った。桃花目当ての客であろう。落語が始まるとこの女性ころころと良く笑った。
前座から始まって、出演メンバーは三日目と同じ顔ぶれだ。演目は春風亭勢朝が三日目と同じ「紀州」を演じた他は、全員三日目と異なる噺だった。
今回は「まんじゅう怖い」「寿限無」「時蕎麦」とかの誰でも知っているような落語が多かった。こういうポピュラーな落語程、噺家の力量が問われ噺家にとっては難しいものだと思うが、当方にとっては他の噺が聞きたいところだ。
先週「紙入れ」を演じた金原亭小馬生が、今回は文楽、志ん朝、円楽がよく噺ていた「厩火事(うまやかじ)」(髪結いのお﨑が夫婦喧嘩をした後、亭主の自分への愛情を確かめる噺)を演じた。今回の桃花以外の落語の中では、私はこの小馬生の落語が一番気に入った。
トリに桃花が登場する。
最前列の中央の席に座っていたので、桃花の一挙手一投足の細かい動きまで見ることができる。袴姿の桃花は遠くから見ると大きく見えるが、真近で見ると身長150㎝の小柄な女性だ。顔は細面で小さく、朱色の口紅が真っ白な顔面にキリっと決まっている。美人である。
「地獄八景亡者戯」の後半が始まった。
噺は閻魔庁まで来た亡者たちが、閻魔大王の前に並ばされて大王の話を聞く。閻魔曰く「本来は厳しく詮議して罪の軽重を問いただすところであるが、本日は初代閻魔の千年忌なので、一芸ある者は極楽へ通し遣わす」ということで、亡者たちは、われ先にと芸とは言えないような代物を披露して、極楽行きを許され極楽へ行ってしまう。
その中で、医者、山伏、軽業師、歯抜き師の4人が、生前の悪行が酷いということで閻魔から地獄送りを命じられる。彼らは地獄に送られても生前の職業を生かして地獄の苦しみを味わうことなく、地獄を巡って閻魔や赤鬼、青鬼等を困らせると言う噺。
亡者が一芸を披露する段で、色々な芸が落語で語られるが、ここで桃花の「三味線」や「南京玉すだれ」「操り人形の真似」等が披露される。桃花はこれらの芸を前座の時から練習してマスターし、余興で時々演じていたことを知っていたので、今回、桃花の話芸以外の芸を見ることができて嬉しかった。
噺が終わって幕が下り、最前列から後ろを振り向くと、客の入りは開演時からほとんど増えていない。桃組公演では、千穐楽は立ち見までできる盛況と聞いていたが、今回の千穐楽は7割方の入りであった。
三日目の桃花の噺は、まだこなれていないと感じたが、今回はそれもなくなり流暢な噺ぶりに満足した。
当分は桃花の「追っかけ」になりそうだ。