ぼんやりとAI歌手がカバーして歌う「愛燦燦」を聞いていて、「過去達は優しくまつ毛に憩う」とか「未来達は人待ち顔して微笑む」とかのフレーズに「さすが詩人が紡ぎ出す言葉は違うな~」と改めて感心した。今まで美空ひばりのオリジナルや色々な歌手の歌う「愛燦燦」を、何十回、何百回と聞いてきたが、「良い曲」とは思ったが、漠然と人生賛歌の歌と感じていたくらいで、歌詞の意味については特に深く考えたことは無かった。
私は昔から、楽曲の作詞家には強い憧れと尊敬を持っている。ヒット曲のサビの部分の表現はどのようにして生まれたのか興味があった。谷村新司の「昴」もその詩を生み出した谷村の才能に感服したものだ。
今回は「愛燦燦」の歌詞の意味について、生成AI の解説をベースに深堀りしてみたい。
まず、歌詞を表記する。
「愛燦燦」
作詞/作曲:小椋佳 歌唱:美空ひばり リリース:1986年(昭和61年)
雨 さんさん※と この身に落ちて
わずかばかりの 運の悪さを
恨んだりして
人は哀しい哀しいものですね
それでも過去達は 優しく睫毛に憩う
人生って 不思議なものですね
風 散々と この身に荒れて
思いどおりに ならない夢を
失くしたりして
人はかよわい かよわいものですね
それでも 未来達は 人待ち顔して微笑む
人生って 嬉しいものですね
愛 燦燦と この身に降って
心秘かな嬉し涙を 流したりして
人はかわいい かわいいものですね
ああ過去達は 優しく睫毛に憩う
人生って不思議なものですね
ああ未来達は 人待ち顔して微笑む
人生って 嬉しいものですね
※冒頭の「雨さんさんと」の」「さんさん」のオリジナルはさんずいの漢字であるが、このブログのPCからは打ち出せず、ひらがなとした。
1. 全体の解釈
この曲は3段階の構成となっている。
① 最初の出だしで、「雨さんさんと この身に落ちて」で人生には運の悪いことが起きたり思い通りにならないことも起きる。だから「人は哀しいものですね」と言う。しかし、過去を振り返ると、辛かったことも含めて、何故か懐かしい思い出として心に残る。だから「人生って不思議なものですね」となる。
②「風 散々とこの身に荒れて」で夢が叶わなかったり、努力しても思い通りにならなかったりする。だから「人はかよわいものですね」と言う。それでも、「未来があなたを待っていますよ」と微笑んでいる、だから「人生って嬉しいものですね」となる。
③「愛 燦燦とこの身に降って」で雨に打たれ、風に荒らされてきた人生に、今度は愛が光のように降り注ぐ。その喜びが「嬉し涙」になる。そして「人はかわいいものですね」と結んでいる。
「愛燦燦」を一言で説明すると、
「人生は色々あったけれど、振り返ればそれも人生。そして弱くて失敗する人間だからこそ愛おしい。だから人生は不思議で嬉しいものなのだ」とでもなろうか。
この歌詞は、最初から「人生は素晴らしい!」と励ましているわけではない。
つらい→弱い→それでも過去には優しい思い出がある→未来は微笑んでいる→愛に包まれる→人間ってかわいい→人生って嬉しい
という順番で少しずつ人生を肯定しているのだ。
2. 「過去達は優しく睫毛に憩う」
簡単にいうと、「昔のことを思い出す」ということを、小椋は、この曲で一番印象に残る言葉で表した。小椋は「目を閉じた時に過去の思い出が瞼の裏に優しく浮かぶイメージ」と説明している。「つらかった過去も、月日が経つと自分を優しく包み込む思い出になる」ということだ。
3.「未来達は人待ち顔して微笑む」
これも「未来には希望がある」を小椋はこの言葉を使った。「未来」は普通、人間の方から未来に向かって進んでいくものだが、ここでは、未来がこちらを待っている。しかも人待ち顔で、さらに微笑む。「過去はもう終わった。これから先にはまだ知らない未来が待っている。それは恐ろしい顔では無くて微笑みかけている」
4. 小椋佳の凄いところ
上記 2と3のように、普通なら説明してしまうところを、比喩に置き換えている。「過去」「未来」も擬人化して、抽象的だったものが見えるものとなり、一つの映像になる。
小椋は、過去・未来・愛.人生といった抽象的なものを人間や自然の姿に変えてしまう。
5. 「愛燦燦」というタイトル
人生には、雨が降る。風も吹く。人は哀しみ弱くなる。
しかし、その長い人生を振り返った時、過去は優しく自分の側にいる。
未来は自分を待っている。
そして最後に、愛が燦燦と降り注ぐ。
だから「愛燦燦」なのである。
最後に「愛燦燦」の動画を貼付します。最近のYouTubeでは、カバー曲のほとんどはAI歌手が歌っています。ここでは、元祖美空ひばり版を貼付します。
この動画はフルコーラスではなく、「風 散々と・・」の第二節が省略された仕様です。
―了ー
人間を見る目が「人は哀しい」→「人はかよわい」→「人はかわいい」と変化している。

