春風亭小朝

一ヶ月ほど前に、女性落語家の「蝶花楼桃花」について投稿したが、今回はその桃花の師匠である「春風亭小朝」について取り上げる。

 

 

私は落語が好きであるが、落語愛好家のように詳しくはない。寄席も若いころ新宿末廣亭に数回行ったきりだ。昔は古今亭志ん朝のきっぷの良い江戸言葉が好きで、彼のファンであったが、彼が亡くなった後は、贔屓の噺家が居なくなった。最近は、立川志の輔桂文枝、桂文鎮といった有名処の落語を時々YouTubeで聴いている程度である。

 

小朝については、林家三平の次女と結婚し、テレビドラマにも出演している器用な噺家位の認識しか無かった。それが、最近私がファンとなった桃花の師匠ということで、興味を覚え小朝の小噺や落語を聴くようになった。

 

淀みなく流れる爽やかな弁舌そして、絶妙な皮肉りとくすぐりが面白くて多いに笑わせて貰った。色っぽい話も嫌らしくない、成程女性に人気の落語家だと合点した。

 

桃花が師匠を誰にしようか捜していた時の基準は「多様性があって女性を育ててくれる人」「自分が尊敬できる芸の力のある人」だったそうだ。小朝は桃花の基準にマッチした。

 

1983年小朝が静岡へ寄席に行った時、当時高校生だった「ちびまるこちゃんの作者さくらももこ」が小朝を見に来ている。彼女は小朝への弟子入りを考えていたと後のエッセイに書いている。

 

小朝には落語家志望の女性を魅了し引き付ける何かがあるようだ。

 

ここで小朝の略歴を記す。

 

1955年東京都北区生まれの69才、

少年期から「落語の天才」と呼ばれ、数々の素人寄席で活躍、

1970年4月 五代目春風亭柳朝に入門、

1976年7月 二ツ目昇進

1980年5月 36人を抜いて真打昇進

1990年10月 銀座博品館劇場にて30日間連続公演

1997年10月 日本武道館にて独演会

 

落語以外でもテレビの時代劇(三匹が斬る)や、バラエティー番組に出演、日生劇場新宿コマ劇場での舞台演劇、国立劇場での歌舞伎と落語の同時上演にも出演した。

 

その他に、楽団の指揮者や楽器の演奏でも活動している。

 

受賞歴は1978年のNHK新人落語コンクール最優秀賞から2022年の松尾芸能賞まで名だたる8件の表彰で受賞している。

 

こうやって小朝の略歴を見てくると、彼が類まれなる才能を多方面に発揮していることがよく分かる。

 

ところが、ネット上での評判は必ずしも良いものばかりではない。

 

例えば、以下のような一般人からの質問が寄せられている。

①「小朝って落語そんなに上手いですか?淡々と話を普通に演じているだけみたいな印象ですけど。滑舌は良いですけどね。特に目立った特徴も無いし、『可も無く不可も無く』くらいじゃないですか?」

 

②「春風亭小朝は生意気な落語なのに、なぜこれの落語が良いみたいに持ち上げられているのですか?」

 

①のベストアンサー(fib*******さん)「色々な高座をお聴きになった上で、そのような感想をお持ちであれば、そのような捉え方のされる噺家ということでいいと思います。それほど聞く機会が無かったのでしたら、CD・DVDが沢山出ていますので、お聴きになってはいかがでしょうか。CDのタイトル数の多い噺家って「可もなく不可もない」と言うことは無いと思います。

 

②のベストアンサー(花太陽雨さん)「名人上手といわれた噺家は、好き嫌いが分かれるケースが少なくないです。円生や三木助って、性格が悪い、鼻に着く・・・というネガティブな評判もあり、全ての落語ファンに愛されていたわけではないです。若いころの談志は生意気で嫌う人が多かったです。嫌われるくらいの個性を発揮する噺家でないと、抜きんでた芸で魅了しないのかもしれません。」

 

 

私が今迄に聞いた小朝の落語は、

古典:「紀州」「紙入れ」「宮戸川」「明烏」「片棒」「たがや」「幇間腹

   「お血脈」「扇の的」「皿屋敷」「池田屋

新作:「男と女」「腹が痛い」「越路吹雪物語」

 

紀州」~「幇間腹」の古典は、私の勉強不足と、他の噺家が演ずる落語を聴いたことが無いので、正直小朝の上手さは分らない。

 

しかし「お血脈」~「池田屋」の古典と新作物は、小朝の魅力がたっぷり詰まった作品と思う。特に歴史ものは、史実、文献などををよく勉強して脚色していることが窺われる。決して「可もなく不可も無く」といった平凡なものではなく、それぞれを傑作に仕上げている。

 

「横丁の若様」と呼ばれた小朝は、現在頭が金髪でキューピーのように尖らせた若作り髪型にしている。桃花はこれを「喋る小籠包」と称しているが、彼も来年は70才を迎える。

 

これからの小朝が円熟期を迎えて、どのような変化を遂げるか楽しみだ。