ウォーキングをしていて、ちょとした竹やぶに若い竹や青竹がが生えているのを見つけた。

 

f:id:tamamisa:20210425150548j:plain

 

 

光る地面に竹が生え、

青竹が生え、

地面には竹の根が生え、

根がしだいにほそらみ、

根の先より繊毛(せんもう)が生え、

かすかにけぶる繊毛が生え、

かすかにふるえ。

 

かたき地面に竹が生え、

地上にするどく竹が生え、

まっしぐらに竹が生え、

凍(こお)れる節節(ふしぶし)りんりんと、

青空のもとに竹が生え、

竹、竹、竹が生え。

 

上記は、萩原朔太郎(※1)の第一詩集「月に吠える」(※2)に収められた「竹」という作品だ。教科書にも載っているような有名な詩だそうだが、私には学校で習った記憶はない。  

 

(※1)明治19年1886年群馬県現在の前橋市生まれ、昭和17年(1942年)55才で没「日本近代詩の父」と称せられている。

 

(※2)それまでの詩は、五七調や七五調の文語体が主流であったが、朔太郎はこの詩集「月に吠える」で口語自由詩を確立した。朔太郎の詩の特徴は、・音楽性に富み・感受性が繊細で鋭敏・心身の奥底をイメージ化するといわれている。(「春夏秋冬・四季の詩」より)

    

 

私がこの詩に出会ったのは、齋藤孝著「声に出して読みたい日本語」のCD版で俳優の小林薫さんが朗読したものだった。小林さんの朗読はそれはそれは素晴らしく、一度聞いてこの詩が好きになった。

 

小林さんは、「かすかにふるえ」までの前半は、地上で竹が成長するために、人の目に見えない地下で、根が生え繊毛が生え、必死で地中に食い込んでいく様子を、押し殺した声で読んでいる。

 

そして後半は、「かたき地面に」「地上ににするどく」「まっしぐらに」竹が生えと畳みかけ、「凍れる節節(ふしぶし)りんりんと」では、 解き放たれたように、朗々と歌うように、読み上げている。

 

「青空のもとに竹が生え」では、真っ青な蒼(あお)空に向かって、若く精悍な青竹が凛々(りり)しく伸びている様が、目に浮かんでくるような読みっぷりだ。そして「竹、竹、竹が生え」で静かに、しかし力強く終わる・・・小林さん上手いな~と思う。

 

詩の活字を目で読み、朗読を耳で聞いた後、自分の声で読んでみるとまた違った趣きだ。背筋が延びて気持ちが良い。素材が良いので、何度読んでも飽きることが無い。

 

今回のブログを書くに当たって、サイトの「春夏秋冬・四季の詩」「バクナンランナー、希望の日々」を参考にさせてもらった。

 

それによると、朔太郎はこの詩集の序文で「自分の詩はリズムによって表現する・・・」と言っているだけあって、「竹」の詩は、リフレイン(反復法)やリズム(脚韻)を見事に活用している。「生え」と言う言葉が10回もでてくるし、e の母音で韻を踏んでいる。

 

それから、「生え」「ほそらみ」「ふるえ」と句末の動詞は全て連用形で、畳みかける表現が、竹の成長の強さや躍動感を推測させる。

 

前半最後が「ふるえ、」ではなく「ふるえ。」と句点で締めることにより、根の動き、繊毛の動きの力強さが強調されるということだ。(さすが専門家の考察は鋭い)

 

 

この詩は、凛として溌溂と成長する「竹」を通して、私たちに、「何事にも毅然とした態度で、矜持(きょうじ)をもって生きなさい」と教えてくれるようだ。