エレクトーン演奏

まずは、フランスイージーリスニング 界の雄・レイモン・ルフェーブルグランドオーケストラが演奏し、1970年代に一世を風靡した「シバの女王」をご視聴下さい。哀愁あるメロディに女性スキャットが冴えわたる名曲だ。

 


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次に、できれば1回目は目を閉じて、2回目は手の動き足の動きに注目して、次の動画をご視聴下さい。

 


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これは、aki-Electone solo チャンネルの akiさんというエレクトーン奏者が演奏している「レイモン・ルフェーブル シバの女王」のカバーだ。

 

どうだろう、初めのレイモン・ルフェーブル オリジナルとの違いが分かりますか?違和感を感じますか?私は目を閉じて聴けば、本家本元の演奏と思ってしまう。

 

何十人という楽団員で構成されるオーケストラの演奏を、たった一人で、一台の楽器で、同じ音色で演奏してしまう・・・魔法使いが魔法の楽器を使って演奏しているみたいだ。

 

私は、エレクトーンが色々な楽器の音色を、奏でることができることは知っていた。しかしその音はあくまでも、本物を真似た器械の音で、エレクトーンの演奏は本物の楽器の演奏には、叶うべきもないと思っていた。

 

去年、aki さんの動画を始めて視聴した時、目が点になり、それまでの私のエレクトーンに対する概念はガラリと変わった。そしてエレクトーン演奏は、立派な演奏形態であるとの認識に至った。

 

私は音楽は好きだが、自分では楽器を全く演奏できないので、どんな楽器でも上手く弾ける人に対しては、常々憧憬の念を抱いていた。それが、aki さん は両手両足を使って演奏している(※1)のを見て、度肝を抜かれた。

 

(※1) エレクトーンには、鍵盤が三つある。(私はこの動画を見るまで知らなかった。)

①上鍵盤 主に右手でメロディを弾く

②下鍵盤 主に左手で伴奏(コード)を弾く

③足鍵盤 左側のペダルを主に左足のつま先でベースラインを弾く

④エクスプレッションペダル 右足を乗せて音量調整したり、音程を上げ下げする

 

 

両手でピアノを弾けない(片手でも弾けないが)私にとって、両手にに加えて両足まで使って演奏するなんて、神業としか思えない。エレクトーン奏者は、脳から両手両足への指令は、どのような神経回路を使っているのだろうか?

 

エレクトーンの演奏は上記のように難しいが、この演奏に至るまでの作業が、並外れて大変だ。譜面がある場合はまだしも、この「シバの女王」のように耳コピ(※2)から始め、レジスト(※3)を作るという私のような門外漢には想像もつかないような複雑緻密な作業を経て、音色やリズムが細かく書き込まれた譜面が出来上がる。

 

(※2) 耳コピ: 実際に演奏されている音を聞き、譜面に書き起こすこと

 (※3) レジスト: エレクトーンで演奏するための「音色」「リズム」を設定すること 

 

「音色」は aki さんのエレクトーンでは80種類使用できるとのこと、譜面上のそれぞれの場所で、耳コピで聴いた音色と同じ音色を、80種の中から探し出したり、無い場合には合成したりする。

 

音色の変更を自動でするためのセッティングがまた大変な作業だ。上下鍵盤の間にあるボタンに80種類の音色を記憶させ、ボタン番号をエレクトーンのシーケンサーに、変えたいタイミングでセットしていく。(1小節の1/100のタイミングまで可能だという)

 

これらの作業が全て終了した後、やっと演奏に入ることができる。

エレクトーン奏者は、アーティストであるとともに電子機器のエンジニアでもある。

  

 

 

 続いて、同じくaki さんの エレクトーン演奏で、ポールモーリアの代表作「エーゲ海の真珠」カバーをご視聴下さい。ポールモーリアは華麗な演奏で、レイモン・ルフェーブルと並んで日本でも人気のある楽団だ。

 

シバの女王」同様、楽譜/レジストはaki さんの耳コピ採譜である。

 


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これも素晴らしい演奏だと思う。耳で聞いただけなら、ポールモーリアの演奏と思うだろう。

 

aki さんは、本動画に自らコメントして、「ボーカル部分のレジストがうまくいかず、風邪をひいた時の鼻声のようになってしまった」と書いている。そういえば、この部分のオリジナルはもっとクリアな女性スキャットだったと私も思った。

 

スキャットの音色を色々混ぜて作っていたが、うまくいかず時間ばかり過ぎて諦めたということだ。それだけレジストは難しいということなのだろう。

 

それから、演奏の後半で、足鍵盤を両足で弾いている。足鍵盤は(※1)で記したように、通常は左足つま先で弾くが、つま先だけでは大変な時は、踵を使ったり右足を使って(両足で)演奏する。足の動きを見ているだけでも楽しい。

 

 

aki さんは、2003年1月よりYouTubeに自らのエレクトーン演奏を164本投稿している。

チャンネル名は始め aki 929だったが、aki-Electone sole に変わった。

 

ジャンルは、今回紹介したイージーリスニングから、「シング・シング・シング」「インザムード」といったスウィングジャッズ、ベートーベンの「第九、第四楽章」「月光」などのクラッシック、「ダンシングクイーン」のABBA、「ダイヤモンドヘッド」「パイプライン」のベンチャーズカーペンターズ等多彩である。視聴者からのリクエスト曲も多く演奏している。

 

興味のある方は、ご視聴下さい。