一昨年、昨年と秋の季節に、このブログで「寺井尚子さん」を取り上げた。
① 2019年9月23日 アップ 「寺井尚子さん」
⓶ 2020年11月13日 アップ 「寺井尚子さん 2」
①⓶とも寺井さんの演奏した曲についての紹介で、寺井さん本人のことには、触れなかったので、今回は寺井さんのプロフィル、エピソードの紹介から始める。(ウィキペディアやNHKトーク番組「トップランナー」等を参照した)
・寺井さんは1967年生まれの54才、神奈川県藤沢市出身のジャズヴァイオリニスト、初めはクラシックを目指していたが、腱鞘炎で練習を休んでいた時に、ビル・エヴァンスを聞いてジャズに目覚める。
・1988年プロデビュー、名古屋のライブハウスを中心に活動
・1993年来日中のジャズピアニスト・ケニーバロンが、公演が終わって偶然に寺井さんが出演していたジャズクラブへ立ち寄り、即席で共演、その縁で翌年彼の録音に参加するよう、ニューヨークへ招かれる。
・その録音の後、ケニーバロンから「イメージだけで二人でやってみないか(メロディもキーもテンポも無く全くの即興アドリブで)」と誘われる。それは二人の即興のイメージだけで生まれた8分間の美しい逸品「ROSE NOIRE(ロゼヌワール)」となった。
・以降ジャズヴァイオリニストとして、国内のジャズ公演や、パリを始めとする海外公演で世界のトップクラスのジャズミュージシャンと共演したりと華々しく活躍している。
・2004年ゴールドディスク大賞、2010年芸術選奨新人賞他、数々の受賞歴を有している。繊細な表現力と、情熱的な演奏に磨きがかかり、日本を代表するジャズヴァイオリニストとなった。
・使用しているヴァイオリンについて、寺井さんは次のように言っている。
「イタリア製、20年以上使っています。炎天下の野外ステージでも弾きます。常に持ち歩いて大切にしていますが、甘やかさないようにしています。楽器がタフに育っていて、いつのまにか一心同体になりました。今一番良い状態で、理想の音を奏でてくれますね。」寺井さんのヴァイオリンも幸せ者だ。
今回は、1.「Spain スタジオライブ」と 2.「Donna lee 屋外ライブ」の動画をを紹介します。
1.「Spain」
これはスタジオライブの動画であるが、詳しい人がいるもので、この動画のコメント欄に色々な情報を提供している。
それによると、
・これは16~17年前の、NHKセッション505の名古屋収録で、演奏メンバーは下記
寺井尚子(VI) 納谷嘉彦(P) 北川弘幸(B) 猿渡康彦(Ds)
(Piano 183548さんのコメント)
・寺井さんがメジャーデビューする前、寺井さんは、納谷さん、北川さんと名古屋でトリオを組んで、演奏していた。寺井さんは納谷さんにジャズアドリブを徹底的に教えてもらった。納谷さんは寺井さんの恩師だ。(jirowe ractia さんのコメント)
・寺井さんたちは、当時名古屋で「プレザンプレザン」と言う名前のバンドで演奏していた。(kiichi Murataさんのコメント)
さて話を「Spain」の動画に戻そう。
「Spain」は、チックコリアが1972年に作曲したジャズの名曲である。イントロでアランフェス協奏曲のメロディが流れ、その後アップテンポになる。ここで何回も出てくるメロディを、寺井さんがいとも容易(たやす)く微笑みながら楽しそうに奏でる。ヴァイオリンに合わせて口ずさんでみるが、簡単なようでピタッと合わせることは難しい。
寺井さんのヴァイオリン演奏を、納谷さんがピアノソロで引き継ぐ。このヴァイオリンからピアノへの移行の流れが、実にスムースで心地よい。陸上のリレー競技でバトンが綺麗に引き継がれた感覚だ。納谷さんの太い指はピアノ演奏家として恵まれているのだろう。力強いピアノ音が鳴り響く。横で寺井さんが楽しそうにリズムをとっている。
ピアノの後一旦ヴァイオリンが演奏して、ベースのソロ演奏に引き継がれる。徳光アナにそっくりな、北川さんがこれぞベース演奏というような素晴らしい音色を聞かせてくれる。ベースの最後に超低音で〆(しめ)るところはそのカッコよさに痺れる。
コメント欄では、ピアノとベースに比べて、ドラムの評価がイマイチだ。私にはその違いは分からないが・・・
演奏には直接関係ないが、寺井さんはいつも黒の衣装で通しているが、寺井さんのこの時はドレス姿だ。又髪型もアップにしていて、こんな尚子さんを見るのは珍しい。
この演奏は、寺井さんの演奏もさることながら、4人のカルテットとしての演奏が素晴らしい。
この動画で非常に残念なところは、最後が尻切れトンボになっていることだ。悔やまれる。(最後まで演奏している別の動画もあるが、何れもバンドメンバーが異なり、私はこの動画の演奏が一番と考えこれを採用した。)
2.「Donna lee」
この動画は、2002年東京ジャズフェスティバルの東京スタジアムで収録されたものだ。
この曲はチャーリーパーカーが作曲したとされいたが、実際はマイルスデイビスが作曲したらしい。
この曲は超高速で演奏することから、ギターやベースの高速演奏のテストとしても使われている。今回寺井さんが、ヴァイオリンでこの曲に挑戦した。私は素人でよく分からないが、テンポはT=250くらいではなかろうかと思う。
コメント欄で、niraiableさんは「超絶技巧、前人未到、空前絶後、・・Ahhh茫然自失」と絶賛している。
短い曲であるが、寺井さん全身全霊を集中して、演奏している。前半の途中天を仰いで一息ついて一気に弾ききってしまうところが、潔くてカッコいい。
ヴァイオリンの前半の演奏を引き継いだ中沢剛さんのドラムソロが素晴らしい。寺井さんもドラムのテクニックに感動したのか、隣のギター奏者と目くばせをして ノリノリだ。
中沢さんは、寺井さんのバンドのドラマーとしても、リベルタンゴ等で参加しているが、コメント欄の評判もすこぶる良い。中沢さんは、素人の私が聴いても最上級のドラマーだと思う。