北信濃行き当たりばっ旅 1

我儘なことではあるが、平凡な日常の毎日に飽きてきて、非日常の旅に出て、気分を一新したくなった。旅は二泊三日、旅での自由度が優れる車によるドライブとし、行き先は北信濃方面とした。

 

初日は、木曽の開田高原をめざし、野麦峠経由で松本に出て一泊、二日目からは、旅先でその時の気分次第で行き先をきめる「行き当たりばっ旅」だ。

 

一泊目は、松本駅近くのビジネスホテルとする。駅周辺のビジネスホテルはどこも10,000~15,000円で、しばらく旅行も行かずビジネスホテルにも泊まっていない間に随分値上がりしたなと思う。

 

天然温泉付きのホテルがあったので、そこにした。但し、入浴時間は男女制限が、男性は15時~17時、21時~とある。温泉にゆっくり浸かってから食事に外出したいと考え、ホテル15時着を目標にする。

 

<一日目、10月30日(月)>

3:15 自宅出発、松本15時着から逆算して深夜3時過ぎの出発とする。昼だと40分の最寄りのICまで20分で着き高速に入る。走っているのは9割方大型トラック、中央道は意外と街灯が少なく、真っ暗闇を100~120㎞/hのスピードで、自分の車のライトだけで走るのが少々恐かった。

 

5:00 諏訪湖SA 5℃ トイレ休憩、車中で暖かいお茶とおにぎり。満月が煌々と輝いていた。

 

5:50 伊那ICで高速を降りる。昔、車好きの友人と、細く曲がりくねった道の権兵衛峠を越えて、1.5時間くらいかけて伊那谷から木曽谷へ向かったことがあったが、今はその峠に長いトンネルが開通していて、わずか20分で、木曽の国道19号に出ることができた。

 

6:55 国道361号へ入って、きそふくしまスキー場の下のトンネルを抜けると開田高原だ。外気温はぐんぐん下がって-1℃。丁度太陽が昇り始めた頃で、一面に霜の下りた草原の先に、陽に照らされて色づいた高原の山々が美しい。早出したご褒美だ。前回のブログの題名「霜降の頃」とは、こういう風景を言うのではないかと思った。

 

 

 

高原内を走っていると、少し赤い紅葉の先に、突然前方に雪を被った御嶽山が現れた。

 

 

 

しばらく行くと御嶽山を一望できる展望台がある。開田高原の先にドンと構えた御嶽山が目に飛び込む。御嶽山キリマンジャロ(行ったことは無いが)に似たどっしりとした風格のある見応えのある山だ。

 

 

 

 

8:40 九蔵峠展望台 開田高原から高山方面に向かう途中にも展望台があり、休憩する。

 

 

御嶽山をバックに句碑がある。「木曽谷や 五臓六腑に 〇沁む」〇は「緑」だろうか?良く読めない。

 

 

一台のマイクロバスが反対方向から来て止まり、15、6人の外国人団体観光客が降りてきた。彼らも休憩のようで、御嶽山を背景に写真を撮ったりしている。その内の一人に、どこから来たかと尋ねると、アメリカと言い、オーストラリア人もいると言う。米豪人にしては日本人並みの小柄な人が多かった。

 

10:00 野麦街道分岐 野麦街道は現在の県道39号で、道が狭く険しい悪路が多いので、大型車両は通れない。峠は冬季閉鎖になり、ドライブマップには「初心者は走行注意」と書いてある。

 

10:50 野麦峠 ここからは乗鞍岳が望まれる。野麦峠は山本茂の小説「あゝ野麦峠」※1の舞台でもあり、映画化もされたので、全国的にも名の知られた峠だ。峠には「お助け小屋」※2という食堂を併設した休憩所がある。

 

※1 明治から大正にかけて、現金収入の少ない飛騨の村々の少女たちが、当時生糸工業で発展していた諏訪の岡谷へ出稼ぎの為にこの峠を越える苦難を描いたもの

 

※2 野麦街道は、古来、能登で取れた鰤を飛騨を経由して信州へ運ぶ道筋で、江戸時代には、代官の往来や富山の薬売りも利用していたが、この峠は厳しく最大の難所であったため、幕府は利用者の願い出を受けて「お助け小屋」を設置した。

 

お助け小屋に入ると、至る所に映画のポスターや当地を訪れたロケの様子の写真が貼られ、テレビでは映画「あゝ野麦峠」のダイジェストビデオが放送されていた。

「野麦蕎麦」なるものを注文する。山菜そばだった。素朴だが美味しかった。

 

11:35 野麦峠出発 下りは登り道より更に険しく、急勾配の細いヘアピンカーブが連続する。やっと緩やかな少し開けた所に出て、周りを黄、黄土色に彩られた山々に囲まれた道を走る。赤い色が少なくて残念だ。

 

 

 

落合渡から県道26号となり、梓湖を左に見る頃に、奈川の集落から正午を知らせるメロディが流れてきた。のどかな田舎道だ。

 

奈川渡ダムで左の上高地からの国道158号と合流し、後はこのまま松本まで緩やかな下り道を快適に飛ばす。

 

13:30 ビジネスホテル着 予定よりも1.5時間早くホテルに着いた。チェックインは15時~なので、車を駐車場に停めて、車内で明日の宿、ルートを検討する。

 

明日は、下記3案から決める。

①高速で日本海に出て上越、柏崎当たりで泊まる。

②高速で須坂、長野東ICまで行き、志賀高原草津方面を目指す

安曇野を一般道でブラブラ北上して白馬で泊まる。

 

①は数年前にドライブしたのと、帰りが遠くなるのでパス

②の上信越の山の紅葉は今日とそんなに変わらないだろうし、山岳ドライブで神経をつかうのもしんどいかとパス

③は、車ではまだ行ったことが無い地方だったこと、山岳道路と違って普通の運転で余裕ができることから、③と決める。

 

早速、白馬の宿を捜し、口コミで評判の良さそうなペンションを予約する。

 

15:00 ホテルチェックインし、直ぐにホテル内の天然温泉に行く。浴槽は4m✕6mくらいの1浴槽のみではあったが、浴室内は清潔に保たれ、気持ち良く入浴できた。泉質はわずかに濁り(温泉成分)のある透明で、壁には色々な効能が貼ってあった。浴室は最後まで私一人で、貸し切り風呂のようで温泉気分を満喫できた。

 

17:30 ホテルは松本駅の南10分程のところだ。ホテルでもらった食事処を紹介したパンフレットを参考にお店を捜すべく、駅前の繁華街に出かける。今回の旅では松本宿泊は前から決めていたので、リハビリの松本出身のスタッフに松本でのお薦め食べ物を訊いたところ、「そば」「山賊焼」「馬刺し」と教えてくれた。

 

「山賊焼」とは鶏肉の唐揚げらしい。折角教えてもらったのに、大変申し訳ないが、「山賊焼」と「馬刺し」は、食指が動かない。松本まで来たのだからとチャレンジしてみようかとも思ったが、どうも気が進まない。

 

「できれば焼松茸とか松茸の土瓶蒸しでお酒が飲めたら・・・」と店を捜すが見つからない。居酒屋などが立ち並ぶ小路を歩いていて、魚介類を焼いて出す「海鮮浜焼き屋」なる店が美味しそうで、中にに入った。松本へ来て魚の居酒屋にしたのだ。

 

最初に出されたお通しが、わかめの入ったせんべいで、手抜きかと失望する。ビール、はまぐり、さざえの焼き物、だし巻き卵、野沢菜を注文する。焼き物は机の上の一人用ガスコンロで焼く。食べ物がおいしくて、店の雰囲気が良ければ、この店でいろいろとお酒や酒の肴をいっぱいたのんで長居しようと思ったが、そんな気分にならない。たのんだ物を食べ終わると、追加注文はせずに店を出た。

 

その店の数軒先にラーメン屋さんがあって、ここしばらくラーメンを食べてなかったので入る。豚骨ラーメンで特に旨くもまずくもなかった。

 

「どうも松本の夜の食事は失敗だったかな」と諦めてコンビニでおやきを買う。ホテルへ帰る道すがら、パンフレットにあった「昔懐かしい洋食屋さん」を見付ける。ここでも良かったかと思いながらホテルに戻った。

 

                 ー続くー