Sさん

13年くらい前、私が入っていたテニスサークルのメンバーが少なくなリ、市の広報で部員の募集をした時に入会してきたのがSさんだった。テニスの休憩中に、Sさんと話をしていて、Sさんは私と同学年で、子供の学区も同じご近所だったことが判明して、以降親しくお付き合いさせてもらっている。

 

Sさんは今はリタイアしているが隣町の市役所に勤め、その時代から自宅近くの公園で早朝のラジオ体操を始め、25年以上もその世話役を務めている。テニスは現役時代からやっていたそうで、今でも週5回程テニスに参加し活動している。

 

テニス以外では、私の誘いで卓球をやるようになり、少し前までは民謡のサークルに通っていた。講師の先生がお亡くなりになってサークルが解散し今は休止しているとのことだが。

 

Sさんの朝の日課は、ラジオ体操が終わったら近くの別の公園に行って、雲梯で「ぶら下がり」と足上げの「腹筋運動」をする。(私の「ぶらさがらり」は、Sさんに教えてもらったものだ)その後町内を散策し、MACに寄ってコーヒーを飲みながら新聞を読むというものである。

 

私は、Sさんと一つのテニスサークルと一つの卓球サークルで同じサークルに属しているので、それぞれの練習が終わった後に一緒にMACへ行って、世間話を談話する。私にとっては普段人と会話することが少ないので、 貴重な時間である。

 

私はMACへはSさんと行くだけだが、Sさんは毎朝(私と行く日は2回)行っているので、店の店員さんとも顔なじみで、若く可愛い店員さんからもよく声をかけられる。

 

Sさんは色々な所で活躍しているので、顔見知りが多い。どこのテニスコートに行ってもご婦人方から声をかけられる。MACでも、店内で数人のご婦人が話している横を通ると、彼の知り合いで「あら!」と声をかけられることが多い。

 

着席して「どなた?」と訊くと、ラジオ体操関係、テニス関係、奥さんの友人関係、同郷の幼馴染関係・・・と色々である。

 

二人で話していると、人の名前や昔の出来事が出てこないことが多い。私も一人の時はスマホで調べるが、Sさんは、会話中でも直ぐにスマホの音声入力で検索する。例えば相撲の話をしていて、「力士の怪我が多いのは土俵が高いからではないか」と言うと、即座に土俵の高さを調べる。何事にも好奇心が旺盛で分からないことは直ぐに調べる性格のようだ。

 

外見からすると酒豪のように見えるが、お酒はそんなに飲まず、羊羹等が大好きな甘党である。

 

Sさんはテニスがお上手である。練習試合で素晴らしいサービスエースを決めた時とかファインプレイして得点した時に周りから「ナイスサーブ!」「ナイスストローク!」と賞賛されても、「まぐれ、まぐれ」と謙遜する。奥床しい。

 

私が彼と知り合った翌年辺りに行われた小さな大会に、私はSさんと組んでダブルスに出場した。そこで私は生まれて初めてテニス大会で優勝した。Sさんには貴重な体験をさせてもらった。毎年開かれるその大会は、優勝した同じメンバーでダブルスを組むことが出来ず、Sさんは私以外のメンバーと組んで、何回も優勝していた。将に優勝請負人である。

 

Sさんは、気配りの人でもある。テニスでも卓球でも人が見落としたり、不利になるような状況では率先してカバーする。テニス、卓球ともメンバーが足りないとか不具合があった時は、自分の都合よりサークル全体を優先し、活動がうまくいくように努める。

 

今年の連日猛暑が続いた夏、私は週1回のテニスをバテバテの状態でやっていたが、Sさんは酷暑の中週5回テニスをこなしていた。さすがSさん「鉄人」の名に相応しく面目躍如だなと感心していたら、そのSさんが8月始めに風邪をひきテニス、卓球も1週間程休んだ。

 

普段元気なSさんを見慣れている卓球の仲間に、Sさんの風邪を伝えると、皆口を揃えて「それは鬼の霍乱だ」と言い、直ぐに治るはずなので「心配は無用」といった雰囲気で、風邪を引いてもあまり同情されてない様子だった。その時私は「元気すぎるのも可哀そうだな」と思った。

 

そのSさんが、最初の風邪から3か月後の10月下旬に再び風邪をひいた。(コロナ、インフルエンザの検査もしたが陰性)10月下旬のH卓球の日、彼はメンバーが少なかろうと、具合が悪いのに会場に来た。その日はSさんを含めて7人集まったので、「自分が抜けても大丈夫だろう」と卓球はせずに帰って行った。

 

夜、様子伺いのメールをすると、「風邪に弱い体質になってしまいました」と鉄人の面影がなく、すっかり弱気になっていた。Sさんがテニスの練習ボールを預かっているので、私宅へそのボールを届けにくると返信された。

 

私がSさん宅に取りに行くとメールすると「ボールは私が届けさせて下さい。依頼する側が持参しないと、次から頼ることができなくなるのでお願いします」と返信があり、翌々日庭の柿を添えてボールを届けてくれた。どこまでも律儀なひとだ。

 

Sさんとは今後も長い付き合いになると思う。これからもよろしくお付き合いの程お願いしたい。

 

 

 

                 ー了ー