私の脳梗塞(発症から退院まで 2)

1月4日(月)

 

深夜1時か2時頃目が覚める。痛いところなどは無い。昨日の出来事を頭の中で反芻(はんすう)する。「あ~私も父と同じ脳梗塞になったのだ~」と実感する。

 

私の父は、名古屋に住んでいたのであるが、今から40年程前に、甥(私の従兄弟)が急逝し、その葬儀に出席するため、長野県小諸に行っていた。3月の寒い日でお墓に行って、甥を偲んでひどく悲しんでいたそうだ。そこで脳梗塞で倒れ小諸の病院へ搬送された。

 

知らせを受けて、私は当時6才の息子を連れて病院へ駆けつけた。父は私の顔を見るなり泣き出した。明治生まれの父が人前で泣くなんて、私は始めて見る父の姿にショックを受けた。

 

父はこの倒れる前から、自分の義父や近所の住民が脳梗塞を患い、手が震えたり言葉が不自由な様を見るにつけ、自分はこの病気にだけはなりたくないと常々考えていたらしい。その病気に自分が、なってしまったので、この先のことに悲嘆し、私の顔を見て泣いたと思われる。

 

私の場合は、父には悪いが、この病気を自覚した時、「テニス卓球はできなくなるかな、車は乗れなくなるかな」とは思ったが、悲観とか悲嘆といった感情は一切起こらなかった。「ま~しょうがないか。その時その時を一生懸命生きればいいや」と考えた。

 

昨年末、このブログで紹介した塩沼大阿闍梨がそんなことを言っていて、共感をおぼえていたかもしれない。

 

その塩沼大阿闍梨は、死と隣り合わせの難行苦行を完遂した結果、脳をMRI検査すると、太い血管のみで、細い血管はほとんど死滅しているとのこと。それでも法話をしたり、講演をしたりと活動ができるのは、まわりの血管が補って働いているからだという。

 

塩沼大阿闍梨のような鉄人だからこその現象だろうが、私の脳もそんな風に働いてくれたらいいなと思う。

 

 

朝6時に照明が点灯する。入院初日の朝が来た。

 

私は、左手に点滴、右手にモニターに繋がる、心電図、血圧計、オキシメーターの、コード類が付けられていて煩わしい。モニターには、脈拍数、心電図の波形、血圧、血中酸素濃度の値がリアルタイムで表示され、看護師さんが一目で分かるようになっている。

 

そして看護師さんによる朝一の点検確認だ。

〇〇さんおはようございます。よく眠れましたか?異常はありませんか?に始まって、検温、そしてSCU(脳卒中集中治療室)ならではの質問が続く。

・今日は何月何日ですか?

・ここはどこですか?

・あなたは今何才ですか?生年月日を教えてください。

・100ひく7はいくつですか?(93と答えると)そこから7をひくといくつですか?

 (86と答えると)そこから7をひくといくつですか?

・目をつむって手のひらを上にして二本の手を平行に出してください。

(手の揺れや、平行を保つことができるかをチェックする)

・ベッドに寝て片足をあげてください(左右)

・片足の膝を立てて、反対の足のかかとを、立てた膝につけ、かかとを足の脛に沿ってすべらせ、足首まで移動してください。(左右)

・人差し指を自分の鼻につけ、その指を私(看護師さん)の人差し指につけてください(看護師さんの指は前後左右に移動する)(左右)

その他瞳孔の検査をしてやっと終わる。これが一日2~4回行われる。

 

今日は1月4日の月曜日、正月休みが終り、病院も平常診療が始まった。

看護師さんやスタッフの方々も揃って慌ただしく(あわただしく)立ち回っている。

 

私は午前10時頃にCT検査が入っていた。検査の少し前に、病室でストレッチャーに乗せられる。この病院は大きな病院で、8階のSCU病室から1階の検査室までは、長い廊下を渡ったりエレベーターに乗ったりとかなりの距離を移動することになる。

 

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          写真ACより fujikiseki 1606 さんの作品

 

途中揺られて気持ちが悪くなる。エレベーターの中で、ゲッと吐きそうになった。昨日の処置室でも吐いたし、昨日から何も食べていないので、胃の中には何も入ってないはずだ。ストレッチャーで運んでくれていた助士の人が、パニックになった。「やだ、やだ!、こんなところで吐いちゃいやよ、いやよいやよがまんして!やだ、やだ、いやよいやよ、やだ」

 

吐かずになんとか検査室まで到達できたが、この助士さんまだ経験浅いのかな~と思った。

 

  

コロナで面会はできず、電話も室内禁止公衆電話のみ(この時点ではベッドからの自力移動はできず無理)スマホによるメールは許されているので、それがが唯一の外部との連絡手段だった。

 

私の病状の詳しいことは、1月8日に主治医が家族共々説明があるということで、今は次のようにしか分かっていない。

・心房細動で血がよどみ血栓ができ、それが小脳へ飛んで毛細血管を詰まらせた。

・それにより、小脳に関わる運動機能に障害を生じた。

  右手足の失調(目標とするところへ手足指がいかない)

  左手麻痺

  音声構音障害

 

よって、スマホで入力するのは、至難の業だ。

 

手入力では、指が定まらない。音声入力では呂律が回らずグーグルが日本語に変換してくれない。

 

娘へは、「ハイ明けてお弁当サークルは」と意味不明なメールをおくっている。

 

疲れもでてきて、今日の送信は断念した。

 

 

                 ー続くー