私の脳梗塞 (発症から退院まで 9)

1月13日(水)

今日も日勤の看護師さんは、若い男性看護師さん1名と若い女性看護師さん3名の4人体制だ。

 

9:00からの言語リハビリは、昨日言われたようにこの日から2階耳鼻咽喉科言語聴覚士専用の部屋で行うことになった。8階のSCUから2階のこの部屋までは、かなり遠く、外来の患者さんにも沢山会うことになるので、助士さんに車いすで送迎してもらう。

 

助士さんは私を耳鼻咽喉科の処置室へ、車いすごと置いて帰っていった。しばらくして、美人先生が現れ、私の車いすを押して言語リハビリ室へ運んでくれた。この時、特に彼女が京料理研究家の大原千鶴さんに似ていると実感したのだが、それは髪型や頭、顔の感じが大原千鶴さんとそっくりだったからだ。

 

彼女は5年生の女の子のお母さんで、旦那さんは医療関係ではない一般のサラリーマンとのこと。

 

室内の机の上にはいろいろなテキストに混じって「美人の話し方」(?)という本があった。先生は私がその本に目が行ったのを見て、私が話しかける前に「やっぱり言うと思った」と機先を制された。

 

室内ではマンツーマンで指導して頂く。まずは舌の運動だ。大きく口を開けて舌を水平に出し入れ(10回)、口を閉じて舌を歯の外側をぐるぐる回す(左右5回ずつ)頬のふくらまし、(10秒5回)舌で頬を内側から押す(10秒3回)

 

結構きつい。私は舌の水平出し入れが苦手で、大きく出すと下へ曲がったり引っ込める時、舌を巻いてしまったり、難しい。

 

その後、ら行の2語組み合わせ(例えば、らだ、らぢ、らづ、らで、らど)の発声練習30分位続ける。ここは、個室なので、SCUと違って気兼ねなく大声が出せる。

 

ここまでは、無機質な練習だったので、最後は著名文の朗読、先生が選んでくれたのは、「ういらう売り」と幸田露伴の「五重塔」、「ういらう売り」は自主練でも読んでいたし、幸田露伴の文章は格調高くて元々好きだったので、文句はない。先生からは、短く区切ってゆっくり読むようアドバイスいただく。

 

私は、「ういらう売り」にでてくるお店が、小田原駅近くの国道1号線の北側にあって、お城と間違えるような立派なお店だと先生に話そうと思ったのだが、話す言葉が頭の中にいっぱいあって、それを言葉で発するのに口ごもりモゴモゴしてしまった。先生は笑いながら、優しく「一度に沢山話そうとして、渋滞してしまったのね」と言ってくれた。さすが、言語聴覚士お見通しだった。

 

 

1時間のレッスンを終えて、SCUへ戻るとN先生が待っていてすぐに下肢リハビリに入る。ルーチンの足の曲げ伸ばし、かかと上げ、にスクアットにバランス運動が加わる。片足立ち1分左右、両足を前後一直線に並べ直立1分。

 

テニスボールを3m位から左右に投げてもらい、それを右手、左手で受けとる.初めはミスが多かったが、次第に上手く取れるようになった。

 

次にゴム風船を先生が叩いて自分の方に来たものを、先生の方へ叩き返してラリーをする。このゴム風船なかなかの曲者で、強く打ったから早い球が来る訳ではないし、飛ぶ方向が全く定まらず読めない。これを数分間床に落とさないようにラリーして落としたら負けのゲーム感覚で行った。これは手足のバランス力アップには良さそうだ。

 

廊下へ出て、病院内を3周ほど後ろ歩きも加えて歩き、階段の上り下り、手すりも使わない練習もした。初め手すりなしの階段はとても怖かったが、数回するうちに慣れ、恐怖心も無くなった。

 

リハビリの無いときは、自力で歩けるようになったことから、看護師さんに申し出れば、ラウンジへも行くことが許されるようになった。ここは8階なので、ラウンジからの眺めはとても良い。私が毎週木曜日に卓球で通っていた体育館横の公園のタワーもよく見える。左の方へ目をやれば卓球のお友達の家の近くのゴルフ練習場も目に留まった。しばらく、外界の風景を楽む。

 

夕方にはシャワーを介助も監視もなく一人で入ることができた。

 

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     写真ACより TAKEONE さんの作品 

 

                 ー続くー