12月7日にアップした「へんろ日記 5」の続きです。
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11月6日(月)(晴)(2017年/平成29年)
8:00 ビジネスホテルBを出発
8:10 M病院 前日訪ねた時、院内に入れるのは8:30からと聞いていたが、私の診てもらう整形外科の受付の前には、既に地元のおじいさん、おばあさんが10名以上並んでおり、診察してもらったのは9:30を過ぎていた。お年寄りの先生は頼りなく、私が抜糸をと言わなければ、消毒だけして帰されるところだった。
10:15 簡易郵便局 お金の引き出しに寄ったが、本当に小さな郵便局で、ATMがなく局の女性が手書きで書類を書いてお金を引き出してくれた。
病院へ立ち寄ったため、約一日分時間をロスして、へんろを再開する。
11:00 自転車/歩行者専用道路 昔の土佐電鉄の線路跡地で、車が通らず景観もよく凄く歩きやすく快適な道路だ。
自転車/歩行者専用道路から土佐湾を望む
琴ヶ浜の「太平洋一望展望台」からの眺め
芸西村に縁(ゆかり)のあった坂本龍馬の妻お龍とその妹君枝の像 桂浜の龍馬像に向かって手を振っている。
14:30 民宿S荘着 初回のへんろの時、へんろ後の旅も含め52泊したが、その52泊について、私独自の判断基準で宿の評価について数値化した。その結果、香南市のS荘が第一位となった。それが本日泊まるこの宿だ。
美人のおかみが迎えてくれる。3年前もお世話になったと告げると喜んでくれ、私の足の包帯を見て、とても心配してくれた。
入浴後、夕食まで時間があるので、宿の裏手の海岸を散策する。波打ち際に座って潮の満ち引きを30分程ぼんやりと眺める。私はこうして波の音を聞きながらぼーっと波を見ていると、母親の胎内に戻ったような感覚になるのがが好きで、日本各地の海岸で体験してきた。初回はこういうことがほとんど無かったので、今回は少し余裕が出たのかなと思う。
余談だが、火野正平さんの「にっぽん縦断こころ旅」の2020年秋の旅の最終回は、この海岸が舞台だった。
夕食は、私の好きな魚の煮付け代わりに、魚とイカのフライで、他に鰹のたたき、刺身等だ。いずれも美味しかった。
同宿者はへんろではなくて一般客の男性だった。彼と食事をしながら話し込む。彼は芸西村出身で今は大阪在住、こちらの施設で暮らす母親の見舞いに来たと言っていた。
15日目の歩数 27400歩 歩行距離 17.8㎞
11月7日(火)(晴)
6:30 S荘出発。すぐに土佐電跡地の自転車/歩行者専用道路を快適に進む。トンネルもある。9日目から、毎日海を眺めながら歩いてきたが、ここからしばらく海を離れる。
9:20 夜須、赤岡といった古い町並みや香南市役所の横を通って、28番大日寺に到着。
大日寺納経所前の可愛いお坊さんの像
休憩時に明日以降の宿の予約電話をいれる。予約がいっぱいで断られたり、相部屋を提案されたりとうまくいかない。
天気予報では、しばらく続いた晴天も、今夜から明日は雨とのこと。今夜の宿は予約済だが、明日以降は確定していない。
11:10 松本大師堂 この辺りは香美市(旧土佐山田町)の長閑(のどか)な田園地帯だ。ニラの匂いがする。コスモスなどの畑もあって綺麗で、歩いていても気持ち良い。
12:05 JR土讃線土佐長岡駅近くの踏切を渡って、国道195号沿いのコンビニへ立ち寄る。お腹は空いていないのに、おでん(大根、コンニャク)を買う。
12:40 29番国分寺着。渋く落ち着いて重厚な私の好きなお寺だ。韓国のへんろ(お坊さん)がビスケットをくれた。
13:35 県道384号 県道を歩き始めたら、急に睡魔に襲われた。朦朧としながら車の多い県道を歩く。途中スマホのケースと腰のタオルを紛失した。
15:00 30番善楽寺着。ここは街中の住宅地の中にある華やかで大きなお寺だ。29番からここまで私は2時間を要したが、韓国へんろは1時間半で来たと言う。
善楽寺の十一面観世音菩薩像
15:30 土佐一宮(とさいっく)駅前のドラッグストアで、膝の傷用防水テープを購入。
16:10 Sホテル着。奈半利以来のシティホテルだ。洋室が満室で、10畳の和室(イスとテーブルの小部屋付き)だった。ディナーは蕪のスープが濃厚で美味しかったが、豚のソティは量は多いがイマイチだった。
19:30 就寝
16日目の歩数 54500歩 歩行距離 35.4㎞
11月8日(水)(雨→曇)
3:30 起床 昨日は歩いていても眠いくらいの睡眠不足だったので、8時間爆睡した。
6:00 Sホテル出発。 朝食は7時からで、出発が遅れるためキャンセル。外は雨だが、1~2mm程度の小雨なので、雨具は携帯傘とする。
6:10 Fコンビニ コンビニなのに大きな食堂のようなイートイン専用の部屋が付いており、そこでおにぎりとお茶で朝食。
7:10 31番への車道入口 へんろ道は「土佐電文殊通り駅」横の踏切を渡って31番への山道となるのだが、私は初回へんろの時、この山道で石の苔を踏み滑って転び、右手親指薬指から大量の出血をした。この時は31番の手水場で血を洗い流し、携帯した赤チンを塗って事なきをえた。
今回は雨も降っているということで、大事をとって車道から31番を目指すこととする。
7:40 31番竹林寺着 高知市内で立地が良く、いつもは常に参拝者で賑わっているお寺であるが、参拝者は一人もおらず、雨にけぶる五重塔が私を迎えてくれた。
境内にある「善財童子像」(阿部鉄太郎制作)
善財童子は、華厳経に登場する求道の志が篤い少年で、文殊菩薩の指南により53人の善知識を訪ねて教えを乞い、ついには悟りの世界に至ったという。
8:45 31番から下る道を道路工事中のお兄さんに尋ねたら、それが間違っていて、20分程時間をロスする。
10:20 32番禅師峰寺(ぜんじふじ) 31番は標高120mの山の上、32番も82mの山の上にあるので、低い山ではあるが参拝するには山道を登らなくてはならない。雨も降っているので注意して登る。
さて本日の宿は、色々電話をして土佐市内のビジネスホテルと決まった。土佐市には35番清瀧寺があり、その途中には、33番雪蹊寺、34番種間寺が存在する。
ここから33番へ行くには、四国へんろ唯一の渡し船(フェリー)に乗らなくてはならない。この船は、昼間は一時間おきに運行されている。これからだと、12:10が都合が良い。
12:00 種崎の渡し 渡し船に間に合うように焦って、時速6㎞位の速さで歩く。何とかセーフ。
種崎からの渡し船 対岸が長浜
乗船時間は5分で、12:15対岸の長浜着。
12:35 33番雪蹊寺 参拝後本日のこれからを再検討する。土佐市内のビジネスホテルが決まった時は、34番の参拝後は本日はビジネスホテルまでとし、明日一番で、35番を参拝してへんろを続けようと思っていた。
35番の位置は、次の36番への途上には無く、土佐市内から3㎞ほどの北西の山の中腹にある。従って同じ道を6㎞往復することになる。
これから急いでホテルへ行って、ザックを預けてさんや袋だけで行けば、17時の納経受付終了時間までに間に合うかもしれない。そうすれば、明日以降の工程に余裕ができる。
14:30 34番 種間寺 このお寺に来るまでも、へんろ道以外の畑の中を通る最短の農道をグーグル地図で探し、スマホを見ながら辿り着いた。34番は田舎の田畑の中に有って、地元に愛されている素朴なお寺だ。お参りをしていても、17時の35番に間に合うか気になる。
15:20 仁淀川 高知市と土佐市の間を流れる大河なのに水清く美しい。高知県では四万十川と並ぶ名川だ。大橋を渡るのに11分要する。
15:40 ホテルにザックを預けるつもりだったが、少しでも時間を短縮する為、国道56号沿いのコンビニにお願いしてザックを預ける。
16:50 36番清瀧寺(きよたきじ) なんとか17時に間に合い参拝と納経をすますことができた。秋の日はつるべ落としで、寺を後にする頃には日も暮れて懐中電灯が必要となった。
18:00 ビジネスホテルT着。前回も含めて宿への到着が一番遅くなった。受付で、おかみから柿の接待をうける。このおかみ、いかにも水商売風であったが、親切で濡れた靴の乾燥用にドライヤーを貸してくれた。
20:10 ホテルに夕食が付かないので、近くでの食事処を捜すが、この時間田舎の町には、飲み屋しかない。今日はお酒は全然飲みたいとは思はない。コンビニのイートインで、ざるそばとおでんを夕食とした。
本来歩きへんろには、時間の制約はなく、気ままに歩行を進めればよいのであるが、今日は二度も自分で時間の制限を課してしまった。「種崎の渡し」と「35番の参拝時間」である。
前者では間に合うように全力歩行し、後者では間に合うように、色々な手を使い最善を尽くした。全てうまくいった。我ながら頑張った自分を褒めてやりたい。長い一日だった。
17日目の歩数 71330歩 歩行距離 46.4㎞
ー 続く(非定期)ー