7月10日にアップした「へんろ日記 15」の続きです。
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12月6日(水)(晴)(2017年/平成29年)
3:25 起床 昨日、宿に朝食のキャンセルを告げたら、食堂でおにぎりを作ってくれた。それを食べる。
5:50 出発。 宿を出ると、夜明け前で月が煌々と照っていた。月明かりで懐中電灯が無くても十分歩ける。月明かりの中を歩くのは、14日目の高知県奈半利以来だ。周りは山道で人家は一軒もない。月明かりの中の歩行は、ロマンチックな気分にしてくれる。
6:50 西山 夜が明けて明るくなり始める。国道の分岐点で右へ行くと徳島県熊谷寺方面だ。左白鳥駅方面に進む。
7:05 高松自動車道高架下 真正面から太陽が昇り始めた。眩しいが気持ち良い。東さぬき市の白鳥の町を抜けて国道11号を東進する。この辺りは徳島県上板町と並んで和菓子に用いられる和三盆の産地で、国道沿いにそのお店も見受けられた。
8:55 所持金が少なくなったので、郵便局で引き出そうと相生郵便局に立ち寄るが、まだ開局していない。郵便局の前の播磨灘を眺めながら待つ。天気は良いが風が冷たく瀬戸内海なのに波が高い。この辺り、地図で見るともう少し賑やかな集落と想像したが、国道にコンビニも無く寂しいところだった。
9:50 JR高徳線讃岐相生駅の東側踏切を渡って、JR沿いのへんろ道をしばらく進んで、いよいよ香川県から徳島県の県境を越える登山口だ。
10:30 県境 予想したより登りの勾配は緩く、落ち葉の降り積もった登山道は、比較的楽に登れた。
11:05 ベタノ谷分岐 ここで右へ行くものと確信していたので、標識が左になっていて、頭が混乱する。(その後歩きながらずっと「なぜ左なのか」と考え続けた。結論は、私が思い込みで地図を間違えて読んでいたことによる)
12:15 県道41号分岐 ここから道が舗装されていて助かる。
12:50 卯辰峠 峠下のカーブのコーナーで、赤い軽自動車が車輪を上に向けてひっくり返っていた。どういう運転でひっくり返ったのか理解に苦しむ。運転者は見当たらず、地元の警官が車を調べていた。
峠を越えて下り坂を快調に進むと、大麻比古神社の広い境内に入る。ここからこの神社の参道が霊山寺の横まで一直線に続いている。
13:35 K荘 本日の宿はこの参道沿いにあるので、荷物をいったん預ける。
14:00 1番札所 霊山寺 88カ寺を無事参拝できたことの報告とお礼参りだ。納経所では、品の良い銀髪の女性から結願のお祝いの言葉を頂いた。この女性にこのへんろ二回目の墨書授印をお願いした
このページには、「あなうれし 行くも帰るも、とどまるも 我は大師と二人づれ」と書かれている。
霊山寺に隣接する売店で、テニス、卓球サークルへの土産を買って、帰宅後に宅配してくれるよう依頼する。
15:00 K荘 外観より設備が充実している。後で聞いた話によると、バス一台分の客に対応しているという。宿の人には申し訳ないが、本日の客は私一人。
今日の夕食は、結願をした自分へのご褒美に、活魚懐石を別途注文した。ここは鳴門に近いとあって、30㎝位の鯛の生き作りが出てきた。一人で食べるには多いが、凄く美味しくお酒もすすんだ。
夕食時、宿のご主人が話し相手となり、へんろや宿の話をしてくれる。現在のところ宿の跡継ぎが居らず、今の宿は大きすぎるので、小さくしてへんろ客と話をするのが夢だと言っていた。
一人娘が北海道の畜産大学6年生で、来年卒業し徳島県庁への就職が決まっているとのこと。自慢の娘さんのようだ。「娘さんが結婚し、婿さんが宿の後を継いでくれるといいですね」と言うと、「そんなにうまくいくかどうか?」と笑っていた。
酒も肴も美味しく、四国最後の夜を満喫した。
45日目の歩数 53,300 歩 歩行距離 34.6 ㎞
12月7日(木)(晴)
さて、四国88カ寺を巡り結 願した。一番霊山寺へのお礼参りも済ませた。
これからの大まかな旅の予定は、高野山の麓の九度山から町石道(ちょういしみち)を歩いて高野山大門に至り、そこから更に奥の院まで歩き、弘法大師にお礼参りをする。それから三泊四日で熊野古道の小辺路を通って熊野大社へ行く。その後は行き当たりばったりで旅先を決める・・・である。
とりあえず今日は、九度山近くの宿までの移動だ。
7:00 朝食 今日は歩かないのに、朝からご飯を3杯食べる。
7:50 K荘に別れを告げ、歩いて高松自動車道鳴門西PAに向かう。
8:38 高速鳴門西バス停 なんば行高速バスに乗車、客は5~6名程、運転席の後ろに着席する。一か月半ぶりの乗り物で、歩かずに長距離移動できるのはやはり素晴らしいことだ。
窓外の景色を見ながら、快適なバスドライブを楽しむ。天気も良く淡路島通過の頃には気持ち良くてウトウトする。バスは神戸から一番海側の高速を通って難波を目指す。
11:06 なんば着 私は大阪へは何度も来たことがあるが、難波は初めてだったので、バス降車口から南海難波駅への道順が分からない。お上りさんのように、大阪のオバサンやビルの警備員さんに尋ね尋ねして、駅に着く。この時南海線は高島屋大阪本店の2階と3階から発着していることを知った。
写真ACより Harrie さんの作品 (難波駅/大阪高島屋)
11:30 難波の天丼や 駅前の天丼やに入る。さすが食道楽の街大坂、安くて、ボリュームがあって、旨かった。
12:00 南海難波発 高野線乗車
13:00 橋本着 この日予約した本日の宿は交通の便が悪かったので、駅前の観光案内で橋本駅か九度山駅近くの宿を当たってもらった。紹介された3軒に電話したが、全てダメだった。
JR橋本駅へ時刻調べに行こうと思い、観光案内の女性にザックを置かせてほしいと依頼したが断られた。この時「5分か10分なのに」と少々腹が立った。
へんろ中は腹が立つことは一度も無かった。これはへんろのお陰と喜んだが、元の私に戻ってしまった。こんなことで腹を立てた自分が情けなく悔しかった。
13:30 JR橋本駅 ここから和歌山線で和歌山方面へ一駅乗車する。列車が来るまでホームで地元のオバサンとお喋りする。自宅近辺では絶対しないことだ。心が和む。
13:40 紀伊山田 ここから歩いて本日の宿泊地Yへ向かう。
13:55 天然温泉Y 30分以上歩くことを覚悟したが、駅から15分で到着。チェックインは14:30からで、それまでは部屋に入れずロビーで待つ。ここは二軒のレストランを備えたスーパー銭湯を立派にしたような温泉で、宿泊棟と温泉、レストランは別棟になっている。
温泉に入る前に、高野山から先の熊野古道小辺路の様子が知りたくて、地元の野迫川村役場に電話する。今は季節が12月で、四国の大窪寺近辺でも雪に降られた。標高の高い熊野の山は雪が積もっているのではと懸念された。
案の定、小辺路の山道は、現在雪が積もっていたり、凍っている処が多いので、冬山装備でなければ止めた方が良いと言われる。役場の人にしてみれば、この状態でOKとはいえないのだろう。熊野古道・小辺路の旅は、今回は中止と決める。
温泉に浸かり、レストランで食事を済ませて宿泊棟に戻る。明朝は早朝出発したいので、朝食をキャンセルしたが料金は安くならなかった。
部屋で、小辺路を止めてどうしようかと思いを巡らす。「奈良のお寺巡りでもしてみるか」との考えに至った。
明日の天気予報を調べると、未明から雨だった。
12月7日の歩数 9,800 歩 歩行距離 6.4 ㎞
ー続く(非定期)ー