3月18日、春の彼岸の入りを迎えた。今年の冬は例年よりも寒く感じたが、「暑さ寒さも彼岸まで」の諺(ことわざ)通り、彼岸にはすっかり春めき暖かくなった。東京のソメイヨシノも、予測より更に一日早い13日に開花宣伝された。
これから桜も咲いて、春爛漫の季節を迎える。今年はこの3年コロナで、自粛していた諸行事がコロナ前のように再開される所が多く、久しぶりに解放感に満ちた春を楽しめそうだ。
先日春の穏やかな空をぼんやりと見ていて、子供の頃が思い出され「そういえば子供の頃、いろいろなことを不思議がっていたよな~」と懐かしく思った。
そこで今回は、お笑いコンビの「テツandトモ」よろしく、子供の頃に「なんでだろう?」と不思議に思っていたことを取り上げます。
1⃣ 三日月
小学校2年生の時、夕方近所の女の子と二人並んで三日月を見ていて閃(ひらめ)いた。「あの三日月の黒いところは、地球の影に違いない」と確信して、隣の女の子に「あの三日月はね、太陽と地球と月が一直線になって、地球の影で三日月に見えるんだよ」と自慢気に説明した。
写真 ACより にょんタロスさんの作品
後にそれは月食のことで、見ていた三日月の説明としては全くの間違いと気付いた。女の子は覚えていないと思うが、嘘を教えてしまった。そして、地球の影でないとすると、半月や上弦の月は、何であのような形にの見えるのだろうと、3年か4年生の理科で習うまで、そのことが不思議でならなかった。
2⃣ 夜汽車の月
夜汽車に乗っていて、目の前や遠くの景色はどんどん後ろへ遠ざかっていくのに、月は汽車と同じ方向に動いているように見える。そして汽車がいくら走っても、どこまでもついてくる。「なんでだろう?」と不思議だった。
まだ当時は、距離の無限大の概念が理解できなかった。
3⃣ 動く太陽
中学校1年生の時、同級生と雑談をしていて、「太陽は動いているか」が話題となった。私は、月が地球の周りをを回り、地球が太陽の周りを回っているのだから、太陽も何かの周りを回っているのに違いないと思い付きで想像した。
同級生は太陽は静止していると主張する。私は、根拠はないが自分の考えが正しいと思い理科の先生に訊いてみようということになった。二人で休憩時間の職員室へ行って「太陽は動いていますか?」と質問した。
先生は、私の質問が目に見える朝から夕方の太陽の動きのことを言っていると思ったらしく、「地球が自転しているから太陽が動いているように見えるけれど、実際は太陽は止まっている」と、中学生にもなって、そんなことも知らないのかというような口ぶりで答えた。
私は先生の前で、上がってしまって、「そうではなくて・・・」と反論もできずに、「ありがとうございました」と頭を下げて、すごすごと職員室を後にした。
その後、太陽系は銀河系の中に有って、銀河系はその中心を軸にして回転しているので、大きな視点で見れば、当然太陽も動いていていることを知る。私の直感の考えは正しかった。
4⃣ 潜水艦
子供の頃見た映画で、海に潜った潜水艦から外に出入りするのに、底のハッチを開けても海水が艦内に入ってこないのが不思議だった。
後に艦内の密閉した空気圧が海水圧に抗しているからと推察したが、当時は「なんでだろう?」と思って理解できなかった。
5⃣ コップの水
コップに水を縁までいっぱいに注ぎ、薄い紙を乗せてそのコップを逆さまにしても、コップの水は紙が外れて下へ落ちるようなことはない。コップに留まったままだ。
これも、どうして水は落ちないのだろうと不思議だった。後に理科の授業で、大気圧がコップの水を押し上げていると教えられた。子供にとって目に見えない大気圧を想像することは難しかった。
6⃣ 水玉
里芋の葉の上の水は、固形物のように玉の形でコロコロしている。それをつまむと更に小さな水玉になる。水なのに液状でないのが子供心に新鮮で不思議だった。
これも後に、水の表面張力と葉の撥水性によるものと学習するが、子供の頃は理屈よりも球形の水の存在自体が面白く、見ていて楽しかった。
6⃣ 海水
池とか川の水が真水なのに、それが流れ込む海の水はしょっぱくて、塩分濃度が薄まらないのは何故だろうと思っていた。
子供の頃は、地球の何億年の歴史の中で海が生まれ、陸地の成分が海に溶け込み蓄積されたこととか、海水濃度が薄まらないのは、地球上の水の割合は海水が圧倒的に多いことや、蒸発と雨でバランスされているということは分らなかった。
7⃣ 慣性
走っている電車の中で、飛び跳ねても、飛び上がったところへ着地する。時速60㎞(秒速17m)で走る電車の中で1秒間飛び上がっても、進行方向の逆側に17mのところに着地するわけではない。
これは、飛び跳ねる人間も慣性で電車と同方向に、時速60㎞で動いているからだ。子供の頃不思議に思ったこのことは、中学か高校の物理を習って納得した。
8⃣ 樹氷(エビの尻尾)
これは大人になってからの勘違いだ。スキー場や雪山では、樹氷(エビの尻尾)を見ることができる。樹氷の氷の成長は、風の力で吹く風の後方に成長するものと長年思っていた。
写真ACより 風龍さんの作品
実際は、吹いて来る風の風上側に向かって氷の結晶が成長していると知ったのは最近のことだ。
何れも他愛もないことではあるが、子供の頃の疑問が後に教えてもらったり、学習したりして解けた時は嬉しいものだ。
近年は、年を取ったせいもあるだろうが、「なんでだろう?」と思うことが極端に少なくなった。悲しいことだ。好奇心はいくつになっても持ち続けたい。