今年のサクラ

今年の桜は全国的に開花が早く、東京では春の彼岸の頃には満開との報が流れた。私の住む近辺でも3月25、26日の週末には満開となったが、雨が降って花見には生憎の空模様だった。

 

地球温暖化のせいか、最近は3月中に満開となり、私の子供の頃のように満開のサクラの下で入学式を迎えることは少なくなった。それと昔は、桜の開花は南の九州からサクラ前線が徐々に北上してきたものだが、近年は東京他大都市の開花が地理的に南の地方より早い。

 

当地では、その後も雨や曇りの日が続いたが、3月末の久しぶりに晴れた日に、近所の花見に出かけた。その数日は気温も低かったので、サクラはまだ満開状態が続いていた。

 

             幼稚園のサクラ

 

             メインストリートのサクラ

 

                公園のサクラ

 

 

 

                 団地の一本桜

 

毎年、満開の桜を見ると、「日本人に生まれて良かった」と幸せな気分となる。サクラには見る人に安らぎを感じさせ、人の心を和ませる不思議な力がある。そしてサクラを見ている人は、皆穏やかな良い顔をしている。

 

以下にサクラに纏(まつ)わるエピソードを綴ります。

 

1⃣ ソメイヨシノ

日本のサクラの8割を占めるというソメイヨシノは、江戸時代後期に染井村(現在の東京都豊島区)の植木職人によって作り出されたと言われている。育てやすく、花が一斉に咲いて花見に向いていることや、一斉に潔く散る様子が日本人の感性にあっていることから全国に広がったようだ。

 

ソメイヨシは、交配ができないので、一本の原木から接ぎ木で増やしていった。全国のソメイヨシノは、同じ遺伝子を持つクローンなのだそうだ。そのためその地域で気温などの条件が揃えば、一斉に咲き始め、満開となって一斉に散っていくと言うことだ。

 

満開のサクラも良いが、これから花びらが一斉に散って舞う「花吹雪」や池や川の水面が一面桜の花びらで埋め尽くされる「花筏(はないかだ)」の現象は日本ならではの風物詩なので、サクラの最後のクライマックスを存分に満喫したい。

 

写真ACより     cheetah   さんの作品     花吹雪

 

写真ACより     あるまんど さんの作品    花筏

 

 

2⃣ 西行

サクラ時期になると、桜をこよなく愛した「西行」がよく話題となる。

 

春風の 花を散らすと 見る夢の 覚めても胸の さわぐなりけり

 

西行平安時代末期から鎌倉時代始め(源平盛衰期)を生きた歌人である。武士として生まれたが、23才で出家し、花(特にサクラ)を愛し、自然を愛し全国を旅して数々の名歌を残した。(新古今和歌集には、94首選定されている)

 

願わくは 花の下にて 春死なん その如月(きさらぎ)の 望月(もちずき)の頃

 

西行の最も有名な一首であるが、如月は西暦の3月頃で、西行は念願通り如月の満月の頃に亡くなったという。幸せな人だ。

 

3⃣ 高月美樹さん

ネットを見ていて、高月美樹さんのサクラに関する記事が目にとまった。高月さんは和暦の研究家で、「和暦日々是好日」を制作発行している方だ。その記事はとても素敵でこの季節に誠に相応しいものだったので、その一部を紹介します。

 

「・・・桜、昼も良し夜も良し、今も昔も人々は桜が咲くと誘いだされるように外に出て、そぞろ歩いている。『今宵あう人みな美しき』はまさにその通りで、立ち止まっては花を愛でる人々の姿もまたごちそう、行き交う人々の表情も和やかで皆美しく見える。

 

桜人(さくらびと)は桜を思い愛でる人を表す言葉です。花人(はなひと)ともいいます。今年も互いの無事を祝福しつつ『桜人』になりましょう。・・・」

 

4⃣ サクラの妖艶さ

梶井基次郎桜の樹の下には」 坂口安吾桜の森の満開の下」には、サクラの妖艶さが描かれているが、それについては、2021年3月31日にアップした本ブログ「サクラが咲いた」に記載しましたので興味のある方は参照ください。