谷村新司さん

10月16日のニュースで谷村新司さんの訃報が流れた。今年3月に急性腸炎の手術をして、6月から予定していたアリスの全国ツアーを来年に延期、年内は治療に専念すると伝えられていた。ツアーを果たせないままお亡くなりなった。本人はさぞかし無念だっただろう。74才だった。

 

 

(以下敬称略)

16日以降、新聞やネットに、谷村と親交のあった音楽関係者の沢山の追悼文が掲載された。いずれも、谷村の非凡な音楽の才能や、音楽に対して美意識を大切にする姿勢を称え(たたえ)、普段はいつも穏やかでニコニコしていて、周りの者を優しくサポートしていた人柄に触れたものが多かった。

 

私が以前所属していたテニスサークルの代表(女性)が、アリスの大のファンでその中でも谷村新司が大好きだと公言していた。コンサートにもよく行っていたようだ。彼女とは最近は疎遠になっているが、この訃報に接し、さぞや嘆き悲しんでいると思う。

 

谷村新司は、歌手としては声が良くって歌が上手く、作詞家としては「昴」のような素晴らしい詩を紡ぎ出す才能の持ち主で、作曲も手掛けるので。音楽全般にわたる高度なスペシャリスト、クリエーターであると私は思っている。

 

昔ラジオで谷村のインタビューを聞いたことがある。そこで、谷村は、母親が長唄の三味線、姉が地唄舞をやっている家庭にに育ったと言っていた。長唄の文句を耳で覚えていて、当時は何のことか分からなかったけれど、大人になって日本語の奥深さを感じられるようになったと言っていた。

 

このことが「昴」他の作詞にも影響しているかもしれない。

 

私は聞いたことが無いが、谷村はデビュー当時、文化放送の「セイヤング」という番組を持っていて、伝説の下ネタラジオと言われていたそうだ。まだアダルトビデオの無い時代、谷村は当時流行っていた「ビニ本」のマニアで、5000冊に及ぶビニ本を収集し、それが縁で仲良くなった店長に頼まれて店番までし、それをラジオで話したりして、「スケベ」のイメージが定着したという。

 

ただ、どれだけ下ネタを言っても、下品にならなかったそうで、猥褻(わいせつ)だけどエレガント、インテリジェンスがある猥談がだ好きだった。いやらしさを感じさせない谷村なりの矜持だったようだ。

 

 

谷村が関与した楽曲は、「今はもうだれも」「遠くで汽笛を聞きながら」「ジョニーの子守歌」「「冬の稲妻」「チャンピオン」「いい日旅立ち「昴」「Far  away 」「サライ」他色々あるが、私の好きな作品は、「秋止符」「忘れていいのー愛の幕切れー」だ。

 

この二曲について記すことにする。

 

①「秋止符」

この曲は、秋の季節になると自然と口ずさむ曲で、本ブログでも昨年(2022年)11月13日にアップした「11月上旬」の中で「おまけ」としてこの動画を添付した。再度取り上げます。

 

 作詞 谷村新司  作曲 堀内孝雄  歌唱 アリス  リリース 1979年

 

   左ききのあなたの手紙

   右手でなぞって真似てみる

   いくら書いても埋めつくせない

   白紙の行がそこにある

 

   友情何て呼べるほど

   綺麗事で済むような

   男と女じゃないことなど

   うすうす感じていたけれど

 

   あの夏の日が無かったら

   楽しい日々が続いたのに

   今年の秋は いつもの秋より

   長くなりそうな そんな気がして

 

   夢を両手に都会(まち)に出て

   何も掴めず帰るけど

   やさしさの扉を開ける鍵は

   眠れない夜がそっと教えた

 

   心も体も開き合い

   それから始まるものがある

   それを愛とは言わないけれど

   それを愛とは言えないけれど

 

   春の嵐が来る前に

   暖かい風が吹く前に

 

   重いコートは脱ぎ棄てなければ

   歩けないような そんな気がして

  

   

今回は昨年とは異なる動画を貼付しようとしたら、下記メッセージが表示された。

 

※「YouTubeで見る」をクリックすると、YouTubeのサイトに飛んで再生されます。

 

本ブログでは、昨年と同じ動画を貼付します。

 


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②「忘れていいの -愛の幕切れー」

これは、発表当時、デュエットで歌っている最中に谷村が小川知子の胸に手を入れる演出がお茶の間には衝撃的で話題をよんだ。その演出手法のみが強調され、楽曲そのものの評価はあまり聞かれなかったが、私は素晴らしい名曲であると思って入いる。

 

歌というより一つの物語を、劇のワンシーンとして見ているようで、奥深いものがある。小川の語りかける様な歌い方に谷村の美声が絡み合って、男女の別れの情景が目に浮かぶ。

 

谷村は、この曲のデュエット相手は小川知子と決め「どうしても一緒に歌って欲しい」と直接交渉し、「歌手としてではなく女優として歌って欲しい」と依頼したというが、それが見事に功を奏して傑作が誕生した。

 

 

作詞/作曲 谷村新司  歌唱 小川知子 谷村新司  リリース 1984

 

   ♡忘れていいのよ 私のことなど

   ♡一人で生きるすべなら知っている

   ♡悲しいけれどこの年なら

 

   ♡もういいわ もういいわ おこりはしないわ

   ♡不思議ね 別れの予感を感じていた

   ♡心の中で少しづつ

 

   ♠甘い夢 見ていた二人に

   ♠不意に訪れた 悲しい愛の幕切れ

 

   ♡笑って見送る私は平気よ

   ♡貴方を乗せたこのバスが見えなくなるまでは

   ♡笑っている

 

   ♡見つめていないで 背を向けていいのよ 

   ♡上着の襟が立ってるわ 自分でちゃんと直すのよ

   ♡今日からは

 

   ♠指先の冷たい女は

   ♠臆病者だから一人じゃ生きてゆけない

 

   ♡手を振る貴方に 心は乱れる

  (♠さよなら 愛した人よどうか)

   ♡どうかあなた 行かないで 行かないで

  (♠あなた 行かないで 行かないで)

 

   ♡忘れていいのよ 私のことなど

   ♡一人で生きるすべなら知ってる悲しいけれど

   ♡この年なら

 

   ♡♠遠ざかる 愛が消えていく

   ♡♠涙あふれても逃げない バスが行くまで

   ♡♠涙あふれても逃げない バスが行くまで

 


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谷村新司さん、 数々の素敵な名曲を世に送り出していただき、ありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。