イラストACより フリーカットさんの作品
私は、スポーツのTV観戦は野球もサッカーも殆ど見ることはないが、大相撲は例外で
時間の許す限り観戦して楽しんでいる。
大相撲は、幕の内の取組の前後に、土俵入りと弓取り式が古式ゆかしく執り行われ、
歴史と伝統を感じさせ、厳かな気分にさせられる。
各取組では、呼出しで東西の力士が土俵に上がり、四股(しこ)を踏んで、直前の取組で
勝った力士から力水を受ける。そして蹲踞(そんきょ)して拍手、もう一度四股を
踏んでから仕切りに入り、制限時間まで仕切りを繰り返す。
これらの所作は、私も詳しいことはよく分からないが、相撲が農作物の収穫を占う
祭りの儀式をルーツとし、その後宮廷行事となったことから、それぞれに意味を持つ
作法となったようだ。
仕切り直しの間、闘志満々で相手を睨みつける力士もいれば、淡々と平然とこなす
力士もいたりして、力士の個性が現れる。この仕切り直しの間、力士は何を考えている
のだろうと想像するのも相撲観戦の楽しみだ。
行司の軍配が返り、いよいよ待ったなしの仕切りだ。いつもこの瞬間はこちらも緊張し
息を殺し目を凝らす。
勝負は立ち合いの瞬時で決まることもあり、大抵の場合は1分以内で決着するので、
私のようなセッカチな性格の人間には誠に相性の良いスポーツだ。
取組後、戦った両力士が、土俵上で礼をして終わるというのも見ていて気持ちいい。
レスリングやボクシング、柔道などの格闘技スポーツは、体重別で対戦するが、相撲は
体重無差別で取組が行われる。従って体重差100㎏以上の大力士と小兵力士の対戦も
あるわけで、小兵力士が勝つこともあるのが面白い。
今年は、コロナの影響で、三月場所は無観客、五月場所は中止となった。
例年七月場所は、名古屋での開催であるが、今年はコロナ感染対策として、
相撲関係者の集団移動を避けるため蔵前国技館で行い、密を避けるため観客も
1/4の2500人に抑えての開催となった。
観客は、声を出しての声援は禁じれているので、応援手段は拍手のみだ。
これまでのような熱戦への大歓声の盛り上がりが無くなったが、開催できただけでも
良しとすべきだろう。
力士たちの場所前の稽古も、コロナ対策でぶつかり稽古や一門の連合稽古ができな
かったようだ。力士たちもいつものような調整ができず、戸惑ったと思われる。
私の贔屓力士は,稀勢の里(現在の荒磯親方)だった。
現役時代は、インタビューでもほとんど喋らず、アナウンサー泣かせだった。
無口な人だと思っていたら、最近TVの解説に出ていて、よく話されているのでびっくり
した。現役時代は、相撲に集中するため言葉を慎んでいたようだ。
今は、新大関の朝之山を贔屓にしている。
朝之山が場内へ入場する時にするルーチンがある。それは、両手を膝につけ腰を曲げ、
自分の背中を付け人に思いっきり「パッパッパ~ン」と3回叩かせることだ。
背中は、叩いた跡が赤い手形になるほどだ。
そうして気合を入れて花道を土俵に向けて進んでくるのだが、その姿が実に堂々として
その朝之山だが、十二日目までは、11勝1敗の好成績で優勝争いのトップを走っていたのだが、十三日目、十四日目と連敗し、千秋楽に勝ったものの12勝3敗で準優勝に終わった。
朝之山は、コンスタントに白星を重ねるのだが、ここ一番と言う時に負けることが
多い。これから横綱を目指すからには、この課題を克服せねばなるまい。
優勝したのは、優勝経験もある元大関照ノ富士。照ノ富士はケガと病気で序二段まで
陥落し、地獄を見た後復活してきた力士だ。今場所の番付は幕尻であったが、相撲内容
は好調時の関脇、大関時代のような豪快で力強いものが多かった。
来場所は、上位に番付を上げての対戦となる。膝のケガを悪化させないで頑張ってほしい。